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糖質を測れるアプリまで登場し、今やダイエットの定番となった糖質制限。体重が落ちるメリットばかりが注目されるけれど、体と心にデメリットはないの? 糖質制限ダイエットの問題点を、注目のパーソナル管理栄養士・ダイエットコンサルタントの三城 円さんにズバリ直撃してみた。

糖質制限、賛否両論。10年後の体への影響は「未知数」

痩せるため、体形維持のためには糖質オフが効果的! すっかり定着したこの考え方に、「病気がある人や糖質を過剰に摂っている人ならともかく、健康な人が極端に糖質を減らすのは危険です」と警鐘を鳴らすのは、管理栄養士の三城 円さん。

「もともと糖質制限は、肥満や糖尿病の食事療法。治療としての効果は実証されていますが、健康な人が長期的に糖質を少なくした場合のデータはありません」

現時点でも糖質制限は老化を防止するという説が唱えられる一方で、老化を進めて寿命を短くするという説もあるなど、その真実は明確には解明されていない。つまり、糖質制限を長期間続けた人の体に5年後、10年後に良い結果が出るか、もしくは弊害が出るのかは未知数ということ。

「糖質は生きていくためのエネルギー源ですから、過剰に制限した場合に体に不調が生じるのはむしろ自然なことかもしれません。糖質制限すれば短期的に見て確かに体重は落ちます。しかし、体重を減らすこと=健康ではありませんし、将来的な健康リスクがあることも忘れないでほしいです」

無茶な糖質制限はタンパク質不足、エネルギー(カロリー)不足に陥りやすい

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糖質をオフするならタンパク質を摂りなさい、というのが糖質制限の理論。「でも実際にオフした糖質を補うだけのタンパク質を摂るのは難しい」と三城さんは指摘する。

一日に必要なエネルギー(カロリー)摂取量は、標準的な体形の成人女性で2,000キロカロリー程度。このエネルギー(カロリー)分を糖質を少なくしてタンパク質源から摂ろうとすると、かなりのボリュームになる。

ご飯茶碗1杯(150グラム、252キロカロリー)のエネルギー分をタンパク質で摂取しようとすると、脂身つきの豚ロース肉なら100グラム程度。さらに脂身の少ない鶏のささ身肉なら、5本強。 これを毎食食べることに。

「ただでさえ少食の傾向にある若い女性が、毎日大量の肉や魚を食べるのは難しいでしょう。仮に食べられたとしても、消化のいい糖質と違って、よほど胃が強くない限り消化不良を起こし、栄養素が効率的に吸収されず逆に便秘などに陥ることも」

実際、糖質制限をした人の中には、糖質を補うだけのタンパク質を摂り切れず、エネルギー摂取量が減り、結果として痩せたというケースも多いという。

「この場合、タンパク質不足で筋肉が落ち、基礎代謝が低下、また自然と日常生活の活動量が減るため、全体的に代謝も悪くなります。その影響で冷えやむくみ、肌あれが起きることも。一時的に体重減少ができても、痩せてきれいになるかと言われるとそうでもなくて、むしろ不健康になってしまうこともあります」

満たされない食は、挫折やリバウンドにつながりやすい

「糖質を食べない生活を続けていると“食”が満たされていないことが多く、挫折やリバンドを起こしやすい」と、三城さん。

制限を続けた分だけ我慢がきかなくなり、その反動も大きく、「もういいや」と食べ始めたら止まらなくなって暴飲暴食、さらに過食症を招くケースもあるのだとか。

「食生活は習慣。自分がどの程度の糖質摂取であれば習慣にできるかを見極めるのが大事ですね。それをせずに、雑誌やネットの情報を参考にただご飯を抜いたり減らすために挫折してしまうのだと思います」

つまり、心と体に負担の少ない習慣にできる程度で行うのが、糖質コントロールを続けるコツ。

糖質制限の流行はまだ続きそう。でもその裏にはさまざまな問題点が潜む可能性もあることを覚えておいて。



Photo:Getty ImagesText:Yuko Tanaka

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三城 円
管理栄養士

一般社団法人日本パーソナル管理栄養士協会代表理事、食の相談窓口 San-CuBic代表、一般社団法人日本ジュニア・アスリートサポート協会顧問。自身のダイエット、摂食障害の経験から食に苦しむ人を救うべく、「パーソナル管理栄養士」として独立。ダイエット指導や摂食障害のケア、アスリートのパーソナル食事コンサルティングを行う。分かりやすく、腑に落ちる解説で女性誌やマスコミから注目を集める。