Woman in Sports審査委員・神崎貴子さんインタビュー「スポーツする人を支えたい!」

27 February 2018

Woman in Sports審査委員・神崎貴子さんインタビュー「スポーツする人を支えたい!」

Woman in Sportsの趣旨に賛同し、審査委員を務めてくださるスポーツアロマトレーナーの神崎貴子さん。子供の頃の「オリンピックに行きたい」という夢をトレーナーとして叶えた彼女のストーリーには、仕事をする女性としても刺激を受けるはず。

幼い頃からスポーツが大好きな少女だった神崎貴子さん。大学ではスポーツを専攻し、将来は体育の先生になるのだと思っていたそう。24歳の頃、日本のアロマテラピーの第一人者である姉、吉川千明さんの姿を見て、「人に何かを施す仕事をしたい」と思うように。そして、吉川さんのアロマオイルを使ったトリートメントの施術を受け、感動。「これを職業にできるかもしれない」と考え始めた。

とはいえ、当時アスリートをサポートする人と言えば、鍼や整体、トレーナーという職業しか思いつかなかった時代。

「最初はアロマを使ってアスリートをサポートする方法がわからず、たくさんの人に会い、やりたいことを伝え続けました。精油については当時日本に学校もなかったので、情報源は海外の専門書。就職したスポーツクラブ内のサロンでスポーツ選手へのマッサージにアロマを取り入れ、フィードバックをもらうということを繰り返す中で、アロマを使ったマッサージの必要性に確信を持つようになりました」


トレーナーとしてオリンピックの選手村へ

トレーナーとしてオリンピックの選手村へ

その頃、シドニーオリンピックの選手村にセラピストとして参加する機会を得た。選手村では世界87カ国からやってきたセラピストたちとともに2週間で5000人の施術を行い、神崎さん自身は400人にアロマを使ったオイルマッサージを行なった。

「当時、日本ではオイルマッサージはまだ知られていませんでしたが、世界では当たり前。ほとんどの選手がオイルマッサージを受けており、必ずこの職業が世の中に必要とされる日が来ると感じました」

そしてこのシドニーオリンピックでの活動が、「選手じゃないのに選手村で活躍する日本人がいる」ということで注目を集めることに。帰国後には取材が殺到し、職業として「スポーツアロマトレーナー」という肩書きを作り、日本スポーツアロマトレーナー協会を設立。

そして、神崎さんの次なる目標として芽生えた思いが、「他のトレーナーにも世界のトップ選手を施術する経験をさせてあげたい。次のオリンピックではIOCに招待される形でオリンピックに参加したい」というもの。

さらに、日本の選手のためにも、スポーツアロマトレーナーを育成していこうと決めたその頃に、尊敬する先生から「医療資格、国家資格を取っておきなさい」というアドバイスを受けた。帰国の2ヶ月後には鍼灸師の専門学校を受験し、そこから3年間鍼灸師の資格を取るべく学びの日々がスタート。

小学生の息子を育てながら、専門学校に通い、サロンでの仕事もする。仕事と学業の両立のため学校の近くにサロンを移転させた。「当時は必死すぎて記憶もないくらいです」と振り返る。

それと並行して行ったのが、オリンピックのインターナショナルマッサージチームへのエントリー。「これは、IOCのホームページのボランティアサイトから応募するんです。応募してからもずっと自分たちの実績をアピールする資料を英文で作ってIOCに送り続けました」

そんな努力が実って、アテネオリンピックが開催される年の春、IOCからインターナショナルマッサージチームとしての招待状が届く。夢見た通り、IOCからの招待で自分だけでなくスポーツアロマトレーナーチームとしてオリンピック選手村で施術をすることができた体験は、トレーナーひとりひとりにとっても得難い体験となった。その一方で、夢を実現してしまい、次なる目標を見失ってしまった神崎さんは、数ヶ月の間、燃え尽き症候群のようになってしまったそう。

そんな時、彼女を癒してくれたのはアロママッサージ。スタッフたちがマッサージをしてくれ、徐々に元気になる中で、ロンドンパラリンピックに出場する選手やそのチームスタッフをサポートしたいと思うようになる。

神崎さんがサポートすることになったのは、アテネパラリンピックで金メダルも取っているマラソンの高橋勇市選手。視覚障害ランナーには伴走が必要だが、自分のペースで走れないサポートランナーたちも怪我が続出してボロボロの状態だった。

ロンドンパラリンピックで競技を引退しようと決めていた高橋勇市選手だが、スポーツアロマによるケアにも興味をもち、熱心にセルフケアをするようになった結果、ロンドンパラリンピックでも自己ベストの記録を出して7位入賞。レース後に「スポーツアロマと出会っていなかったら、棄権していたと思う」と言われて、神崎さんはケアを続けることの大切さを感じたそう。

2020年に迫った東京オリンピックについて尋ねると、

「東京オリンピック・パラリンピックは参加しないと宣言してきたんですけど、これで最後にしようかなと思っています。また、IOCのボランティアエントリーページから申し込んでみるつもりです」


熊本の自転車部の高校生を全国優勝へ

熊本の自転車部の高校生を全国優勝へ

そして今、神崎さんが力を入れている活動の一つが、高校の自転車部のサポート。熊本地震でいつも使っていた練習場が壊れ、なんとか使える1レーンだけで練習している子供達のたくましさに心を打たれ、彼らをサポートし、日本一にしてあげたいと思うようになったそう。以来、月に2回熊本の九州学院を訪れ、生徒のご家族に食生活やマッサージのアドバイスから、生徒にはリカバリー法や生活習慣などアスリートとしての心得を教えてきた。その結果、日々の練習で培われた力が発揮され、神崎さんが熊本に通うようになって4ヶ月後、3月の全国大会で九州学院の自転車部は全国優勝を果たす。

「高校生の男子は、ただでさえ母親と会話が少ない年頃。でもお母さんにマッサージしてもらうのは、子供も嬉しいし、心が安定するんですよね。食事は頭で考えながらきちんと食べるようになり、競技への心構えも変わったことが、優勝につながったのだと思います。今年は連覇を目指しています」

自らの「やりたいこと」を職業として開拓して整備し、人材を育成してきた神崎さん。彼女の教え子であるスポーツアロマトレーナーは今、多くのアスリートを支えている。

東京オリンピックの後の目標を尋ねると…… 

「今は大会にサポートに行く時にはチームでお邪魔していますが、元々は一人でやっていたので、自分が好きなスポーツの大会に一人で行って、スポーツアロママッサージを施すのもいいかな、と思っています。スポーツアロマトレーナーとして、スポーツをする人と触れ合うのが本当に好きなんです」

そう微笑む笑顔はとても穏やかで幸せそうだった。

Photo : Kanako Okada

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