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毎日、夜が来るとその日をサバイブできたようで、ホッと安堵。振りかかるトラブルや、思いもよらない人間関係の摩擦に、心はすり減るばかり……。そんなストレスフルな現代社会で今、注目を集めているのが、しなやかで折れない心に関係する「レジリエンス」。

このところ、コスメ業界でもよく出てくるのが“Resilience(レジリエンス)”というキーワード。「復元力」「抵抗力」「耐久力」という意味で使われていれるけれど、もともとは心理学用語。実はこのレジリエンス、上手に使いこなせると、逆境やストレスなどにも強くなれるという。この注目の、レジリエンスについて解説。

レジリエンスという言葉が、使われ出したのは1970年代。アメリカの心理学者のサラ・モスコヴィッツが、第二次世界大戦でナチスドイツの強制収容所を経験した孤児たちを追跡調査し、インタビューを実施。その結果、過酷な収容所の経験が「長年大きなトラウマとなって抱えてしまうタイプ」「過去の逆境を乗り越えて前向きに生きるタイプ」の2タイプに大きく分かれることがわかったのだという。

「ふたつのタイプの違いに関係しているのは、柔軟性です。ストレスや危機にいかに、柔軟に対応できるかということです。心を木に例えるとわかりやすいのですが、竹、そして竹と同じ太さの木のふたつで比較します。

柔軟性がない木は、大雪や台風などが来ると負荷をダイレクトに受け止めてしまい、ポキッと折れてしまいます。でも竹は、大雪が降ったときは深く曲がって折れたように見えますが、雪が溶けるとともに次第に起き上がり、またしなやかに元の形に戻ります。このしなやかさがレジリエンスなのです」というのは、『レジリエンスとは何か』(東洋経済新報社)の著者で、環境ジャーナリスト、幸せ経済社会研究所所長、東京都市大学環境学部教授の枝廣淳子さん。

ストレスフルな社会で、しなやかに生きる。そのコツとは?

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ストレス対策や危機対策というと、ストレスを受けないように、危ない目に合わないように、という視点で考えがち。でも、実際には生きている以上、ストレスがない社会はありえないもの。人と関わればそこに摩擦が生じ、人間関係以外にも、環境変化や思いもよらない天災などに見舞われてしまうことも。

「レジリエンスは心理学の分野だけでなく、環境学や経済学などでもよく使われるようになってきています。今起きている問題にいかにしなやかに向き合えるか、それが世界的に問われているのかもしれませんね」(枝廣さん)

では実際にどうしたら、しなやかな心、レジリエンスを持つことができるのだろうか?

ポイントは大きく3つあると枝廣さんは言う。

■一面ではない、「多様性」を持つ

会社で働いている以外の自分を見つけてみる。趣味の世界や得意な世界が他にあると、何かあって会社で働く自分が行き詰まったとしても、そのストレスを他で回避できる。

回避できる場所が多いほど、ストレスは軽減されて、しなやかにピンチを乗り越えることができる。1枚だけではなく、少しずつ自分のカードを増やすことをしてみよう。

■「ひとりでも立てる力」を育てる

「親がいないと」「彼がいないと」「夫がいないと」「友達がいないと」……と、誰かがいないと不安になってしまう、決断できないという気持ちからは卒業。

最初は不安でも、少しずつ「個」でも行動できるようにしてみる。誰かがいないと何も決められないスタンスをずっと持っていると、依存性が高くなり、その相手がいなくなったときに対応できなくなることも。「個」で活動できる力を少しずつでも身につけよう。

■スマホをオフ。「自分の声」だけに耳を傾ける

今の私たちが一番できていないのはこれかも。毎日ほんの数分でもいいから、スマホやテレビなど外的な刺激をオフして、自分の心と向き合う時間を持ってみる。

疲れていると感じているが、本当は心がどう感じているのか? 困っていることがないか、不安はないかなど、心だけに集中して自分を客観的に見る時間を設けてみる。

自分の声を聞くのに決まったルールはなし。でも、上手にできない人は、座禅をする、腹式呼吸をするなどをしてもいいかもしれない。

現代社会に生きる私たちにとって、最も必要かもしれない「折れない心」。イキイキと、しなやかに毎日を過ごすためにも、レジリエンスに注目してみよう!

Text:Manabi Ito Photo:Getty Images