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すっかり定番となったジェルネイルやスカルプチャーネイル。けれど、気がつくと爪が緑色に変色していたり、何だか臭いが漂い始めたり……。実はこれ、ジェルネイルのトラブルのトップともいえる「グリーンネイル」というもの。セルフネイルなどでも増えているこのトラブルについて、日本で唯一の爪専門のクリニックの院長、野田弘二郎先生にインタビュー!

爪が緑色に変色。その正体はカビではなく、「緑膿菌」だった!

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すっかり定着したジェルネイル。ここ数年はジェルネイルをセルフネイルで楽しんでいる人も増加中。でも、その人気に合わせて増えているのが、ジェルネイルを剥がした後に爪が緑色になっているのに気がつく、通称「グリーンネイル」と呼ばれるトラブル。

爪のトラブルを専門で治療する「神楽坂 肌と爪のクリニック」にも、グリーンネイルで駆け込む人が少なくない。

「ジェルネイルに伴うトラブルのトップが、このグリーンネイルです。緑色の色素がパンなどにつく青カビの色と似ているため、カビだと思い込んでいる方が多いですね」と教えてくれたのは、院長の野田弘二郎先生。

「この緑色の正体は緑膿菌(りょくのうきん)という細菌が出す、ピオヴェルディンという色素です。緑膿菌は自然の環境下では普通に存在するもので、私たちの体のさまざまな部分にも存在する常在菌です。集中治療室に入院中の患者さんなど、免疫力が低下した方には厄介な細菌ですが、健康な状態では悪さはしません」

覚えておきたい! グリーンネイルには「2タイプ」ある

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グリーンネイルには大きく分けて2タイプある、と野田先生。

一つは、ジェルと爪の表面の間で緑膿菌が増え、爪の表面を着色するタイプ。
「爪の上に付け爪をするジェルネイルやスカルプチャーネイルは、付けてからしばらくすると爪との間に“浮き”ができることがあります。この隙間に洗顔、炊事などで水が入り込むと、湿った環境を作り出します。

通常、緑膿菌は爪の上で繁殖することはありません。ですが、狭くて湿度が高い環境を好むため、ジェルネイルなどの付け爪と地爪の間にできた、わずかな隙間で繁殖することがあります。

グリーンネイルは痛みやかゆみなどの自覚症状がないので、表面にのっている付け爪のカラーが濃いと病変に気づかず、付け爪を外してびっくりするということも少なくないようです。医療関係者が“ピオ臭”と呼ぶ、独特の臭いも特徴です。

爪にグリーンネイルが出た場合は、ジェルネイルを外してよく洗いましょう。軽症の場合は、洗うことで色はほとんどとれます。色素が爪に薄く残ることもありますが、決して無理に削り落としてはいけません。爪が薄く変形しやすくなるため、次にのせたジェルが浮きやすく、結果的にグリーンネイルを繰り返す場合もあります。

また慌てたネイリストが無理に色素を落とそうとして、爪に穴を開けてしまうことさえあります。治療は2週間ほどジェルネイルをお休みし、地爪で生活します。お薬や消毒は必要ありません。2週間過ぎて色素が残っていても、その上にジェルを塗ってネイルを再開して構いません」

もう一つは爪と皮膚(爪床、そうしょう)の間に緑膿菌が入り込んでしまったタイプ。実は、治療が難しいのはこのタイプだという。

「爪が皮膚から剥がれ、爪と皮膚との間に隙間ができた状態を爪甲剥離症(そうこうはくりしょう)と言います。剥がれた爪と皮膚との隙間に緑膿菌が増えることがあり、これがもう一つのグリーンネイルです。

爪が剥がれる原因としてはけがや (つめはくせん。いわゆる爪の水虫)がありますが、最も多いのはジェルにかぶれて剥がれてくるものです。爪の剥離が治ればグリーンネイルもなくなるので、治療対象はグリーンネイルそのものではなく、爪甲剥離症の原因となります。

原因がけがであれば、新しい爪が伸びるのを待ちます。爪白癬の場合は、抗真菌薬外用液などで治療をします。

ジェルでかぶれた場合は、液体ステロイドの塗り薬による治療となりますが、剥離の治療はいずれの場合でも、半年あるいは1年以上もの時間がかかります。かぶれの場合、治療中はジェルネイルをお休みするのは当然ですが、治癒後も再発しやすいのでジェルネイルは避けるべきです」

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爪の表面にグリーンネイルが出た例。

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爪の中にまでグリーンネイルが見られる。
写真提供:神楽坂 肌と爪のクリニック

ジェルネイルを「休む時間」を作ってあげて

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一度してしまうと、休み時が分からなくなってしまうジェルネイル。でも、ずっと続けているとケアのたびに爪を磨くため、次第に爪が薄くなって弱くなるという問題も。さらに最近多いのが、セルフジェルネイルによるトラブル。これもグリーンネイルを生む土壌になっていると野田先生は指摘。

「セルフネイルだと、テクニックのレベルによっては爪とジェルとの間に隙間ができやすく、グリーンネイルになりがちです。プロではない方は施術経験が少ないので、かぶれにも気がついていない方が多いように感じます。

また、グリーンネイルになったときの対処も、正しくないことも少なくないのです。ご自身の大切な体ですから、多少費用がかかるとしてもジェルネイルはプロにお任せした方がいいでしょう。また、サロンで施術を受ける場合でも、爪を良い状態に保つためにはジェルネイルやスカルプチャーをお休みする期間を設けることも必要だと思います」

フィット女子は運動中だけではなく、その前後にはだしになる機会も多々。爪が変色したり、濁っていてはイメージダウンにつながることも。だからこそ、爪の先まで気を抜かずに! 美しい爪は健康の証。ネイルケアも「正しく慎重に」がやっぱり基本、と言えそう。



Photo:Getty ImagesText:Manabi Ito

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野田弘二郎先生
医師、医学博士

神楽坂 肌と爪のクリニック院長。日本形成外科学会専門医、皮膚腫瘍外科指導専門医、パリ第7大学ドゥニ・ディドロ微少外科手術ディプロマ、プロネイリスト。日本で唯一の爪専門のクリニックを開院。爪白癬、巻き爪などの爪疾患はもちろん、ジェルネイルやマニキュアによるトラブルにも詳しい。https://www.hadatotsume.com/