星野リゾート代表の星野佳路さんは、スキー滑走年間60日を目標にしている。雪を求めて日本の夏には南半球へ移動し、ゲレンデのリフトに乗りながら仕事をしていることもあるというから驚き。そんな彼を虜にするスキーの魅力とは? 1時間に渡る熱いインタビューを3回にわたってお届け。
スキーは旅である
「スキーというスポーツは旅なのです。スキーというスポーツを通して旅をすることに楽しみがあるのです」
スキーの魅力について尋ねた第一声はそんな言葉。
「例えば雪山は場所によって全く違います。それぞれの雪山に特徴があって、それを滑ることに楽しみがあります。また、旅ですから滑っている時間以外に関しても、宿や街、食文化などが全然違うのです。例えばオーストリアでスキーをすると、山も違うし食も違うし、そこに集まるスキーヤー達のスキー文化も違います。日本では雪も深いですが、その後に温泉があるし焼き鳥や日本酒もある。ちゃんとそれぞれの土地に合った楽しみがあるのです」
そう言いながら見せてくれたのは、世界各地で友人や会社のスタッフたちと楽しそうにスキーをしたり、食事を楽しむスナップ写真の数々。
「私は社員と一緒に毎年ニュージーランドへ行くのですが、ニュージーランドのスキー場のひとつの特徴は景色です。あちらでは1000メートル以上のところに雪があるのです。風景が日本の雪山の風景と全然違います。私はニュージーランドに7年も通っているので、あちらの人とホームパーティーを開催して、長時間熟成させた羊のローストを用意したりといったこともします 。こういう現地ならではの食のバランスは世界各国どこに行っても大事ですね」
美味しいものを目的に旅する「星野グルメスキークラブ」
スキー旅の魅力をたくさんの人に知ってほしい、その一念で社員をはじめ、多くの人をスキーに誘ってきた星野さんが、自ら発起人となって作った部活が「星野グルメスキークラブ」。これは日本スキー連盟にも登録されている正式なクラブだそう。
「私はいろんな人をスキーに誘っていますが、スキーは学生の頃のイメージが強いようです。寒い中、民宿に泊まって食事も今ひとつで……と思われてしまい、みんな来たがらなかったのです。ところが、クラブ名に“グルメ”という名前をつけただけで参加者が激増しました(笑)。グルメをコンセプトにしているので、引率する私は食をしっかり演出しなければいけないわけです」
星野さんがとっておきの美味しいものをアレンジしてくれるスキー旅なんて、参加者が殺到するのも納得。
快適な宿と豊かな食が揃う、ニュージーランドスキー
夏になると必ずニュージーランドにスキー旅行に行くという星野さんに、ニュージーランドスキーの魅力を聞いてみた。
「私が毎年訪れるクイーンズランドは夏のリゾート地。夏を過ごすため、お金持ちの別荘がたくさんあり、良いレストランも揃っています。オーストラリアの夏休みは1月なので、太陽に溢れるその時期は街中が非常に輝いています。ところが冬は寒くて別荘のオーナー達は使いません。そのため私たちスキーヤーが素敵な別荘を借りられるわけです。日本の場合はスキー場に泊まりますが、ニュージーランドは雪があるのが標高の高い場所なので、別荘がある町からスキー場まで車で上がっていきます。日本の夏の時期には、クイーンズランドに世界中のスキー好きが集まってきます」
世界中のスキー場を巡っている星野さんが訪れたスキー場で、印象に残っている場所を聞いてみると、スイスのサンモリッツの写真を見せてくれた。
「スイスの場合は、スキー場の中に町があり、食事も充実しています。 ゲレンデ内のレストランが充実しているのがヨーロッパのスキー場の特徴ですね。滑っていると山の中に町が現れたりすることもあります。ゲレンデの中にバーがあったりするのも面白いですね。日本ではちょっと寒いと外で飲んだり食べたりしたがりませんが、ヨーロッパの人達は全く問題ないく、どんなに寒くてもゲレンデでビールを飲むのです」
日本で見慣れたスキーとは全く違う体験ができる、ヨーロッパやニュージーランドでのスキー。スノースポーツ好きなら、一度は経験してみたい!
次回は、スキー初心者のための、スキーが上手になる道具選びのコツをお届けする予定。
『エル・オンライン(現エル・デジタル)』のファッションエディターを経て、フリーランスに。女性ランナーによる企画集団「ランガール」を設立。その後女性誌立ち上げやWebメディアの立ち上げを経て2017年にウィメンズヘルス』日本版ローンチ時から編集長に。2023年夏よりエル・グルメ編集長も兼務。趣味は料理を作って友人たちに振る舞うこと。