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あなたにとって、幸せとはどんなことだろうか? 国連が毎年発表している「世界幸福度報告書」では、2018年版では日本の幸福度は54位。1位はフィンランド、2位はノルウェー、3位デンマーク、4位アイスランドと北欧諸国が占めたが、日本は50位にも入らず、前回の調査よりもランキングを落としてしまった。こんなにも物が溢れ、情報をキャッチすることができる国であるにも関わらず、日本の幸福感は、2012年の調査開始から少しも向上していない……。学び直し=リカレント教育に目が向く今、人生の幸福を問い直す時代がやって来ているのかもしれない。

収入や学歴よりも自分に満足できるかが重要

女性の働き方と学びに詳しいキャリアコンサルタントの田中美和さんは昨年、科学的な視点で“幸せ”の研究をしている慶応義塾大学の前野隆司教授のアドバイスで、「活躍フリーランスの幸福度」について調べ、発表した。

「幸福感というと安定した収入、高い学歴、健康で豊かな人間関係などを連想する人が多いかもしれません。でも、実際に調査してみると答えは違うものでした。私は現在、フリーランスの方を中心に多様な働き方をしている方を応援する人材エージェント企業を共同経営しています。その中で感じるのは、フリーランスという生き方は、従来の雇用体制とは違う働き方だということです。収入も一定ではありません。

そんなフリーランスの方の幸福度を見てみると、高い方と低い方がいました。単純に考えると、収入が高い方が幸福なのかと予想していたのですが、収入や稼働時間は、幸福感にあまり関与していませんでした。それ以上に幸福感を左右していたのが、『今の自分がなりたかった自分かどうか』『こんな自分になりたいな』というビジョンがあるかどうかという点でした」

実は、この田中さんの調査と同じような結果が、2018年夏、神戸大学と同志社大学の共同で行われた国内2万人を対象にした調査でも発表された。幸福感は「所得や学歴より(自らの意思で進路を決める)『自己決定』が幸福度を上げる」ということが分かったという。

「叶えたいことは、10回言ってみる」

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「『何となくやる気が出ない』『今の働き方に不満がある』『仕事がつまらない』『何か別の生き方があるような気がするけど』……とみんな不満を持ち、悩んでいる人も多いですよね。働き方にストレスを感じている人も多い。それを『仕方ない』とあきらめてしまうこともできますが、それでは何も変わらないどころか、幸せ感はどんどん低下していきます。

そう分析する田中さんだが、思いを口にして他の人へ意思表明することの重要性も説く。「昔、ある経営者の方から、『叶うという字は、口に十と書くように、想いを10回も20回も口にしたら叶うよ』と言われたんですね。本当にそうだと思います。私自身、自分の想いやビジョンを口に出したことで、人脈が広がったり、自分の行動に弾みがつきました。チャレンジしてみたい、学び直してみたいな、と思ったら、まずは口に出してみる。人に相談してみるのもいいかもしれませんね」

学びは運動と似ている。習慣性が一番の力になる

さらに、田中さんはこう付け加える。何と、運動と学びはとても似ているというのだ。

例えば、歳を重ねて体のさまざまな部分に老化を感じてから「これはマズイ……!」と運動しても、体はなかなか思ったように動かない。急に動かしたことで無理がかかり、けがすることもある。運動習慣を取り戻すまでには果てしなく時間がかかってしまうだろう。

「学びも同じです。定年後から始めてもいいのですが、20代、30代から学ぶ習慣を持っていると、常に新しい情報をキャッチしてアップデートしようというライフスタイルに変わります。年齢を重ねても何をしていいか分からないと悩まずに、さまざまな学びにスムーズにチャレンジできるかもしれませんね」

人生にはいろんなステージがある。常にターボをかけて学び続けよ、ということではない。自分のライフスタイルやペースに合わせて、学ぶ下地、学べる伸びしろを作っておく。そこから人生がより豊かに、必ず広がっていくはずだ。



Photo:Getty ImagesText:Manabi Ito

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田中美和さん
株式会社Waris共同代表

1978年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現・日経BP社)入社。編集記者として雑誌『日経ウーマン』を担当。取材・調査を通じて接してきた働く女性の声はのべ3万人以上。女性が生き生き働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て、2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェント株式会社Warisを創業し共同代表に。フリーランス女性と企業とのマッチングや離職女性の再就職支援に取り組む。フリーランス・複業・女性のキャリア・ダイバーシティ等をテーマに講演・執筆も。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』( ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事。国家資格キャリアコンサルタント。2018年に出産し、1児の母。ブランクがあっても再就職したい方を応援! https://workagain.waris.jp/2019-jal