【登山特集3】猛暑の夏登山。ドクターに尋ねる「熱中症で気をつけるポイント」

20 August 2018

【登山特集3】猛暑の夏登山。ドクターに尋ねる「熱中症で気をつけるポイント」

今年の夏は、かなりの猛暑。登山をするときにも、熱中症には気を配らなくてはいけない環境だ。そこで高温と山との付き合い方を、日本登山医学会認定国内山岳医の資格も持つ東京女子医科大学本院 総合診療科・女性科(女性内科) 准教授、片井みゆき先生に伺った。


水分は「過不足なく」準備しましょう

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「今夏は、30度以上の高温が続いています。山登りでも熱中症の危険が高まっています。山登りの場合、地上と違って一番問題になるのが“水分補給”です」と片井先生は言う。

「長時間、リュックを背負って歩くことを考えると、荷物を軽くしたいと思う人も多いでしょう。山小屋に着けば水道や飲み物の販売などもありますが、登っている途中では水場がない限り、飲み水は自分で持っていかなければなりません。

女性の場合、荷物が重くなることや水分を摂ってトイレが近くなることを避けて、水を少なめに持つ場合があるようです。しかし、登山の場合、一つの目安として『体重1キロ当たり、1時間ごとに5ミリリットルの水分摂取が必要』と言われています。

この暑さで発汗も増えている状況だと、さらに多くの水分が要りますよね。例えば体重が50キロの人だと1時間に250ミリリットル、つまり3~4時間の登山であれば、最低でも1リットルくらいの水分は準備しておいたほうが良いという計算になります」

さらに水分は、喉が渇き切る前に、小まめに飲むのが理想的だと指摘。便利なのは、「ハイドレーション」と呼ばれる給水グッズ。水をためるパックにチューブが付いていて、そのチューブを口に含むと水が飲めるという仕組み。歩きながら給水できるので、登山では愛用者も多いアイテム。

「汗をかくと、体に必要なミネラル分も外に流出してしまいます。特に塩分が失われるので、塩気のあるスナックや梅干しなどを『行動食』に用意したり、電解質入りのスポーツ飲料を準備するといいでしょう。登っている間は運動量が多く、発汗もします。

また山は日差しが強く、熱中症にかかりやすい条件がそろっています。熱中症対策には、小まめな水分・塩分摂取と併せ、日差しを遮る帽子や衣服の調整も大切です」


ウエアはレイヤリングして、発汗したら脱ぐなどの工夫を

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「一般的にアウトドアのスタイルとして、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、おそらくTシャツとジーンズではないでしょうか? あるいはカジュアルウエアは、Tシャツとジーンズ以外持っていないという方もいるかもしれません。しかし、本格的に山へ行く場合、綿(コットン)製のTシャツやジーンズはNGなのです。

山で身に着ける衣服のポイントは大きく言って二つ。一つ目は、下着も含めウールや化繊の、速乾性と透湿性に優れた素材のものを選ぶこと。そして二つ目は『重ね着』。レイヤリングすることで、暑さや寒さを調整することが基本です。

その理由ですが、①山の天気は地上と違い、とても変わりやすいこと ②リュックを背負って登るので、とても汗をかくこと ③綿製の衣類は汗で濡れると乾きが悪く、冷えると体温を奪われること ④山の荷物は重量軽減のため、衣類も含めて必要最低限にすること、などが挙げられます。

基本は、いずれのアイテムも化繊や超薄手のウール等の素材であること。重ね着するなら、まず下着の上に半袖シャツか、必要に応じ長袖シャツなどを着て、暑くなったら脱ぎます。気温が下がったら着るなど、気温の変化に合わせて小まめに脱いだり着たりするといいでしょう。

また、山には木から飛び出した枝や岩、虫など、露出している部分を傷つけるリスクもあります。長袖を羽織るか、暑ければアームカバーをするものも良いですね。

山の紫外線はとても強いものです。紫外線対策として、つばのある帽子かキャップを必ずかぶること。サングラスを着用し、日焼け止めを事前に塗ります。日焼け止めは山にも携行し、汗で落ちた部分の塗り直しも欠かさずに行いましょう」

 

  ■お話を伺ったのは……
片井みゆき(かたい・ゆみき)先生
東京女子医科大学本院 総合診療科・女性科(女性内科) 准教授。信州大学医学部、同大学院医学博士課程修了後、同大医学部附属病院内分泌科へ。その後、ハーバード大学医学部フェローなどを経て、東京女子医科大学にて性差医療の現場で治診療を行う。内分泌代謝専門医、甲状腺専門医、女性ヘルスケア専門医として女性特有の疾患などに詳しい。また、北アルプスが近くにあった大学時代から登山を始め、山岳診療や救助に携わる山岳医の資格も持っている。

Photo:Getty Images Text:Manabi Ito

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