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心と身体のヘルシーと幸福を真剣に見つめ、プロにアドバイスを伺う連載の4回目は、SNS全盛の現代社会特有のお悩みが題材。“キラキラ女子”や“勝ち組女子”などという言葉も喧伝され、いささかSNS疲れしている人にとってはSNSで見る出来事や画像、そして親しい人や職場の人々の輝いている姿が心の重荷になってしまうことも。そんな人たちと自分を比べ、疲労困憊になってしまうお悩みにメンタルの専門家がアンサー!

【今回のお悩み】

ポジティブ思考になれません。

職場やSNSなどで前向きな人を見ると、「自分にはできないな」と落ち込みます。

どうしたら前向きな気持ちになれますか?

【ANSWER

四六時中ポジティブな人なんていません。

ネガティブのループにはまらないためには「自分を認める」ことです

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最近、「ポジティブになれない」という悩みをよく受けます。どうも、多くの人が「人間はポジティブでいなければならない」と思い込んでいるのではないでしょうか。四六時中ポジティブな人などいません。

大事なのは、落ち込んでネガティブ思考になっても、そこからしなやかに元に戻る力、回復力があるかということです。この回復力のことを「レジリエンス」と呼び、精神医学の世界でも注目されています。

理想は“竹のような心”です。大雪や台風に遭うと、竹は大きくしなり、頭を垂れます。もう使い物にならないかと思うと、次第に元の形に戻っていたりします。こういうしなやかな回復力が大事なのです。

そのために必要なのは「なぜ落ち込んでしまうのか」「ネガティブ思考になってしまうのか」という部分にフォーカスを当てて考えることです。

ネガティブ思考の人に多いのが、「どうせ私なんか」「〇〇なんかしたって……」「私なんか他の人のようにうまくはいかない…」と最初から自己否定していたり、他者と比べて自分を下げて見積もってしまうという部分です。

特に最近、SNSなどのウェブメディアの影響で「みんな楽しそうなのに、私は全然楽しくない」と思い込んで、ネガティブのループにはまってしまう人が多いようです。

SNS時代の虚像と自己認識の低さとの狭間で

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でも、SNSをなぜそんなに信じてしまうのでしょうか。自分のことを思い返してみてください。例えば、朝寝坊して頭がボサボサで不機嫌そうなときに顔の写真はアップしないですよね? 仕事でミスをして怒られているときの写真も上げないはずです。忙しくてコンビニご飯が夕食だったときもアップしないでしょう。自分の中のとっておきや演出された、いいところを公開している人がほとんどです。

それなのに「あの人は私よりもリア充でうらやましい」「前向きにいつも元気で楽しそう……」と見てしまうのは、あまりに短絡的です。

一見リア充に見えても、その裏ではうまくいかないことがあって落ち込む部分を持っているのです。SNSに依存してしまうと、そういう部分が見えなくなり、虚像の中で張り合ってしまって虚しさが募ってしまうのです。

どんなときもスマホ、何でもSNSに上げるという生活に少し距離を置いてみる。「そんなことをしたら友達がいなくなってしまう」と思うかもしれませんが、そんなことでいなくなる友達は友達ではありません。

虚像でつながっている知り合いが多くても、それは力にはなりません。一度距離を置くと、些細なことで比較していた自分が見えてくるはずです。

「私なんか……」と自己評価を低く考えてしまうのであれば、なぜそう考えてしまうのか、何に自信がないのかを書き出してみるのも、必要かもしれません。

でも、実際に書き出してみると、些細なことが多いものです。「どうせ私なんて……」と思い続けているうちは、その負のループからは抜け出せません。自分からネガティブを作り出していることに気づいてほしいですね。



Photo:Getty ImagesText:Manabi Ito

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海原純子先生
医学博士・心療内科医・産業医

昭和女子大学国際学部客員教授、日本生活習慣病予防協会理事(2017年~)、ハーバード大学客員研究員(2008~2010年)。毎日新聞日曜版『心のサプリ』連載執筆中。『今日一日がちいさな一生』(あさ出版)、 『幸福力 幸せを生み出す方法』(潮出版社)、『困難な時代の心のサプリ』(毎日新聞社)、『ツイッター幸福論』(角川書店)など著書も多数。時事通信社の時事メディカルにて「Dr.Junkoのメディカルサロン」主宰。https://medical.jiji.com/salon/