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渋滞に巻き込まれたとき、同僚がやたら気に障るとき、何かが突然うまくいかなくなったとき。心の中で知らぬ間に感じていた激しい怒りが爆発し、周囲の人に手当たり次第八つ当たりしてしまうこと、きっとあるはずでは?

オーストラリア心理学会によると、怒りとは、ちょっとしたイライラから激しいものまで度合いに幅のある感情。この影響を受けるのは心だけではなく、血圧、心拍数、アドレナリンの上昇といった身体的な変化も現れる。

そこで今回は、心理学者検索サイト「Lysn」の最高執行責任者で心理学者のターニー・シュルツに、人はなぜ怒るのか、短気をうまくコントロールするにはどうすればいいのかを教えてもらった。

感情的に即、反応。「怒りやすい人」がいるのはなぜ?

感情的に怒るのには多くの理由があり、その人の気質も育ちも関係しているそう。例えば、生まれ持った遺伝子の構造、後成的遺伝、性格。過去の辛い経験やトラウマへの敏感さや、生きているうちに習得した正義感の強さも怒りやすい原因になる。

両親や友人をはじめとする、人生に影響を与える人物が普段から当たり前のように怒っているのを見て育つこともある。例えば何かにつけて突っかかってくる親を、子どもがマネするケース。このように習得された行動は、ストレスや困難に直面すると自動的に出てくるようになる。体調が優れないとき、疲れているとき、精神的に参っているときにも人は怒りを感じやすい。

さらに、怒りやすいとされる性格のタイプもある。例えば、「自分には何かをもらう権利が、当然のようにある」と考えている“誇大妄想型のナルシスト”は、自分が正当に認められていないと感じると、怒りやいら立ちを見せることが多いらしい。

短気な人はどうする? 「自分を落ち着かせるテクニック」

カッとしやすいタイプだと思うなら、 自分を落ち着かせるためののエクササイズはたくさんある。まず大事なのは、怒りを認識してコントロールすること。全ての怒りが悪いわけではないけれど、それにどう反応するかはもちろんのこと、怒りをどう認識して制御するかも重要。焦らずゆっくり、自分にとって怒りが意味するものを理解して、自分を引き伸ばすような反応の仕方を見つけていこう。どう反応すれば自分を誇りに思えるか想像してみると分かりやすい。

次に、怒りのトリガーと、怒りを感じる前の警告サインを特定してみよう。たいてい人は、怒りが押し寄せてくるのを “感じる” もの。また、怒りを感じている時の “身体的な感覚” は人を疲れさせる。例えば、体の火照り、発汗、心拍数の上昇。歯を食いしばったり、肩が凝ったり、視野が狭くなったりするのも、怒りが体に及ぼす影響。怒りに伴う “お決まりの感覚” が特定できれば、キレる前に “そろそろ危ない” ことがハッキリ分かる。つまり、怒りが忍び寄ってくるのが事前に分かるので、一瞬ではあるけれど、体が勝手に反応するのを止めて気を散らすための時間ができる。

目の前の状況に反応する前に、時間を取る練習をするのも効果的。派手に怒ってしまうケースの多くは、感情を適切に処理したり、自分の感情を正確に把握したりするための時間を取っていないことに原因がある。状況に応じて数分、あるいは数時間置いてから、怒りの原因となった状況に対応してみよう。この “タイムアウト” 中に感情を処理して、それが情動反応であることを認識できれば、少しはソフトに対応できるかもしれない。運動と同じく、呼吸エクササイズも心を落ち着かせるのに役立つそう。

ちょっと待って。「専門家の助け」が必要な怒りとは?

何かに対処するとき、ほとんどの「最初の反応」が怒りになったら問題。のっけから怒ってしまうことが多いなら、専門家に相談してみる価値はある。身体的、精神的な暴力を振るったり、相手を追い詰める段階まで発展したら、専門家の助けを得るべきだし、それが健康の維持につながることもある。時間とともに怒りは短期記憶や学習能力、意思決定能力に悪影響を与えるようになるばかりか、体内の炎症を悪化させて免疫システムを弱めるので、病気にもかかりやすくなる。

常に怒ったり、気を高ぶらせたときの身体的、精神的なデメリット

怒りを覚えたときの身体的なサインは発汗や心拍数の上昇から、息切れ、頭痛、胃痛、めまいまで多岐にわたる。このような体の反応は健康に間違いなく被害を与え、長期的には不眠症や心臓疾患、高血圧、副腎疲労、そしてがんさえ引き起こすことがある。そのうえ日常的な怒りは、本人と親しい人の精神状態にも多くの点で影響を与え、ストレスや不安、うつ病につながることすらある。近くにいるが故に攻撃の的になることが多い大切な人々に、どんな影響が及ぶかは、言うまでもない。

怒り狂って別人のようになるのは、深刻な病気のサイン?

まだ診断が下されていないだけで、実は精神障害を抱えている可能性はあるみたい。自閉症、注意欠陥多動性障害 (ADHD)、双極性障害などは、普段の性格からは考えられないような怒りを引き起こすことも。そう診断された人全員が、激しい怒りを経験するわけではないけれど、その可能性もあると理解しておくことが大切。

低血圧のような健康問題も突発的な怒りの爆発の原因になるし、慢性的な痛みがあると精神的、感情的、身体的な面で非常に疲れるので神経が過敏に。また、飲んでいる薬や特定の食べ物が、腸の健康と脳内の化学物質に影響を与えるため、体が言うことを聞かず不快に感じることもあれば、薬の変更や経口避妊薬の服用で気分のむらが激しくなったり、怒りやすくなったりすることもある。

まるで別人のように怒ってしまう背景には、こうしたさまざまな変化が絡んでいるのかもしれない。

※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。



Text: Frances Magiera Translation: Ai Igamoto Photo: Getty Images

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Nana Fukasawa
ウィメンズヘルス・エディター

2018年に「ウィメンズへルス」編集部にジョイン。アシスタントを経て、エディターとして美容、フード、ダイエットなどの記事を担当。流行りそうなヘルシーキーワードをいち早くキャッチすることを心がけている。CBDや筋膜リリース、アーユルヴェーダ、植物療法を学ぶ、自他共に認める“セルフケア マニア”。2023年初めてのハーフマラソンに挑戦。