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ダイエット中で疲れがたまっているせいか、動きがスローだったり鈍くなった気が……。実はこれ、「サルコペニア」の症状かも? 最近、若年層にも増えていると噂のトラブル、サルコペニアとダイエットの関連性を、パーソナル管理栄養士でダイエットコンサルタントの三城 円さんが解説。筋肉とメリハリがないボディラインになるだけではなく、将来の健康やきれいを脅かす、間違った食とダイエット法とは?

かつては老人のトラブル。今、若い世代にも広がりつつあるサルコペニアとは?

サルコペニアとは「sarx(筋肉)」と「penia(喪失)」を組み合わせたギリシャ語で、骨格筋量が減って筋力や体力、身体機能が低下する病気のこと。症状さまざまで、歩くスピードが遅くなる、階段の上り下りで手すりが必要になる、握力が弱くなるなど、日常生活の些細な場面にも現れる。

サルコペニアは、筋肉量と筋力の低下を引き起こす原因によって、一次性と二次性に分けられる。かつては加齢が原因の一次性サルコペニアがほとんどで、サルコペニアは老人の病と言われていたほど。それが近年になって、エネルギーや栄養、運動不足が原因の二次性サルコペニアが増加傾向にあるという。

これには「ダイエットによる減食や偏食、運動不足の影響が考えられます」と言うのは、ダイエット指導や摂食障害のクライアントも持つ管理栄養士の三城 円さん。

「運動せずに、極端に量や栄養を抑えた食事を続けている人は要注意です。筋肉が少なく、脂肪が多い“スキニーファット”になりやすく、それがサルコペニアやその予備軍入りにつながる可能性があります」

糖質制限は筋肉量・筋力が低下しやすい?!

筋肉はタンパク質の合成と分解の繰り返しによってつくられていて、運動によって筋肉量と筋力がアップし、代謝がスムーズに行われることで、健康が保たれている。

「ダイエット中に、意識的に食事量を減らしていると、エネルギー摂取量とタンパク質が不足しやすくなります。特に糖質制限している場合は、カットした糖質分のエネルギー量をカバーしなければなりませんが、エネルギーが含まれているタンパク質が満足に摂れていないケースがほとんどです。タンパク質はできればエネルギー源としてではなく、体の材料として使いたいもの。

しかし、エネルギー不足による代謝の低下とタンパク質不足による筋肉量の低下が同時進行して、スキニーファットになりやすくなります。それは、サルコペニアのリスクでもあるのです」

むしろ逆だった! 筋肉の少ない体は痩せにくい

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ダイエット中は食事の制限ではなく、代謝をサポートする微量栄養素をしっかり摂ることと、基礎代謝を維持し脂肪を燃焼するために筋肉量をアップする運動が必須。この二つが上手くかみ合うことで、程よく筋肉のついたメリハリある体形になる。

「でも、実際には食事制限だけに偏ってしまい、運動が足りていない人が多いように思います」と三城さん。

「筋肉を極端にパンプアップする必要はないのですが、できれば家でスクワットしたり、ジムなどで程よく筋トレをするのが理想的です。適度な筋肉がつくことで、体力もアップします。特に基礎代謝の多くが筋肉によるエネルギー消費によるもの。逆に運動不足で筋肉が減ると、体力だけではなく基礎代謝も低下。痩せにくい体をつくってしまいます。

老人になって急に運動を習慣にするのは難しいので、筋トレは無理という人でも、日常生活の運動強度を上げるよう心掛けましょう」

ダイエットも運動も、「自分に合う」が基本

体には個人差があり、食事や運動の限界値も人それぞれ。「そのことを考えず、雑誌やネットの情報を参考にして自分の体に合っていない食事制限や運動をしてしまう人が多すぎます」と三城さん。

その結果、挫折やリバウンドを繰り返したり、体にトラブルが起きてしまうのだとか。

「頑張っているのに結果が出ない。特に運動をする場合は、運動による栄養素を食事で補わなければなりません。自分に合わないやり方では、体に不調が生じて当たり前。今は大丈夫でも、将来的にサルコペニアになりやすい体をつくってしまうことにもなりかねません。ネットなどの情報はあくまでも一般論。自己流にアレンジして失敗したり、病気のリスクを抱えてしまいますので、まずは専門家のアドバイスを受けることも考えてほしいですね」

ダイエットもファッションやメイクと同じで、自分に合うモノ、方法を見つけるのがきれいの基本。やりすぎや間違った方法で今痩せることができたとしても、それが将来の健康に影響することを忘れないで。



Photo:Getty ImagesText:Yuko Tanaka

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三城 円
管理栄養士

一般社団法人日本パーソナル管理栄養士協会代表理事、食の相談窓口 San-CuBic代表、一般社団法人日本ジュニア・アスリートサポート協会顧問。自身のダイエット、摂食障害の経験から食に苦しむ人を救うべく、「パーソナル管理栄養士」として独立。ダイエット指導や摂食障害のケア、アスリートのパーソナル食事コンサルティングを行う。分かりやすく、腑に落ちる解説で女性誌やマスコミから注目を集める。