東京タワーも登れるトップクライマー、野中生萌選手に聞いたクライミングの魅力

10 January 2018

東京タワーも登れるトップクライマー、野中生萌選手に聞いたクライミングの魅力

「東京タワーを見上げると、これ登れるな、と思ったりします」と笑う野中生萌(ノナカミホウ)選手は20歳の若さで日本のクライミング界をリードする絶対女王だ。垂直にそびえたつ高い壁をまるで忍者のように軽やかに、そして力強く登っていく。


遊びの延長から大躍進、初出場にして優勝の快挙

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「最初にスポーツクライミングを始めたのはまだ9歳のころ。山登りが趣味だった父のトレーニングの一環だったクライミングジムに、いっしょについていったのがきっかけです」

3人姉妹の末っ子だった野中選手は姉と共にジュニア用のウォールに挑戦した。「ジャングルジムやうんていで遊ぶような感覚で、楽しくて夢中になりました」。みるみる頭角を現し、ジュニアの大会にも出場。「最初は試合に出ることがイヤでイヤで仕方ありませんでした。ただ登っているだけで楽しいのに、わざわざ争う意味がわからなかった。そして負けず嫌いすぎて負けるのが嫌だったんです(笑)」

ところがイヤイヤ参加したその大会で見事、優勝。「リードという競技で、ロープとハーネスを使いどこまで登れるかの高さを競います。誰かと競うというよりも落ちたらどうしようと怖くて、がむしゃらに登りました」と野中選手。「登りきれた!という達成感は格別なんです」


手だけでは登るのは不可能 体幹を鍛えて

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そのときに競うことで「勝利」をつかみ取るという快感を知り、競技の世界に自然に入った。2年後にはジュニアオリンピックで2位になり、2010年には優勝。ロープを使わず高さではなく完登した回数を競うボルダリングに転向し、16歳にしてボルダリング・ワールドカップに初参戦、最終戦のフランス・ラヴァル大会では2位に。2017年11月広州で開催された国際大会チャイナオープンでは優勝も果たした。

現在は、2020年の東京オリンピックから追加種目となるスポーツクライミング競技での頂点を目指して日々トレーニングを積んでいる。「競技は室内で行われるので5~6時間はジム内でのトレーニングですね」。壁にある突起物、ホールドで保持しながら登っていく。
「筋肉の連動は常に意識しています。試合後に疲労するのは圧倒的に腕ですが、手足だけでは登れないので、体幹を鍛えます」。体を宙に浮かしたまま、遠くのホールドをつかむなどアクロバティックな動きも多いボルダリング種目。幼いころからクラシックバレエや器械体操で鍛えた野中選手の柔軟性とバランス感覚は強力な武器となる。

「体幹がしっかりしてかつ腕や肩甲骨を自由に動かせることが大事。なので、動きを妨げずストレスを感じさせない背中のカットのウエアを選びます」と語る。「いい選手、強い選手はだいたい逆三角形。水泳選手の脂肪をそぎ落としたような体型です。なので、クライミングにベストな筋肉バランスは体幹と肩甲骨の連動なんでしょうね」


クライミングで養われるのは、自分で責任をもつ決断力

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「その課題を達成できず登り切れなかったときには、どの筋肉が足りなかったかを考え、どう鍛えたらいいのか検討します」。ウォールに向かう時にも、瞬時に、そして的確な判断が常に求められるのがクライミングだ。

「子供の頃からこの競技に挑んでいるため、常に自分で決める力は身についたと感じます」と野中選手。トレーニング時間を確保するため、高校は通信制を選んだ。卒業後の今はプロとして極めることを決意。

またクライミングには将棋やチェスのように次の一手をどうすべきかが勝敗を決める、頭脳ゲームとしての奥深さもある。力業ばかりでなく、どう接地すればパワーが最大限に生かせるかなど、物理学に通じるような技も要される。そしてほかの競技のように監督やコーチがアドバイスするシーンはないのも特徴。体験し、自分の体で学んでいくしかないのだ。 

「決めるのはすべて自分自身。どうしたら成功するか、失敗したらどうリカバリーするか、クライミングをやるとそんな強い決断力が身に付きます」。それは大人も同様。「60代から始めた人もいます。クライミングっていくつになってもできるんですよ。課題をクリアして登れるようになるとみなさん自信がついて表情が輝き、ハッとします」と微笑む。

将来の夢は、みんなが集うおしゃれなカフェのようなクライミングジムを企画したいと目を輝かす。「本当は山で生まれ育ったんじゃないかと思うほど自然が大好き。山の中でのクライミングは爽快なので、それを感じられる自然に囲まれたジムなんて素敵ですよね」

 

ブラトップ ¥4,990 タイツ ¥13.000 ジャケット ¥8,990/以上アディダス

野中生萌(のなかみほう)

1997年5月21日生まれ。東京都出身。2013年リード・ワールドカップの日本代表選手に選出され、翌年ボルダー・ワールドカップも最終戦で2位に輝く。ボルダリング種目に転向後も何度も国際大会の表彰台に登り、2017年のチャイナオープンで優勝。2020年の東京オリンピックを目指し、世界を転戦する。

Photo : Kanako Okada Text : Noriko Maniwa

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