Office, Job, Conversation, Interior design, White-collar worker, Employment, Design, Sitting, Room, Event, pinterest

「社会に出てからもう一度学び直す」ということで近年、話題を集めている「リカレント教育」。国の助成施策などもあり、徐々に学びやすい環境が整い始めている。でも、「仕事はやめずにどうやって学ぶの?」「そのための資金は?」「今でも忙しいのに、学ぶ時間なんてあるの?」という疑問がいっぱい。負担なく学びを開始するためのコツを、女性の働き方と学びに詳しいキャリアコンサルタントであり、Waris共同代表でもある田中美和さんにアドバイスしてもらった。

出産、育児がある女性は、「少し長期タームで計画を立てる」

何だか自分も学び直しにチャレンジできそう、と思った人もいるのでは? でも、今の仕事をやめて大学に通い始める、という人は実は少数派。社会人で学び直す人の多くは、働きながらリカレント教育を受ける人がほとんどだという。そうなると、“タイミング”も重要になってくる。

リカレント教育のタイミングについて、田中さんはこう語る。「いつ学ぶべき、という制約は基本的にはありません。その人にとって“学びたいときが学びどき”です。でも女性の場合、妊娠や出産、育児といったライフイベントもあります。仕事の幅を広げようと思った矢先に、妊娠・出産。しばらくは育児で忙しいので、その間は学び直しが難しいこともあります。

一般的に多いのは、お子さんがいる人の場合は出産後、育児や子育てが落ち着いた段階でリカレント教育を選択するケース。でも、最近は出産で離職になった女性たちを支援する学びの場もあって、託児サービスがついているケースもあります。育休中に学び直しをする人もいます。焦らず、自分に合ったペースで選択するのがいいでしょう。私自身も学び直したいと思っているのですが、出産したばかりで(※取材時)学ぶタイミングはもう少し後になるかもしれない、と思っています」

ただ、出産や育児はその人によってケースバイケースなので、様子を見ながらスタートすることも必要だ。

リカレントの資金計画。学費は給付制度+給与の1割と考えて

学び直しのためには、学費の確保も考えなくてはいけない。田中さんは、給与の1割を学びのための自己投資に充てると無理がない、とアドバイスする。

「学びたい内容だけで見てしまうと、学費がとても高いケースもあります。仕事をしながらの場合は、無理な計画は挫折する原因になります。給与の1割を学びなどの自己投資資金に回し、それをもとに予算をつくると無理がないでしょう。

雇用保険に加入している方であれば、教育訓練給付制度を利用するという手もあります。これは中長期的なキャリア形成を支援する仕組みで、条件を満たせば学びに使った経費の20~50%(専門実践教育訓練給付金/資格を取得すると経費の50%)が給付されるケースも。上手に利用すれば、少ない資金でも学ぶことは可能です」

まずは、セミナーやリカレント教育講座などに参加してみる

Job, Student, Event, Technology, Room, White-collar worker, Electronic device, Team, Businessperson, Gadget, pinterest

学び直しを決意し、働きながら大学に行っている人の中で悩みが多かったのは、資金よりも時間の確保だという。就業後や週末の時間を使って受講したり、レポートを書いたりと、時間の確保が一番大きな課題になっているようだ。

「確かに、ライフスタイルは変わりますね。自信がないという方は、まずは単発や短期で行っているセミナーやビジネス講座などに参加してみるといいかもしれませんね。最近、リカレント教育を考えたセミナーや講座も増えています。本格的な学びの前に数回受講してみて、感触を掴んでみるのもいいかもしれません。

また、なかなか自分で計画が立てられないという人は、キャリアカウンセリングなどを受けてみるのもいいいかもしれませんね。さらに、最近はオンラインで学びの講座を行っている大学や民間サービスもあります。育児中などで外出が難しい人に人気の講座もあります。大学などの学校に実際に通うという形ではない学びも多いので、いろいろ調べてみるといいでしょう」

人生は決まった道ではなく、自分の意志でデザインできるもの。そのためにどんな形の学びが合っているのか、資金などを含めてライフステージと照らし合わせて計画してみて。



Photo:Getty ImagesText:Manabi Ito

Headshot of 田中美和さん
田中美和さん
株式会社Waris共同代表

1978年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現・日経BP社)入社。編集記者として雑誌『日経ウーマン』を担当。取材・調査を通じて接してきた働く女性の声はのべ3万人以上。女性が生き生き働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て、2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェント株式会社Warisを創業し共同代表に。フリーランス女性と企業とのマッチングや離職女性の再就職支援に取り組む。フリーランス・複業・女性のキャリア・ダイバーシティ等をテーマに講演・執筆も。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』( ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事。国家資格キャリアコンサルタント。2018年に出産し、1児の母。ブランクがあっても再就職したい方を応援! https://workagain.waris.jp/2019-jal