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競技や運動に打ち込んだり、ジムに通ったりしても当初の情熱の炎は段々と小さくなり、続けることが難しくなったり、苦痛になったり。「自分の精神が弱いせい?」「モチベーションの維持の仕方が分からない」といった声も聞く。そこでモチベーションの維持や「そもそもなぜジムでトレーニングをするのか」という、自分でも当たり前すぎるように思えて振り返らなかったことについて、アスリートやトレーナーからも注目される、ストレングス&コンディショニングコーチの河森直紀さんに話を伺った。

そもそも、その競技をするのはなぜ? そもそも、そのトレーニングは何のため?

「競技をしているのであれば、それが目的です。趣味とは違います。トレーニングをするのは、その競技のためということになります。“なぜ、それをやっているのか”を明確にすることですね」と教えてくれたのは、日本代表アスリートなどの指導も務めた河森直紀さん。海外での研鑽を重ね、SNSやブログ上の発言でも注目される気鋭のストレングス&コンディショニングコーチだ。

「例えばマラソンをやっているなら、トレーニングはマラソンのためになります。趣味で運動をしているのであれば、『なぜその運動が好きなのか』を明確にするのがよいかもしれませんね。ジムでのトレーニングはその好きな運動をサポートするため、ということになります」

また河森さんは、モチベーションの喪失を「目的と手段が逆転していることもある」ためだと指摘。確かに最初は競技に出るため、記録を更新するため、試合に勝つためにトレーニングを行い、ジムにも通っていたはず。けれど漫然と「ジムに行かねば」と思い、そのワークアウトが“何のために行っているか”を見失っている人も。

「そのために、定期的に自分に『なぜこのトレーニングをしているのか』『なぜ、ジムに通っているのか』を質問するのもよいかもしれません」

そのトレーニングは果たして、正解? アスリートですら間違う、トレーニング

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河森さんがアスリートを指導していても、感じることがあるという。

それは、トレーニングの妥当性を考えていない場合があるということ。

例えば河森さんがブログでも取り上げた、野球選手に走り込みは必要なのかという論文レビュー。「これは大学生野球選手が長距離タイプの持久力トレーニングをやると、下半身のパワーの発揮能力にマイナスの影響が出た、という論文について考察したものです。

野球界では“走り込み”と言われる長距離・長時間を走り続けるようなトレーニングが昔から実施されているようですが、デメリットもあるということは覚えておいた方がよいと思います」

もちろん、トレーニング自体が悪いわけではないが、トレーニングに対する“誤解”を河森さんはこう言う。「むやみにトレーニングをしたからといって、競技で良い成績が残せるわけではありません。身体能力やポンテシャルと、競技に必要な技術、戦術は違います。もちろん、トレーニングをすれば競技へ良い影響がある可能性もありますが、それと競技に求められる技術や戦術は別の話です。

アスリートを見ていて思いますがトレーニングがよく出来たり、身体能力が高かったとしても、競技でずば抜けてよい結果を出せるかというと、必ずしもそうとは限りません。勘違いしやすいのですが、トレーニングをすれば結果が必ずついてくるのかというと、イコールではないと思うのです。結果に結びつくように考えながらトレーニングをしたうえで、そのトレーニングの効果をパフォーマンスに結びつける工夫をすることが大切です」

また、なぜそのトレーニングをするのかということについても考えてみては、と河森さんはアドバイスする。

「極端に言えば、瞬発力が求められる競技をするなら、ボディービルダーのように全身の筋肉を大きくしていくようなタイプのトレーニングを追い求める必要はないわけです。誤解をしていただきたくないのですが、ボディービルディング的なトレーニングが悪いと言っているわけではありません。目的によっては、手段として適切ではない場合もあるということです。冒頭でも言いましたが、『なぜトレーニングをするのか』という「目的」が見えていると、どんなトレーニングが必要なのか(=「手段」)も分かりやすくなり、意識も出来ます」

とはいえ、自分ではなかなかどんなトレーニングが合っているのか、さらに言えばどんなジムに通えばよいのか、ライフスタイルや予算によっても違ってくる。次回は河森さんに、パーソナルトレーナーとの付き合い方、ジムの選び方について指南してもらう。お見逃しなく!



Photo:Getty Images

Headshot of 河森直紀さん
河森直紀さん
ストレングス&コンディショニングコーチ

早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒業。米・Midwestern State University大学院修士課程修了、豪・Edith Cowan Universityの大学院博士課程修了。シンガポールの政府機関、Singapore Sports Council(現Sport Singapore)にS&Cコーチとして着任し、シンガポール代表アスリートのS&C指導を担当。帰国後は国立スポーツ科学センターで日本代表選にトレーニング指導などを行う。研究とトレーニング指導の二つの軸を持つ稀有なS&Cコーチとして、その発言に注目が集まる。著書に『ピーキングのためのテーパリング‐狙った試合で最高のパフォーマンスを発揮するために‐』(ナップ)がある。ブログ S&Cつれづれ Twitter @kawamorinaoki