不安に対処するための10ステップガイド
メンタルヘルス問題を何とかしようと余計なストレスを感じる必要はない。日々の暮らしに自己救済を取り入れよう。
メンタルヘルス問題を何とかしようと余計なストレスを感じる必要はない。日々の暮らしに自己救済を取り入れよう。
心臓がドキドキする。みぞおち辺りが気持ち悪い。交通事故、人類滅亡、世界の終わりといった無意味な考えで頭がいっぱい。このような兆候は、ゆっくり休んで不安に対処する10ステップを学ぶべき危険信号。
でも、あなたは一人じゃないことを覚えておいて。メンタルヘルス慈善団体Mindで情報マネージャーを務めるレイチェル・ボイドによると、どの年代においても女性の方が不安を抱える確率が高い。そして、5人に1人が不安症状を訴えているということは、ちょっと周囲を見渡せば仲間が見つかる可能性もあるのだ。
メンタルヘルスの話題がほぼタブーだった5年前に比べて、『Time to Change』などのキャンペーンをはじめとるする様々な活動のおかげで、不安への対処法を議論することも一般的になってきた。「自分の不安症状を他人に明かすことは一切なかった」 と語るのは、『The Fitness Mindset』の著者ブライアン・キーン。「気分が悪くて、おかしいくらい心臓が跳ねて、胸が狭い場所に閉じ込められたように感じていた。でも、それにしっかり対処することで徐々に要因を取り除くことができた。最も重要なのは、症状をコントロールできるようになったこと」
不安とストレスの違い
不安の症状を抱えているなら、すぐにでも医師に相談するべきなのは言うまでもない。「人々は、不安神経症を日々のストレス程度としか考えていない」 とボイド。
「その症状のせいで、いつも通りの仕事ができないと感じるなら、できるだけ早く助けを求めることが大切」。医師は、セラピー、リラックス療法、瞑想といった幅広い治療方法の中から最適なものを選ぶ手助けをしてくれる。プルアップと同様、その方法をものにするには時間がかかるものなので、忍耐力と根気をもって自分に効果のある治療法または治療法の組み合わせを見つけること。その努力に見合った結果がきっと出るはず。
10ステップで不安に対処する術を学ぼう。
Text: Emma Pritchard Translation: Ai Igamoto Photo:Getty Images
1.息をする
聞こえはシンプルだけど、適切な呼吸法を習得すると不安発作への対処に大きな違いが出る。Anxiety UKのCEOニッキー・リドベターによると 「不安神経症を抱える人は、過呼吸や過換気状態になりがち」 なんだそう。「間違った呼吸パターンが出はじめる。正しい呼吸には、胴部上方で小さく浅い呼吸を何度も繰り返すのではなく、下腹部を使うべき」
リドベターが勧めるのは、この簡単なエクササイズ。「3秒かけて鼻から息を吸い、3秒止めて、5秒かけて口から吐く」
2.リラックスする
ウェイクフォレスト・バプティスト・メディカルセンターが行った研究の結果、瞑想で不安が最大39%減ることが分かった。たった20分のセッションでこの効果。米国ジョージタウン大学医療センターによると、これは瞑想が体内のストレスホルモンのレベルを下げるから。
マットの上で瞑想するタイプじゃない?「僕にとっては、トレーニングが瞑想だ」 と語るキーンはこう続ける。「散歩に行ったりオーディオブックを聞いたりしてもいい。不安とは未来を生きることで発生するものだから、今この瞬間に集中できることを選んで」
3.気を散らす
不安に対処する方法を学ぶには時間と我慢が必要。確実な方法の一つは、思考を脇へ反らせること。リドベターによると、「気を散らすのは、閉じ込められたと感じる状況で非常に便利なテクニック。例えば、スーパーで列に並んでいる間、“ここから脱出しなきゃ” と考える代わりに、並んでいる人々を観察する。何を着てる? 何を買ってる?」 。これがうまくいかなければ、頭の中で100から逆に数えるか、アルファベットをZから言ってみよう。
4.おしゃべりする
おしゃべり相手を見つけること。メンタルヘルス慈善団体SANEいわく、起こりそうなことに対する恐怖ばかり考えてしまうのが不安神経症。これではネガティブ思考の悪循環に陥る可能性がある。そこで、ポジティブな面を見つけるために思考を再構成するのがキーンのおすすめ。「最悪のシナリオを描くと前に出られなくなる。だから、初対面の人と会う時は、嫌われるんじゃないかとか何を話せばいいんだろうと心配する代わりに、ひょっとすると居心地の悪い30分になるかもしれないと考えるようにしている。それなら、そんなに悪い話じゃない」
不安への対処法を聞かれたら、話し続けて。とにかく、話して話しまくること。
5.心配するのも予定のうち
心配してもいいということを覚えておくのは大事。実際、イベント前の不安はパフォーマンスの向上に役立つことがある。心構えがコツ。「心配な気持ちを抑え込もうとするのではなく、毎日特定の時間と場所で心配する」 よう勧めるのはリドベター。「よりリラックスした心理状態で心配すれば、大して心配するようなことではない気がしたり、意外と簡単に解決できる問題に思えたりする」。 計画をはじめるのが一番よさそう。
6.言葉にして話す
話すのは本当にいいらしい。認知行動療法は英国国立臨床研究所が推奨する証拠に基づくアプローチで、ノルウェー科学技術大学の研究によって、社会不安障害に間違いなく最も効果的な治療方法であることが判明した。服薬の必要も、他の方法と組み合わせる必要もない。これは、認知行動療法によって、役に立たない思考パターンを特定し、不安への建設的な対処法を見つけることができるから。ボイドによれば 「認知行動療法は個人でも (セラピストと1対1)、グループでも、自助的な本でも、コンピュータ化されたオンラインコースを通しても受けることができる」。MindとAnxiety UKは、イギリス国内の身近なサービスを探すのを手伝ってくれる。
7. よく食べる
ケーンいわく 「食べ物の影響は大きい」。加工食品や高糖質食品の代わりに、タンパク質、複合糖質、新鮮なフルーツと野菜を食べ始めたところ、不安症状をコントロールしやすくなったそう。科学もこれを裏付ける。米国ミズーリ大学は、ヨーグルトに含まれるような一般的なプロバイオティクスが不安を和らげることを発見した。また、米国メリーランド大学ボルティモア校は発酵食品のメリットを指摘し、摂取を勧めている。残念なことに、チョコレートやコーヒー、そしてアルコール飲料の定期的な摂取は逆効果。ヘルシーなスムージーで対応しよう。
8.体を動かす
定期的なエクササイズが総体的な健康にいいことは言うまでもないけれど、不安への対処には運動がますます大事になる。米国ジョージア大学は、30分の運動で不安が約20%軽減される一方、ネットフリックスやデスクワークといった座り作業で不安のリスクが高まることを明らかにした。緑の多い場所で体を動かせば、エコセラピー的なメリットも得られる。
9.ナチュラリストになる
まだ神経が張り詰めてる? この分野の研究はやや不完全であるものの、催眠療法やリフレクソロジーなどの代替セラピーが不安対処に役立つという声は多い。「セイヨウオトギリやセイヨウカノコソウといった天然の精神安定剤も役に立つかもしれない」 とリドベターは考える。
10.薬を飲む
最後に、忘れてはいけないのが服薬。選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) やベンゾジアゼピンといった弱めの精神安定剤は、症状を緩和し、脳内のセロトニンやガバ(GABA)などの化学物質の効力を高める。このような薬を頼りにする女優アマンダ・サイフリッドの見解は適切なもの。「何と闘っているの? 工具を使った時にできたアザ? それならともかく、心の病は真剣に捉える必要がある。心の病は目に見えない。かたまりでも嚢胞でもないけど、そこにある。それをどうして証明しなきゃいけないの? 治療できるなら治療するべき」。あなたも躊躇う必要はない。
出典:Anxiety UK, Mind, Elefriends, SANE