筋力が低下しがちな、下半身を強化するエクササイズの最終回は、より負荷をかけたプログラムにレベルアップ。ただし、今回ご紹介するプログラムは、前回のレベル1がクリアできた人が行うべきプログラムなので、まだ、レベル1をやってない人は、こちらからぜひチャレンジを! 指導してくれるのは、ご存じ人気のフィジカルトレーナー、中野ジェームズ修一さん。トレーナーの黎明期を知る中野さんが語る、日本におけるトレーニング部位のトレンド変化も必読!!
昨今の「ヒップブーム」。ところで、正しいフォームでトレーニングできてる?
「最近、ヒップトレーニングがブームになっています。今まで日本のトレーニングは腹筋ばかりに着目するものばかりでした」と話すのは、有名アスリートからも圧倒的に支持されるフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんだ。
「本来、人間の運動機能という面から見たときに重要になるのが、腹筋よりも下半身の筋肉群。ヒップ周辺の臀筋(でんきん)やハムストリングなどに着目するトレーニングがブームになるのは、とてもいいことだと思っています。
でも、きちんとしたフォームでできてないのに、動作が難しいスクワットを行っている人も少なくないようです。正しいフォームで行わないと筋肉を傷め、ケガの元にもなります。きちんと段階を踏んでトレーニングを行うことが重要なのです」
中野さんいわく、正しく筋肉にアプローチできなければ、強度を上げても意味がないと言う。
そのため、今回はビギナーでもできる「レベル1」から負荷を大きくした「レベル3」までバリエーションをつけて提案してくれた。プログラムを行うときのポイントは前回と同じ。大切なので、あらためておさらいしよう。
【プログラムを行うときのポイント】(レベル1~3まで共通)
●動作を行うときに反動をつけない
●ゆっくり4カウントで下がって、4カウントで上がる
●膝を曲げ、ゆっくり上がるときに息を吐き、膝を伸ばした切ったところで息を吸う
●膝は爪先よりも前に出さない
●膝と爪先は同じ方向に向ける
不安定な姿勢こそ、体幹も強化してくれる!
今回のスクワット、やってみると安定せず、グラグラする人もいるだろう。その意味を中野さんはこう語る。「今回のスクワットは、2つともレベル1に比べると不安定な姿勢で行います。不安定な姿勢で行うことで、バランスを取ろうと体幹も強化されるので、下半身だけではなく全身運動の効果もあります。
レベル1よりも運動負荷も大きくなるので、まずは、20回×2セットを目標に。2セットが余裕でできるようになったら3セットまで回数を増やしてみましょう。ゆっくり行うことで運動負荷も高くなるので、反動をつけずに正しいフォームを意識して行ってみましょう」
【レベル2:ワンレッグスクワット】
回数:1日20回×2セットを目標に⇒余裕でできるようになったら、1日20回×3回
1 両足を腰幅に開いて、背もたれ付きのいすの後ろに立つ。両手で背もたれを持って、右脚を大きく後ろに引く。4カウントで左脚の太ももが床と並行になるぐらいまで、腰を落とす。
2 左脚に体重をかけながら、4カウントでゆっくりと立ち上がる。立ち上がり切ったところで息を吸う。再び、4カウントで腰を落とし、右脚を後ろに引く。これを片側だけ20回繰り返し、終わったら逆の脚も同様に行う。
※エクササイズ後は「ながら下半身強化エクササイズ②」のストレッチを行う
【こんなやり方をしていたら注意!】
膝が爪先より前に出ていたり、上体が倒れすぎている。体がぐらついたり、いすにもたれてしまっているのもNG。
【レベル3:ワンレッグスクワット ウィズ チェア】
回数:1日20回×2セットを目標に⇒余裕でできるようになったら、1日20回×3回
1 いすから大きく1歩く踏み出したところに立つ。右脚の爪先をいすの座面に乗せる。両手は自然に体側に下げておく。胸を張って、背筋を伸ばす。やりづらい場合は、いすの背もたれを壁につけておくと固定できるので、体も安定する。
2 左脚の膝を4カウントかけてゆっくりと曲げて、上体を沈めていく。このとき、曲げた膝が爪先よりも先に出てないように注意する。息を吐きながら4カウントかけてゆっくりと膝を伸ばして、伸ばし切ったところで息を吸う。1→2を20回繰り返す。逆の脚も同様に行う。
※エクササイズ後は、「ながら下半身強化エクササイズ②」のストレッチを行う
【こんなやり方をしていたら注意!】
膝が爪先よりも前に出ていると、膝に体重が掛かりすぎて傷める原因に。
※いすを使う際はバランスなどに注意し、転倒などトラブルにお気を付けください。
ぐらつかずにできるようになることで、下半身だけではなく体幹の強化にもつながる。習慣化しやすい「ながら下半身強化エクササイズ」は、単なるボディーメークだけではない側面もある。未来の自分の体の機能までを守る“筋肉投資”だと思って、続けてみて。
Photo:Getty Images Illustration :Kanao Enami(asterisk-agency) Text:Manabi Ito
米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。卓球の福原愛選手やバドミントンの藤井瑞希選手、伊達公子選手など、多くのアスリートの個人トレーナーを歴任。2014年からは青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。東京・神楽坂に自身が技術責任者を務める会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」がある。『下半身に筋肉をつけると「太らない」「疲れない」』(大和書房)、『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『医師に運動しなさいと言われたら最初に読む本』(日経BP社)など著書も多数。ベストセラーも多い。