Food, Dish, Cuisine, Ingredient, Breakfast, Meal, Produce, Dessert, Baked goods, Snack, pinterest

食の未来がどのようなものか、想像がつく? どうやら科学の力を借りた食品開発が世界中で勢いよく進んでいるようで、2020年代には私たちの食生活が思わぬ方向へと進む予感。自分の食卓にも出現するかもしれない、ヘルシーで環境に優しい「これからの食べ物」。その気になる正体とは!? 食の未来にまつわる「6つのニュース」をご紹介!

今、食が「科学」を必要としている理由

Blue, Product, Turquoise, Aqua, Azure, World, Turquoise, Tableware, pinterest

そもそもなぜ食は変わろうとしているのか。「企業は、少しずつ伝統的な飲食から離れて、新たな可能性に目を向けるようになっている」と語るのは、ミンテル社でグローバルフード&ドリンクのアナリストを務めているジェニー・ゼグラー。「企業を大きく動機づけているのは、サスティナビリティ。科学を軸とする最新のアプローチを取る方が従来の方法よりもサスティナブルであることに気づき始めている」

私たちの食習慣がどれだけ生態系に危険を及ぼしているかは、お気付きのはず。レオナルド・ディカプリオが出資したドキュメンタリー映画『地球が壊れる前に』にも、その危険性にたっぷりと触れている。イギリスのバイオテクノロジーと生物化学研究委員会が予測するように、2050年までに人口が96億人まで増加するとなると、生き抜くためには今ある食べ物が60パーセント増しで必要となってくる。

となると、この地球自体がもはやサスティナブルではなくなってしまう……。肉をよく口にする西半球の国々でははさすがに危機感を感じて、少しずつメニューを書き換え始めているみたい。

うれしいことに、肉の摂取量を減らすことが体にいいという結果が科学を通して次々と証明されているため、ヴィーガンな食生活を選ぶ人も増えているよう。イギリスではここ10年で、ヴィーガン人口が360パーセント増加するという驚くべき発表がなされている。

細胞から作る「クリーン・ミート」が主流になる?

Room, Interior design, Glass, Display case, Transparent material, pinterest

精製された食べ物をできるだけ控える「クリーン・イーティング」のトレンドは過ぎ去りつつあるけれど、その一方で注目を集めているのは、細胞から作り上げる「クリーン・ミート」。これは、生きている動物から採取した細胞を使って肉を作ること。過去には動物の肉を食べることで「豚インフルエンザ」をはじめとする病気が広まることもあったけれど、研究所で肉を作ればサルモネラ菌や大腸菌の心配をする必要もなく、科学物質が大量に使われることもないので、より安心。

クリーン・ミートを使ったハンバーガーは、すでに2013年にオランダ・マーストリヒト大学の教授、マーク・ポスト博士の手によりロンドンで公開されている。しかし、当時の価格はなんと250,000ユーロ(約3,200万円)! 現在、マーク博士が率いるモサ・ミート社は5年たった今、同じハンバーガーを8ユーロ(約1,000円)で提供することを試みているそう。

2013年以降にシリコンバレーをはじめ、アメリカでも食品技術のスタートアップ企業が多く立ち上がり、昨年の3月にはサンフランシスコを拠点とするメンフィス・ミーツ社から世界初の「クリーン・チキン」が登場し、その後「クリーン・ダック」もラインアップに加えられている。

クリーンになっているのは、肉だけではない。次なる「クリーン対象者」は魚。マサチューセッツ大学の分子生物学者たち二人が立ち上げたフィンレス・フード社はその先駆者であり、2019年までに「クリーン・フィッシュ」の発売を目指している。

「水銀やプラスチック、成長ホルモンをたっぷりと含んだお魚なんて食べたくないでしょ?」とCEOのマイク・セルドンは話す。「健康的であり環境にいいのはもちろんのこと、栄養素や味も変えずに提供できればきっと人は関心を抱くだろう」。さらにクララ・フード社は、世界初のアニマル・フリーの卵白を作っている最中だそう。私たちの食は、本当に変わりつつあるのかも。

植物から作る肉は、ミシュラン3つ星のシェフすら見抜けないほど美味

Food, Natural foods, Plant, Ingredient, Legume, Fruit, Coriander, Produce, Vegetable, Superfood, pinterest

研究所で作られた肉にいまいちおなかがぐぅ〜と鳴らないなら、植物から作られた肉はいかが? 例えば肉のために虐殺される動物に心を痛めて、植物だけで肉の味を再現すると決めたオランダ人の農業経営者、ヤップ・コルテヴェークを見てみよう。彼が大豆から作ったカリカリの「チキン」やこんにゃくから作った「エビ」のお寿司は、本物そっくり。彼のインスタグラム@devegetarischeslagerをチェックして! ミシュラン三ツ星の「エル・ブジ」の料理長に彼の「肉」を試してもらったところ、彼は鶏の胸肉を食べていると信じてやまなかったのだとか。

もっと言えば、マイクロソフトを設立したビル・ゲイツも、植物をベースとするある企業に出資している。その名は、「インポッシブル・フード」。ここで働く科学者、農業経営者、そしてシェフたちは5年間かけて世界で最もおいしいとされているハンバーガーの具材すべてをすみずみまで解剖。

焦げ目から味、匂いまですべて忠実に再現し、植物のみを使って誕生したのが「インポッシブル・バーガー」。このバーガーの旨味の正体は、動物の筋肉にも見つけられる鉄分であるヘム鉄の存在が大きいよう。もちろんこちらは大豆から抽出しているのでご安心を。

その他にもAI技術を使い、動物性の食品の分子構造を真似てアニマル・フリーの食品開発を進めている食品技術のスタートアップ「NotCo」をぜひチェック。彼らの「卵抜きマヨネーズ」はすでにアメリカのスーパーで手に入る。

そのうち、自宅で細胞から食べ物を作るようになる?

Flowerpot, Plant, Flower, Houseplant, Herb, Vegetable, Window, geranium, Vascular plant, Garden, pinterest

AIなんて自分から程遠いと思っていたら、大間違い。科学者たちは、植物の細胞を使った食品を自宅から育てられる機械を開発している。それも一週間でできるとか。フィンランド技術研究センター(VTT)では、すでにこの機械を使い、ベリーの細胞を育てているみたい。ただし、仕上がりはやや微妙というのが正直なところのよう。味も最初は薄すぎたようだけれど、実験を重ねた結果「ジャムっぽくなってきている」と、センターで働くローリ・ロイターはコメントしている。

「機械の発明よりも、細胞や微生物から私たちの栄養となるものが作るこことが可能になった進歩に着目してほしい。この手法を使えば、真冬のフィンランドで植物を育てることもできるのよ。つまり世界中、いつでも栽培ができるの」と、ローリ。

アンジェリーナ・ジョリーもお菓子代わりに食べている! 「昆虫食」がトレンドに

Hair, Face, Eyebrow, Hairstyle, Skin, Beauty, Lip, Nose, Chin, Cheek, pinterest

テクノロジーはいったん忘れて、土に目を向けて。何せ、そこにウヨウヨしている虫こそが私たちの栄養になり得ると、国際連合が語っているのだから。

その理由は、虫の8割はタンパク質でできていて、必須アミノ酸とオメガ3脂肪酸が豊富に含まれているから。しかも、鳥や魚の餌とされる昆虫、チャイロコメノゴミムシダマシに含まれる不飽和のオメガ3、オメガ6脂肪酸の量は、魚と同じ、牛や豚は上回ると言われている。

昆虫は牛よりも20倍も早く育ち、飼育されている肉牛のげっぷから排出される有毒なメタンガスも出ないので環境にも優しい。食用の昆虫は1,900種類ほどいるとされているので、絶滅する心配も今のところはなさそう。乾燥されたチャイロコメノゴミムシダマシやコオロギを使った小麦粉、それから昆虫を使ったプロテインバーはすでに購入が可能。2024年までに食用昆虫市場は、世界的に見て7億円規模に達すると予測されている。なんと、女優アンジェリーナ・ジョリーは自分の子供たちにコオロギから作られたフードをスナック菓子のドリトス代わりに出しているとか。

「二日酔いしない酒」が、ようやく誕生!

Drink, Alcohol, Alcoholic beverage, Distilled beverage, Beer, Liqueur, Hand, Bia hơi, Beer glass, Cocktail, pinterest

もともと政府の薬物教官を務めていたデヴィッド・ナット教授は、「アルコシンス」という二日酔いをしない酒をここ数年、大切に開発しているそう。2020年代初めに店頭に並ぶ予定なので心に留めておいて。どうやら酒から得られるハイな感覚はあっても、有毒ではないために胃に影響を与えることが一切なく、気持ち悪くなる恐れもないのだとか。こんないい話ある?

驚くことにミレニアルたちの酒の摂取量は、彼らの両親や祖父母の世代に比べて下回っているそう。食の未来学者であるモルゲン・ゲイ博士は、技術が発達するにつれ、従来の酒を欲しがる人はさらに減っていくと読んでいる。「2050年までには発酵した植物からできた酒やノンアルコール飲料がバーに並び、人はたばこからも離れていくだろう」

※この記事は、US版ウィメンズヘルス2018年1月/2月号から翻訳されました。



Text: Jessica Salter Translation: Miku Suzuki Photo: Getty Images