Face, Hair, Skin, Facial expression, Shoulder, Head, Beauty, Nose, Blond, Chin, pinterest

人間が生み出す騒音量は着実に増加しており、1億400万人ものアメリカ人が日々危険にさらされているという。果てしない数のメールとSNSの通知に圧倒されることもますます増えて、私たちの精神的な騒音と身体的なストレスは記録的な高さに達している。

それゆえに、最近は静かな環境が人気を集めている。“静かな隠れ家” というキーワードでの検索件数は、昨年だけで500パーセント以上に膨れ上がったそう。

instagramView full post on Instagram

ロンドンシティ、バルセロナ、ワルシャワ、ヘルシンキをはじめとする幾つかの空港は、港内に響き渡るアナウンスを静かなモニター表示に切り替えており、“話すのはオプション” のレストランも至る所で出現している。ラーメン店「一蘭」ではメニュー自体が注文用のチェックリストだし、ミネアポリスの「Fox Den」サロンでは美容師が話しかけてこない席があるみたい。

決して非社交的になるのが目的ではなく、みんなが精神的な息抜きを求めているだけ。それに、息抜きが自分の健康を守ることにつながるかもしれない。ノンストップで聴覚と精神を刺激する耳障りな音のせいで、私たちの大半は毎日覚醒状態、つまり “戦うか逃げるか反応” をとっている。南カリフォルニア大学の電気工学および法学教授で、騒音が体と環境にもたらす影響を研究するバート・コスコ博士によると、この状態ではアドレナリンが大量に放出され、脳、心臓、内耳組織への血流が減り、その部位での障害につながりかねない。

また、騒音公害は大気汚染に次いで二番目に大きい公衆衛生への脅威で、がん、心臓病、うつ病といった疾患に関連している。このようなネガティブな結果になるのを阻止するには、体の内側と外側で音量を下げる必要があるのだとか。

データスモッグ対策

データスモッグ (止めどなく押し寄せてくる膨大な量の情報) は、不必要に私たちの精神をかき乱す。コスコ博士いわく、その原因は “情報をおやつにする” 私たちの習慣にある。一日中、暇を見つけてはネット上の情報を興奮剤として取り込み、どんどん集中力を失っていく。携帯電話やタブレットに夢中になりすぎて、身の回りで起きていることを無視するので、その瞬間を生きることすら出来なくなる。この問題に対する幾つかの解決策を見ていこう。

●取り込む情報量を減らす

絶え間なく頭に情報を詰め込むと、短期記憶システムがパンクしてしまい、生産性と意思決定能力が低下する。この理由からコスコ博士は、現実的に可能な範囲で、テレビもインターネットもSNSも一切使わない日を設けることを勧めている。

ニューヨークシティでヨガを教えるニッキ・ヴィエラは、毎週土曜日は電子機器を使わないと決めている。「朝と夜に携帯電話をチェックするだけ。その間は森で遊んだり、庭仕事をしたり。自分の時間を楽しみ、その一週間と人間関係を振り返る。ニュースばかり聞いていると、自分の人生に起きていることを考える余裕なんて無くなるでしょう」

●もしくは、良い情報だけを取り入れる

普通の人は、1日に47~86回携帯電話をチェックする。でも、コスコ博士によれば、データは多ければ多いほどキープされにくくなる。しかも、情報量が多すぎると情報疲労症候群になり、意思決定能力と問題解決能力が急激に低下することが分かっている。脳をフレッシュな状態に保つには、最も重要なプッシュ通知 (例えばショートメッセージとカレンダーのリマインダー) 以外はオフにすること。また、複数のニュースサイトに毎朝ざっと目を通すのではなく、よりすぐりのサイトだけをチェックするようにしよう。

●リラックスする

たった数分でも、毎日の瞑想には脳を落ち着かせ、ストレスを減らし、不安とうつを緩和し、集中力の持続時間を長くする効果がある。コスコ博士によると、「瞑想では注意が散漫しないよう精神が鍛えられるので、一般的な騒音やストレスに対処する上でも役立つ」

これで、鳴った瞬間に大慌てで携帯電話に駆け寄ることが少なくなるかも。ひとつ、試してほしいエクササイズがある。感情を分類して (“ストレスを感じている”、“疲れている” など)、感情をつかさどる領域ではなく思考をつかさどる領域で脳を働かせよう。

●本を読む

長い本を読むことで情報をおやつにする癖に対抗できる。コスコ博士の話では、「長時間考える機会は少なくなっているけど、瞑想と同じで、ひとつのことに焦点を合わせ、注意が散漫しないよう脳を鍛えてくれる。その意味で読書は、騒音によるストレス対策になる」。たった6分の読書でも、心が静かになってくる。

●水分を補給する

一日を通して水を飲み続けること。1日で合計2.5リットルほど飲めば、集中力を長く続かせ、脳の調子を整えて混乱を切り抜けられる。お茶も効果的。紅茶に含まれるアミノ酸のL‐テアニンは、注意力とパフォーマンスを高めることが明らかになっているみたい。

騒音対策

アメリカだけで4百万人もの人々が、大音量のコンサートや絶え間ない車のクラクションといった “有害な” 騒音被害に毎日直面している。交通量は過去30年でほぼ倍増しており、消防車のサイレンのように突然鳴り響く不快な音は、コルチゾールとアドレナリンの濃度を急上昇させるので最も有害。このようなホルモンの大洪水は、体内の炎症 (心臓病の一因)、不安神経症、不眠症、がんを誘発するし、低レベルの騒音ですら聴力に悪影響を及ぼすというから侮れない。自分の身を守りながらも現代社会 (とその音) を楽しむためには?

●大きな音に注意する

音はデシベル (dB) という単位で計測され、85デシベル以上の音はどれも、脳に音を届ける耳の中の細かい毛を傷つけ、その音にさらされていた時間の長さによって、一時的または永久的な難聴を引き起こす。120デシベルに達すると、たった2分で難聴になることも。花火大会や満員のスタジアムでは、しばしば115デシベル以上が記録される。

大きな音を避け、1メートルしか離れていないのに叫ばないと聞こえない場所では耳を守ること。音を25デシベルカットする耳栓もある。

●小さな音にも注意する

交通量の少ない道路で耳にする低レベルの環境騒音や、キッチンの小道具のモーター音で聴力が損なわれることはない。でも、神経が擦り減ったように感じ、睡眠が邪魔されることはある (眠りが浅い人は特に)。神経の疲弊と睡眠問題は、肥満と心臓病のリスクを高める要素。しかも、その影響は蓄積するので、気に障る小さな音で眠れないことが多ければ多いほど健康状態は悪くなる。

電子レンジの代わりにコンロを使ったり、キッチンでの音を最小限に抑えたり (ブレンダーの底やコーヒーミルを布で覆うなど) して、可能な限り静かな環境を作って。防音カーテンの中には、街の騒音を7デシベルカットブロックできるものもある。

●音楽のボリュームに注意する

この50年で、楽曲は次第に騒がしさを増した。これは、デジタル形式で配信される音の質を高め、競争相手を消し去るためにプロデューサーが使う戦術。音楽を大音量で聞く人も多い。12~35歳の推定11億人が、パーソナルオーディオ機器から危険なボリュームで音楽を聴いており、永久的な難聴のリスクにさらされている。周囲の雑音をブロックするヘッドフォンを使えば、大音量で聴くことも減るはず。

●睡眠を死守する

疲労感も、激しい騒音の副産物。実際の音で目が覚めて疲れが溜まるのはもちろんのこと、日中に受けた刺激を振り切ることができないのも疲労の原因のひとつ。なんとも皮肉的だけど、音には音で戦って解決しよう。ファンやホワイトノイズマシンは、交通騒音や近所のパーティー音をかき消してくれる。

パートナーのいびきがうるさいなら、耳栓を使うか寝室を分けることを検討しよう (いびきをかく人と一緒に寝ると、冗談抜きで1時間に平均21回は少なくともうっすらと目が覚める)。

●静かな席を予約する

レストランでは、どんなによくても賑やかな話し声がするし、最悪の場合かなりイライラさせられる。幾つかの人気レストランを対象とした調査では、騒音レベルが90デシベル近いか、それ以上だったそう。これは、工場の機械から1メートル離れて立った時と同じくらいうるさく、行く行くは聴力に直接被害をもたらしかねない。隅っこか壁際の席を予約して、ガヤガヤした騒音を最小限に抑えよう。

友達と会っているなら特に、ずっと静寂の中で食べるのは嫌かもしれない。でも、サイレント・リトリートセンター「Insight Meditation Society」の創設者であるシャロン・ザルツブルグは、少なくとも数分間はおしゃべりを控えるよう勧めている。妙な話なのは確かだけど、その友人との絆が強くなるかも。ディナー中に耳鳴りがすることもないので声がハッキリ聞き取れて、「その友達を今まで以上に理解できるようになる」 そう。

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。



Text: Abbi Henderson Translation: Ai Igamoto Photo: Getty Images

Headshot of Nana Fukasawa
Nana Fukasawa
ウィメンズヘルス・エディター

2018年に「ウィメンズへルス」編集部にジョイン。アシスタントを経て、エディターとして美容、フード、ダイエットなどの記事を担当。流行りそうなヘルシーキーワードをいち早くキャッチすることを心がけている。CBDや筋膜リリース、アーユルヴェーダ、植物療法を学ぶ、自他共に認める“セルフケア マニア”。2023年初めてのハーフマラソンに挑戦。