「それでも根はストイックな性質なので、自分の考えと違うことに対して、耳を傾けられるようになれるまでには時間はかかりました。ミステリーハンターや旅サラダなどのレポーターとして仕事でよく海外に行くようになってから、少しずつ価値観は変わっていきましたね。別に、正解はひとつじゃないんだって。いろんな生き方、考え方があって、むしろみんなが違いを受け止め合いながら世界の人たちは生きている、って思うようになったんです。そう思えるようになってから、じっくりと考えられた機会が、初めてのフルマラソンのレース中だったんです。走っている間、長いじゃないですか。今までの仕事のこととか振り返り始めたんです。そしたら、どういう仕事をしたいか、ということよりも、どういう人間になりたいか、っていうのが大事なんじゃないかって気づいて。実はレースが終わったら、お芝居をメインでやれるように、仕事のスタイルを変えようとしてたんですけど、いったんリセットしてゼロから考えようと思い直したんです。日々に忙殺されたままで、大事なことを決めるのではなく、一度立ち止まって、自分をちゃんと俯瞰して、仕事以外の経験もインプットする時間が大事なんじゃないかって」
依吹さんはこれから、所属事務所を離れて、しばらく世界を旅することに決めた。そこで得られるものは、かけがえのない経験になると、イメージしている。
「これからどうなったとしても、これからの経験が絶対に、これからの人生に生きるはずって、思ってます」