「女性アスリートに多い問題として十分なエネルギー摂取不足、無月経、骨粗しょう症があります。この3つは以前から問題視されていて、1993年にアメリカスポーツ医学会が『女性アスリートの3主徴』として報告してから認識されるようになり、欧米では早くから対策が始まっていました。
ですが日本では対応がなかなか進まず、ここ数年でやっと認識が高まってきたところです」と話すのは、婦人科医の立場から女子アスリートのパフォーマンスやQOL向上を考えて指導している、イーク表参道の副院長、高尾美穂先生。
アスリート3主徴が起こる根本には、女性ならではのホルモンの状態が関係すると高尾先生は言う。
「男性と女性の体は、機能としても大きく違う部分があります。男性の身体は狩りをし、敵から家族を守るために戦えるガッシリとした筋肉がついています。これは男性ホルモンの作用が関係しています。女性は子どもを産み、育てるために成長過程で乳房や子宮、卵巣機能が発達します。この働きは、女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンが担っています。
ところが女性アスリートの場合、この働きが乱れてしまうことがあります。というのも、女性ホルモンのエストロゲンはある程度の脂肪を蓄え、妊娠・出産可能な体として成長し、その体を維持していなければ分泌されません。女性アスリートの中には、幼い年齢から競技を始めた人が少なくありません。脂肪を蓄えた体よりも細い体のほうが競技的に有利であると感じ、食事を極端に制限し女性としての成長が得られないアスリートも少なくないのです。こうしたケースの場合、十分に準備ができずに初めての生理がこない、無月経の状態になることもあります」