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ニオイに対して敏感な日本人。消臭剤から柔軟剤、香水まで香りに事欠かない今、一方で問題になってきているのが、香りによるトラブル。イヤなニオイをケアしようとするあまり、強い香りが他人の迷惑になっていることも。また、体臭を完全に消そうとしがちな私たちだけど、実は香り上級者は体臭をうまく使っていた!? 香りをめぐる最前線の第3回は、香りの害と魅力溢れるニオイについて。

気になる身体のニオイ。最近では、体臭を感じさせないようにする消臭剤から、洗濯時の洗剤や柔軟剤までいろいろ揃っていて、ニオイ対策のグッズも続々と登場。

でも、このニオイ解消アイテム、最近「やりすぎ」が問題に。

「ニオイに対する快・不快の判断は人によって大きく異なります。自分にとっていい香りでも、人にとっては強すぎるということも少なくありません。

エレベーターや満員電車に香水が強く香る人が乗ってくると不快に感じてしまったり、頭痛がしたり、目が痛くなる、くしゃみや咳が出るという人もいます。

特に、化学物質に敏感な人の中には、香水や消臭剤、柔軟剤の香りでも反応し、体調が悪くなることもあります」と言うのは、天現寺ソラリアクリニックの婦人科医で、ニオイに関する著書もある上田弥生先生。

こうした不調を感じてしまう人の中には、“化学物質過敏症”の人も。柔軟剤や消臭剤の香りに反応して、さまざまな不調が出てしまう症状。

「自分では良かれと思ってやっているニオイケアが、自分や周囲の人の不快や不調を呼ぶこともあります。“香害”と呼ばれたりもしています」

鼻はニオイに慣れやすい器官。客観的な意見を聞いて

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ここ数年、洗濯洗剤や柔軟剤は香りつきのもの、香りが強いものに人気が集まっていると言われ、それに合わせて香害の報告も増加中。

「確かに、香りが強い柔軟剤や消臭剤は、気になるニオイのケアには便利です。でも鼻は、ニオイに慣れやすい器官でもあります。最初は軽い香りの柔軟剤を使っていても、次第にそれに慣れてしまい、次買うときにはもっといい香り、もう少し強い香りと、徐々に強いものを求めてしまう傾向があります。周囲からするとちょっと強いなと思う香りでも、使っている本人は慣れていて感じなくなってしまうのです。

自分で香りのレベルを判断するのは非常に難しいもの。できれば、親やパートナー、友人や同僚などに、『新しい柔軟剤に変えてみたけど、香りが強くないかな?』とサラッと聞いてみるといいかもしれません。客観的な第三者の鼻で診断してもらうといいですね」

体臭は魅力。みんな同じ香りなのはつまらない

香りがある柔軟剤ブームで、よくあるのが同じアイテムを使った“香りカブリ”。でも、これは自分の魅力を軽減することになると上田先生は言う。

「体臭というとクサいもの、不快なものと思う人が多いですが、一概にそうとは断言できません。欧米などでは体臭を生かし、香水と合わせた“その人オリジナルな香り”を魅力のひとつする文化があります。

日本は湿度が高いせいでニオイを不快に感じやすく、体臭=すべていい、とは言い切れません。でも、パートナーのワキの下や髪の少しだけクサいニオイが実は嫌いではない、という女性は少なくないんですよ。

これは男性も同じです。顔が人それぞれ違うように、香りも人それぞれ違います。それが個性であり、魅力であり、好みとして刷り込まれるツールでもあるのです。

みんな同じ柔軟剤の香りをしていたら、その効果は半減してしまいます。強い香りで自分の体臭を完全に消してしまわず、心地いい程度の体臭を残すような使い方ができると上級者ですね」

画一的にならず、人の気分を害さず。自分を演出できるオリジナルの香りは到達するまでの道のりが遠く、奥深いもの。魅了できるオンリーワンの香りが見つかるまで、まずは自分と香りを研究してみて!



Photo:Getty ImagesText:Manabi Ito

Headshot of 上田弥生先生
上田弥生先生
婦人科医

大阪市立大学医学部医学科卒業。総合病院、市立病院などで産婦人科医として活躍。現在は、天現寺ソラリアクリニックに加えて都内の複数のクリニックで婦人科を担当。『オトナ女子のためのスメらない手帖 (健康美人シリーズ)』(主婦の友社)などの著書も。食事療法やアロマ、漢方、心理療法などを織り交ぜ、女性の悩みに答えてくれる。