「その課題を達成できず登り切れなかったときには、どの筋肉が足りなかったかを考え、どう鍛えたらいいのか検討します」。ウォールに向かう時にも、瞬時に、そして的確な判断が常に求められるのがクライミングだ。
「子供の頃からこの競技に挑んでいるため、常に自分で決める力は身についたと感じます」と野中選手。トレーニング時間を確保するため、高校は通信制を選んだ。卒業後の今はプロとして極めることを決意。
またクライミングには将棋やチェスのように次の一手をどうすべきかが勝敗を決める、頭脳ゲームとしての奥深さもある。力業ばかりでなく、どう接地すればパワーが最大限に生かせるかなど、物理学に通じるような技も要される。そしてほかの競技のように監督やコーチがアドバイスするシーンはないのも特徴。体験し、自分の体で学んでいくしかないのだ。
「決めるのはすべて自分自身。どうしたら成功するか、失敗したらどうリカバリーするか、クライミングをやるとそんな強い決断力が身に付きます」。それは大人も同様。「60代から始めた人もいます。クライミングっていくつになってもできるんですよ。課題をクリアして登れるようになるとみなさん自信がついて表情が輝き、ハッとします」と微笑む。
将来の夢は、みんなが集うおしゃれなカフェのようなクライミングジムを企画したいと目を輝かす。「本当は山で生まれ育ったんじゃないかと思うほど自然が大好き。山の中でのクライミングは爽快なので、それを感じられる自然に囲まれたジムなんて素敵ですよね」
ブラトップ ¥4,990 タイツ ¥13.000 ジャケット ¥8,990/以上アディダス
野中生萌(のなかみほう)
1997年5月21日生まれ。東京都出身。2013年リード・ワールドカップの日本代表選手に選出され、翌年ボルダー・ワールドカップも最終戦で2位に輝く。ボルダリング種目に転向後も何度も国際大会の表彰台に登り、2017年のチャイナオープンで優勝。2020年の東京オリンピックを目指し、世界を転戦する。