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ダイエットにはトレンドがあり、良いことや悪いことも変わり、ごちゃごちゃになってしまう。たくさんある情報のうち、どれが意味があるもので、どれがそうでないかもよく分からなくなってしまう。そんな中、ダイエット界で注目を浴びているのが、ケトン体ダイエット。ケトン体ダイエットとは、ケトジェニックダイエットとも呼ばれ、簡単にいうとケトーシスの状態になるくらい脂質を多く、炭水化物を少なく摂取する食事方法のことを指す。

ケトーシスとは、エネルギーとして脂質を使わなくてはいけない状態に身体を追いこむことだと『Journal of European Nutrition』のあるレビューでは説明する。その結果、炭水化物ではなく、血液中に存在する脂肪が分解されることによるケトン体という物質がエネルギーとして使われる。このケトーシスの状態をつくることで、減量しやすくなる。

つまり、ケトーシスの状態は、身体が脂質に適応しているということで、そうでないときよりも脂肪を燃焼している状態だということだとトロントの管理栄養士のアンディー・デサンティスは話す。この状態をつくるのは、そこまで無理ではない。

炭水化物の摂りすぎで太ってしまう人は多く、特に加工された炭水化物を食べすぎていることが多いので、ケトン体ダイエットを行い、炭水化物をやめることはカロリーを減らすもっとも手っ取り早い方法でもある。さらに、研究ではケトン体ダイエットは、脂質が多いため、満腹感をアップさせてくれ、食欲をおさえてくれる影響もあるそう。ただし、この食事法はもともとダイエットのためにつくられたものではないことを忘れてはいけない、とデサンティスは話す。

ケトン体ダイエットを減量に使う際には誤解も多くある。そこでケトン体ダイエットにまつわる誤解を5つあげ、この食事法をダイエットにどう活かせばいいのかを検証してみた。

誤解1:ケトーシスとケトアシドーシスは同じ

ケトーシスとは前述のとおり、身体が「脂肪燃焼モード」になっている状態で、これは身体が蓄積された脂肪をエネルギーとして消費して、ケトン体をつくるようになってはじめてなる状態。ただ、Jim White Fitness and Nutrition Studioのオーナー、ジム・ホワイト栄養士は、ケトーシスとケトアシドーシスを混同してはいけないと注意する。ケトアシドーシスとは、命にもかかわる可能性のある状態で、普通は糖尿病の患者に見られる血液が酸性になる危険な状態のこと。

ケトアシドーシスは、ケトン体が増えすぎると起きるため、ケトン体ダイエットを行っている人にも起きうることだと2017年に『Strength and Conditioning Journal』に発表された論文では説明する。ケトアシドーシスの症状には、腹痛や身体が弱くなる、のどのかわき、息があがる、意識がもうろうとする、目の前がぼやけるなどがある。

誤解2:ケトン体ダイエットは、高タンパク質ダイエットである

ケトーシスの状態をキープしながらも、ケトアシドーシスにならないためには、タンパク質を増やすのではなくむしろ減らさなくてはいけない、とラッシュ大学の研究者で栄養士でもあるケリー・ローエルは説明する。ケトン体ダイエットの指導もしているローエルによると、ケトン体ダイエットは高タンパク質ダイエットであるという誤解が、ケトン体ダイエットにまつわる神話の中でももっとも危ないものだという。

これは、タンパク質量が増えると、タンパク質に含まれるアミノ酸が分解されてケトン体を増やすことになるため。これは、ダイエットをしている普通の人にとっては良いことだけれど、ケトン体ダイエットをしている人はすでに血中のケトン体が多いので、さらにケトン体が増えてケトアシドーシスに陥る可能性が高くなるとローエルは忠告する。さらに、タンパク質を摂りすぎると、グルコースに変換されて血糖値を急上昇させてしまい、ケトジェニックとは逆の効果になってしまう。これでは良いことはない。

では、ケトン体ダイエットを行っている場合はどのくらいタンパク質を摂れば良いの? だいたい1日のカロリーの6%から8%をタンパク質から摂ることで、ケトーシスの状態を保ちながらケトアシドーシスのリスクをなくすことができる、とホワイトは言う。一方で、炭水化物は一日の2%から4%が目安。一日の目標摂取カロリーが2000kcalの女性の場合、タンパク質は30gから40gを目指したい。これはだいたい卵2個か鶏ムネ肉85g程度になる。

筋肉を増やしたい人にとってケトン体ダイエットが向かないのは、タンパク質の摂取量をあまり増やせないことが理由だと『Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics』は説明する。

誤解3:脂質ならなにを摂ってもよい

ケトン体ダイエットなら脂質のことは気にしなくてもいいと思うかもしれないけれど、専門家は飽和脂肪酸ばかりを摂るのはいけない、と話す。

『Journal of American College of Nutrition』によると、ベーコンやソーセージ、ハムなどの飽和脂肪酸を、クルミ、フラックスシード、魚などの不飽和脂肪酸にかえることが循環器疾患のリスクを下げるには一番効果的だと話す。これはただ脂質を減らすよりも効果があるそう。ベーコンのような加工肉はガンのリスクを上げるとする研究もある。

「ケトン体ダイエットをするときは、地中海式のエッセンスを取り入れるとよい」とローエルは話す。「質のよいエクストラバージンオリーブオイル、ナッツ類や種子類、脂身の多い魚から脂質の大部分を摂るようにして」。

誤解4:炭水化物がなくても脳はきちんと働く

昼前になんとなく頭がぼんやりしてしまう、ということは経験したことがあるはず。あるいは、おなかがすいてイライラしたことがあるなら、血中に糖質が足りないとどうなるかは分かるはず。そんな状態のとき、脳は脳にとって一番使いやすいエネルギーのグルコースをくれ、と叫んでいる。

特にケトン体ダイエットをはじめたころは、脳がグルコースを欲しているのを感じるはずだとホワイトは言う。これは、炭水化物は一日100gほど必要だとされているところ、ケトン体ダイエットは少ない場合50gまで摂取量を抑えてしまうため。

脂肪をエネルギーとすることに慣れるまでは、空腹でイライラするときや、ランチ前と同じような状態になるかもしれない。でも、一度慣れれば、脳もケトン体を燃料とすることができるが、ホワイトによるとこの状態になるまでに数週間から数ヶ月かかることもあるという。

誤解5:ダイエットは時間をかけなくてはいけない

油っぽいものが好きで、カロリー計算は苦手だけど炭水化物をやめるのは苦ではない、という人にとってケトン体ダイエットは続けやすい。でも2017年の研究によると、ダイエットは本来であれば長期間やるものではないそう。

一番の理由は、ケトン体ダイエットを長く続ければ続けるほど、筋肉量が減る可能性が高くなってしまうそう。筋力や筋肉の緊張度が低下するだけでなく、除脂肪筋肉量が減ってしまうことで代謝も落ちてしまう。つまり、体重が減るにつれて燃焼カロリーも減ってしまうということ。

研究者は、ケトン体ダイエットは短期間で体重を減らすのには効果があるがけれど、一度に数週間以上はやらないほうが良いと指摘する。たとえば、ジムでハードに運動しているときだけに限定するなどをしたほうが良い。そして、運動の負荷を高める前には炭水化物とタンパク質の摂取量を増やした方が良いという。ただ、ケトン体ダイエットをすることで「代謝が柔軟になる」ということは確かで、身体が複数のものをエネルギー源とすることができるようになり、健康と体重減に効果がある。

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。



Text:Tessa Yannone Translation:Noriko Yanagisawa Photo:Getty Images