「一般的にアウトドアのスタイルとして、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、おそらくTシャツとジーンズではないでしょうか? あるいはカジュアルウエアは、Tシャツとジーンズ以外持っていないという方もいるかもしれません。しかし、本格的に山へ行く場合、綿(コットン)製のTシャツやジーンズはNGなのです。
山で身に着ける衣服のポイントは大きく言って二つ。一つ目は、下着も含めウールや化繊の、速乾性と透湿性に優れた素材のものを選ぶこと。そして二つ目は『重ね着』。レイヤリングすることで、暑さや寒さを調整することが基本です。
その理由ですが、①山の天気は地上と違い、とても変わりやすいこと ②リュックを背負って登るので、とても汗をかくこと ③綿製の衣類は汗で濡れると乾きが悪く、冷えると体温を奪われること ④山の荷物は重量軽減のため、衣類も含めて必要最低限にすること、などが挙げられます。
基本は、いずれのアイテムも化繊や超薄手のウール等の素材であること。重ね着するなら、まず下着の上に半袖シャツか、必要に応じ長袖シャツなどを着て、暑くなったら脱ぎます。気温が下がったら着るなど、気温の変化に合わせて小まめに脱いだり着たりするといいでしょう。
また、山には木から飛び出した枝や岩、虫など、露出している部分を傷つけるリスクもあります。長袖を羽織るか、暑ければアームカバーをするものも良いですね。
山の紫外線はとても強いものです。紫外線対策として、つばのある帽子かキャップを必ずかぶること。サングラスを着用し、日焼け止めを事前に塗ります。日焼け止めは山にも携行し、汗で落ちた部分の塗り直しも欠かさずに行いましょう」
■お話を伺ったのは……
片井みゆき(かたい・ゆみき)先生
東京女子医科大学本院 総合診療科・女性科(女性内科) 准教授。信州大学医学部、同大学院医学博士課程修了後、同大医学部附属病院内分泌科へ。その後、ハーバード大学医学部フェローなどを経て、東京女子医科大学にて性差医療の現場で治診療を行う。内分泌代謝専門医、甲状腺専門医、女性ヘルスケア専門医として女性特有の疾患などに詳しい。また、北アルプスが近くにあった大学時代から登山を始め、山岳診療や救助に携わる山岳医の資格も持っている。