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近年、新たな働きかたのスタンダードとなりつつある“兼業”。ヘーク恵利加さんもモデルとパーソナルトレーナー、二つの肩書を持つ。4年前、スウェーデンから日本へ移住したことをきっかけに、現在のワーキングスタイルに行きついた。彼女にとって二つの仕事をする意味とは?

@lionlifts

モデル活動を始めたのは16歳。まだスウェーデンにいるときだった。ジムに通ってトレーニングするようになったのもちょうどこの頃。体形を維持するために始めた運動が仕事になるまで、さまざまな体と心の変化があった。

転機になったのは19歳のとき日本に移り住んだこと。思春期だった彼女の体と心に大きな影響を及ぼしたのは、大好きなモデルの仕事だった。
「日本ではモデルが本当に細くて。周りの子の細さに追い付かなきゃ、って気持ちで食事の量を減らし、有酸素運動で追い込む、そんな生活を数カ月間続けていました。自分ではそこまで追い込んでいるつもりはなかったけど、家族や友人に心配されてやっと自分の体がボロボロなことに気がつきました」

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周囲の人たちの支えもあり、健康体であることの大切さを実感した。バランスのとれた食生活と運動を継続しているうちに、気持ちまでもが変わる体験をした。

「それまでは自分の体が嫌いだったからトレーニングをしていました。でも、重いものが持てるようになる、速くなる、そんな成功体験を重ねると自分の体が好きだからトレーニングしてるんだって思えたんです。セルフラブっていうのかな、そういうことを他の人にも伝えたくて、トレーナーになりたいと思うようになりました」

実践することで見えてきた“伝えたいこと”

ほどなくして、クロスフィットで1年間インターンをするチャンスに恵まれた。トレーナーとして人前に立つと、自分の進むべき道がより明確になっていった。
「トレーニングに来た人の、できなかったことができるようになったタイミングに立ち会えることにやりがいを感じました。だからトレーナーになることはそこで確信した気がします。でも、一度に複数人と向き合うより、一人一人の目標に寄り添うほうが自分には向いてると思って。だからパーソナルトレーナーを選びました」

はじめはモデル仲間や知人に教えるようになり、パーソナルトレーナーとして軌道に乗ったのは20歳のとき。トレーナーとして3年間キャリアを積んだ今、指導する内容は体のことだけでなく心のメンテンスも行うようになっていた。

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「クライアントさんは18歳から50歳の男女ですね。レッスンはマンションのジムや自宅で行います。男性は体を大きくしたい、女性は痩せたいという目的で来る人がほとんどです。モデルの友だちからも撮影前にトレーニングしてほしいと頼まれて、指導することがあります。もちろん目標は『痩せたい』。だけど、痩せなくてもモデルはできる、健康的な体形でもいいじゃんって伝えるようにしています。意外とみんな、続けているうちに当初の目的は忘れて、楽しいからって理由にシフトしていることが多いんですよ」

ふたつとも好き、だからやる。

モデルとトレーナー、二つの仕事をすることに周囲からは「忙しくないの?」と驚かれることも。

「二つの肩書を持つことは、わたしにとってごく自然なことでした。兼業しようと思って始めた感覚はなくて。好きでやりがいのあること、どちらか選ばなくてもいいと思いました。モデルの仕事は大好きだけど、細くてかわいい子たちをずっと見ていると、気を付けても比べてしまうんです。一方で、パーソナルトレーナーでいるときは、自分を好きだって再確認できる。だから、心身のバランスを保つためにもむしろ欠かせないですね」

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自分だからできることは、女性のパワーをもっと世に発信していくこと。

「女性はパワフルだし強い、それが美しさでもあるんじゃないかな。細いだけがモデルじゃない、ってもっと広めたいですね。そのメッセージをモデルのときは自分が媒体になって表現して、パーソナルトレーナーのときは教えることで人に伝えられる。ふたつとも大好きな仕事です」

Photo: Keita Goto Hair&Make: Taro Yoshida

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Chie Arakawa
ウィメンズヘルス・シニアエディター

タレント・アスリートインタビュー・スポーツファッション・ウェルネス記事などを担当。女性誌FRaUでファッション・スポーツ・ダイエットなどの編集キャリアを積み、その後スポーツライフスタイルマガジンonyourmarkのプロデューサーとして在籍後、2022年までウィメンズヘルス編集部に在籍。