今、最も鍛えたい部位の一つである「下半身」。人気のフィジカルトレーナー、中野ジェームズ修一さんが教える「ながらエクササイズ」、第3回目はいよいよ実践編。チャレンジするのはスクワットだけど基本的すぎる種目、と思うことなかれ。プロが解説するスクワットと正しいフォームを知れば、この種目を取り上げた理由が理解できるはず。プログラムはステップアップ式で、いすを使ったもの。目標の回数をクリアするまで、あきらめずに取り組んでみて!
下半身強化の筋トレといえば、代表格はやはりスクワット。「え!? スクワットなの。知っているし」と思った人、ちょっと待って。知っているつもりでも、正しくスクワットが出来ている人は実はとても少数。多くのアスリートを指導する、フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんも、スクワットの難しさを指摘。
「スクワット=膝を曲げる運動だと思っている人が少なくありません。スクワットで使う筋肉は太ももの前後、そしてヒップにかけて。どちらかと言うとヒップから太ももにかけた、後ろ側の筋肉を強化するための運動です。
単に膝だけ曲げると膝の関節に負担がかかり、さらに太ももの前にしかアプローチできず、意味がない運動になってしまいます。意識するのは膝を曲げることではなく、“腰を落とす動作”です」
また女性のスクワットで多いのが、膝の内側が外に向いてしまうことや、猫背や反り腰など悪い姿勢のままスクワットを行っているケース。
「姿勢がちょっと変わるだけで、効かせたい筋肉が変わります。正しく効かせたいはずの下半身には効かず、効いてほしくない筋肉をこわばらせてしまうことになるのです。スクワットなんて知っていると思わずに、もう一度、自分が行っている姿勢が正しいかを確認しながら行ってみましょう」と、中野さん。
レベル1は、いすを利用して「基本をきちんとマスター」
今回、中野さんが提案するプログラムは3つのレベルで下半身を強化する。レベル1からスタートし、余裕で40回×4セットができるようになったら、レベル2に移動するというステップアップ式のプログラム。
「とにかく、正しい姿勢で行うことをまずは意識すること」、と中野さんはその重要性を説く。「最初は、なかなか回数こなせないと思いますが、1日20回×2~3セットを目標にやってみましょう。それが余裕でできるようになったら回数を増やして、40回×4セットに変えます。これがクリアできたら、レベル2に昇格です。
『え? そんなにやるの?』と思うかもしれませんが、テレビを観ながらでも構いませんし、オフィスで休憩の時に1セット程度行うのも可能だと思います。1回あたりのセット数は違っていてもOKで、1日でクリアすれば差し支えありません。行うときには、以下のポイントを意識しましょう」
【プログラムを行うときのポイント】(レベル1~3まで共通)
●動作を行うときに反動をつけない
●ゆっくり4カウントで下がって、4カウントで上がる
●膝を曲げ、ゆっくり上がるときに息を吐き、膝を伸ばした切ったところで息を吸う
●膝は爪先よりも前に出さない
●膝と爪先は同じ方向に向ける
【レベル1:いすを使った基本のスクワット】
回数:1日20回×2~3セットを目標に⇒できるようになったら1日40回×4セット
1 両足を腰幅に開いて、いすの少し前に立つ。いすに腰かけるように、ゆっくりと4カウントでお尻を後ろに突き出すようにして、腰を下ろしていく。このとき上体を、自然に斜め前に向ける。
2 お尻がいすの座面につくかつかないかのギリギリのところで止め、ゆっくりと4カウントで息を吸いながら立ち上がる。これを繰り返す。
【こんなやり方をしていたら注意!】
上体を前に倒し過ぎている。これでは効果があまり得られない。
膝が爪先より前に出ている。効かせたい部位にアプローチできず、太ももの前側に力が入りがち。
※エクササイズ後は、前回のストレッチを行う
*いすを使う際はバランスなどに注意し、転倒などトラブルにお気を付けください。
スクワットは正しいフォームで行えば、効率的に下半身を鍛えられる種目。そのためにもいすを使ったスクワットで、フォームにこだわってみて。それがいちばんの近道!
Photo:Getty Images Illustration :Kanao Enami(asterisk-agency) Text:Manabi Ito
米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。卓球の福原愛選手やバドミントンの藤井瑞希選手、伊達公子選手など、多くのアスリートの個人トレーナーを歴任。2014年からは青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。東京・神楽坂に自身が技術責任者を務める会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」がある。『下半身に筋肉をつけると「太らない」「疲れない」』(大和書房)、『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『医師に運動しなさいと言われたら最初に読む本』(日経BP社)など著書も多数。ベストセラーも多い。