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ついに真冬が到来。暖かいベッドはいつにも増して、恋しく待ち遠しい場所に。けれど今、よく寝ているつもりでも、実は眠れていない「隠れ不眠」の人が増えているという。また、寝付きが悪い、寝ても途中で目が覚めてしまう、という人も要注意。そこでのべ1万人の眠りに悩む人たちを治療してきた睡眠の専門医、白濱龍太郎先生に良い眠りとは何か、また隠れ不眠のチェック法を伺った。

日本人は世界で一番、睡眠時間が短い国民。けれど、その一方でインターネットの普及と共にコミュニケーション速度は上がり、仕事やプライベートでも即レス、即対応が求められるようになった。週末や昼夜を問わずに連絡や仕事が出来るようになった半面、眠りにも影響を与えるように。睡眠時間が短くなり、不足するだけではなく、「寝付きが悪くなった」「寝ても夜中に起きてしまう」「翌朝、何だか疲れがとれない」「ぐっすり寝た気がしない」「寝ても寝てもすっきりしない」など、眠りの質や睡眠後の体調も問われるようになったのだ。

そこで、1万人もの睡眠に悩む患者を診てきて、13万部のヒット本『誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』(アスコム)の著者である睡眠専門医の白濱龍太郎先生に、その著書の内容と眠るためのコツを教わった。

睡眠時間が多ければいいわけじゃなかった! ポイントは「深睡眠」

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「ぐっすり眠れるというのは、『深睡眠(しんすいみん)=徐波睡眠(じょはすいみん)』が良くとれている状態のことです」と、白濱先生。「深睡眠の間は途中で目が覚めにくく、脳内に蓄積されたアミロイドβタンパク質などの疲労物質の除去や、体の機能を修繕させたり、免疫力を高めたりする成長ホルモンなどの分泌が、最も盛んに行われます」と、白濱先生。「つまり、ぐっすり眠れる=深睡眠がしっかりとれる=疲れにくく健康になると言えます」

この深睡眠には睡眠の「種類」が関わると言う。「睡眠には大きく分けて、『レム睡眠』と『ノンレム睡眠』の二つがあります。眠りに就くとレム睡眠が始まり、その次にノンレム睡眠がスタート。これが90~120分間隔で繰り返されます」。レム睡眠は眠りに入る直前や起きる間際の“うとうとしている状態”。「その間に筋肉がゆるみ、体は休息状態に入ります。ですが脳は覚醒に近い状態にあり、その日一日にあった出来事や学習したことを整理して、記憶という形で固定する作業を行っています」

深睡眠に関係するのは、もう一方の「ノンレム睡眠」と、白濱先生は言う。「ノンレム睡眠は深い睡眠です。誰かが起こそうとして体を揺すっても、なかなか起きません。このとき、脳と体の両方が休息状態にあります。ノンレム睡眠は、脳と体を休める貴重な時間なのです」

さらにこのノンレム睡眠には、ある特性があると白濱先生。「ノンレム睡眠は眠りの深さによって1~3のステージに分けられ、ステージ3の最も深い眠りが深睡眠なのです。

ただ、この深睡眠は就寝後の4時間以内に多く発生し、時間がたつにつれて深睡眠の時間が短くなっていくように体のリズムが出来ています。レム睡眠とノンレム睡眠は約90~120分間隔で一巡するので、4時間の間にノンレム睡眠が起きる回数は2~3回。つまりぐっすり眠るためには、眠りについてから4時間以内に深睡眠を2回以上とることが必要、というわけです」

昨夜はぐっすり眠れた? その判断は朝の脈拍で分かる!

良質な眠りに重要な役割を果たす深睡眠。4時間以内にしっかりとれたかどうかは、残念ながら本格的な機械で計測しないと分からず、家庭や個人では調べることができないのだとか。「最近は睡眠の質を調べるアプリや家庭用器具もありますが、それではなかなか正確な数値は出ないと言えるでしょう」

また、「隠れ不眠」の可能性も白濱先生は指摘する。「『すぐに眠れる』『睡眠を6~8時間しっかりとっている』という人でもぐっすり眠れているとは限らず、いわゆる隠れ不眠の方は非常に多くいます」

その目安となるのが、日中の状態。以下の項目が毎日続いているようであれば、十分な睡眠がとれてない可能性が高いので注意を、と白濱先生

●電車の座席に座ると、居眠りをしてしまう
●昼食後に必ず眠くなる
●コーヒーや栄養ドリンクを飲んだり、ガムを噛んだり、たばこを吸ったりしないと、頭や体をシャキッと保つことができない
●自動車などの運転中、信号待ちなどの際にふっと眠気に襲われることが頻繁にある
●毎晩ふとんに入ると、バタンキューで寝落ちしてしまう

「バタンキューで寝落ちしてしまうのは良さそうに思いますが、実は眠りが足りておらず、脳がほとんど気絶しているような状態で眠りに入っているだけです。ふとんに入ってから大体10~15分で眠りに入るのが良い睡眠だと言われています」

でも、自分で睡眠の質を判別するのはなかなか難しそう。

「簡単な方法があります。それは、脈拍を測ることです。目が覚めたら寝たままの状態で、手首の血管が浮き出ている部分に人さし指と中指をぐっと押し当て、脈の回数を測ってください。ぐっすり眠れているときは、いつもより脈の回数が少なくなっているはずです」

良質な睡眠は、翌日のパフォーマンスにも影響する大切な要素。まずは隠れ不眠かどうか、良く眠れているかをチェックしてみて。次回はいよいよ、良く眠れるためのTipsを白濱先生がレッスン。お見逃しなく!

■お話を伺ったのは……
白濱龍太郎(しらはま・りゅうたろう)先生
睡眠、呼吸器内科、在宅治療の専門クリニック「RESM新横浜」院長。筑波大学医学群医学類卒業。東京医科歯科大学大学院統合呼吸器病学修了。東京共済病院、東京医科歯科大学附属病院を経て、2013年に現職に。経済産業省支援プロジェクトに参加し、インドネシアの医師たちへの睡眠時無呼吸症候群の教育、医療システムの構築や睡眠医療が十分に行われていない地域での睡眠センターの設立・運営にも関わるなど、睡眠医療の普及にも尽力。睡眠医療の分野でも最も注目を集める医師の一人。『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』(アスコム)など著作も多数。



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