セレブ達の間で健康ドリンクとして大流行中のリンゴ酢。コートニー・カーダシアンは1日に2杯、ヴィクトリア・ベッカムやヒラリー・ダフは、毎朝リンゴ酢を飲んで1日をスタートしているとか。

健康に結びつく商品や食品は往々にして注目を集めているが、その人気とは裏腹に得られる効果が限定的な場合もある。ダイエットや健康への効果が注目され人気を獲得したる「リンゴ酢」だけど、実際の効果はいかに?

そこで、リンゴ酢の効果にまつわるうわさを全検証! リンゴ酢を使ったおすすめレシピ、実際に1カ月リンゴ酢を飲み続けてみた結果など、リンゴ酢を生活に取り入れる前に知っておきたいすべてを、アメリカ版ウィメンズヘルスよりご紹介!


リンゴ酢とは?

粉砕したリンゴを発酵する過程でお酢の活性成分、酢酸が生成されてできるのが、リンゴ酢。ネットでは様々なレシピが公開されており、作り方が分かれば自宅でも作ることが可能。摂取目安量はリンゴ酢の種類によっても異なるけれど、ハーバード大学医学部が出版する「ハーバードヘルス」によれば、食事と一緒に、もしくは食前に小さじ1〜2杯のリンゴ酢を飲むのがいいそう。この飲み方は、食欲を抑制したり消化を助ける効果があるので、長期的なダイエットに役立つのだとか。

リンゴ酢と減量に関する研究結果

1ヶ月間「リンゴ酢」を飲み続けてみた!気になるダイエット効果とおいしい飲み方
Michael Poehlman//Getty Images

まずはじめに、リンゴ酢と減量については、その直接的な関連性を証明している研究が非常に少ない。学術誌『Journal of Functional Foods』には、39人の大人を対象に行われた調査結果が掲載されている。1日の食事から250カロリーを減らす生活を続けた結果、昼食と夕食のときにリンゴ酢を大さじ1杯ずつ摂取した参加者は、12週間で4kgの減量に成功した。また、リンゴ酢を摂らなかった参加者は2.2kgほどしか体重が減らなかった。

『Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry』誌では、肥満体型の大人144人を対象に、プラシーボを飲む人、大さじ1杯のリンゴ酢を飲む人、大さじ2杯のリンゴ酢を飲む人をランダムに選び、その習慣を12週間続けてもらった。試験の終了時には、大さじ2杯のリンゴ酢を飲んだグループは1.8kg、大さじ1杯のリンゴ酢を飲んだグループは1.1kgの減量に成功した。(プラシーボを飲んだグループの中には体重が増えてしまった人もいた)

しかしこの結果だけでは、リンゴ酢が脂肪を減らすという証明にはならない。「これらの調査はごく少人数を対象に実施されています。ですが、結果には一貫性があり、リンゴ酢は体重を減らすために有効であると言えるでしょう」と語るのは、管理栄養士で、糖尿病療養指導士でもあるエリン・パリンスキ=ウェイド氏。

さらに、リンゴ酢には減量をサポートする作用があるようだ。学術誌『Journal of Functional Foods』の2013年の調査によると、食事の前にリンゴ酢を飲むと血糖値の急上昇が抑えられる可能性を示唆している。また『Annals of Nutrition & Metabolism』の2010年の研究結果では、食事と一緒に大さじ2杯のリンゴ酢を摂ると、血糖値の急降下を和らげ、安定的に保つのに役立つそうだ。なぜそういった結果が出るのかは、完全に解明されていないが、アリゾナ州立大学で長年リンゴ酢の研究を続けてきた栄養学研究者のキャロル・ジョンストン博士は、酢の中に炭水化物の吸収を妨げる成分が含まれているのではないかと推測している。

血糖値のアップダウンがあると、どうしても甘いお菓子が欲しくなる。もしリンゴ酢が血糖値の変動をゆるやかにしてくれるのだとしたら、それは大きな発見だ。「もしリンゴ酢が血糖値のコントロールを助けるものだとしたら、甘いものへの欲求を抑えたり、食事制限に役立てて、摂取カロリーを減らすこともできるだろう」と、管理栄養士のエイミー・グッドソン氏は言う。

学術誌『Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics』に掲載されたジョンストン博士の研究によると、食事の前にリンゴ酢を飲んだ参加者は、1日に摂るカロリーが275カロリー減っていた。リンゴ酢によって食欲が抑えられた、という明確な証拠は出ていないが、食欲を抑える成分があることも推測される。リンゴ酢を飲むのが辛くて食欲が減退した、ということもあったかもしれない。

リンゴ酢の減量効果は学術的な証明はまだ十分ではありません。だから、飲むときは大きな期待はせず、適切な期待値で試してみるのが良いでしょう。

リンゴ酢の美容と健康への効果

1ヶ月間「リンゴ酢」を飲み続けてみた!気になるダイエット効果とおいしい飲み方
MonaMakela//Getty Images

ここからは、リンゴ酢の美容と健康への効果について、わかっていることをご紹介。

リンゴ酢の健康効果① コレステロール値を下げてくれる

リンゴ酢がコレステロール値を下げるといううわさは「うそではない」と話すのは、米国栄養士会の広報担当者で、管理栄養士のソニア・アンジェローン。ただ、このリンゴ酢の効果を裏付ける証拠は乏しいとのこと。

英国栄養学会誌に掲載された動物実験の結果によれば、リンゴ酢の主成分である酢酸を摂取したネズミは、悪玉コレステロール(LDL)が減少し、善玉コレステロール(HDL)が増加しているとか。ただしネズミの実験結果が必ずしも人間に当てはまるとは断言できない模様。

リンゴ酢の健康効果②消化機能を高める

他のお酢と同様、酸性度が高いリンゴ酢は、食べ物の分解を助ける働きがある。「胃酸が少ない人がリンゴ酢を飲むと、消化が改善すると言われています」とアンジェローン。「胃酸が少ないと、食べものが長時間胃に滞留してしまったり、食後におなかが張りやすくなったりします」。こんな症状を解消したいときこそ、リンゴ酢の出番。グラス1杯の水に大さじ1杯のリンゴ酢を加えて、食事と一緒に飲んでみて。

リンゴ酢の健康効果③ 血糖値の管理に役立つ

ある研究では、リンゴ酢に限らず、酢全般には糖尿病患者の血糖値を下げる働きがあることが判明している。
「酢がインスリン感受性を改善し、細胞がより効率的にグルコースを取り込めるようになるため、糖が血液中に長くたまりません」とアンジェローン。「とは言っても、血糖値に問題を抱えている人が、酢を飲めば炭水化物を多く食べていいというわけではありません」。毎日の食生活のほうが体に大きな影響を与えるため、砂糖はできるだけ控えるのが賢明。また、小規模な研究結果にすぎないため、すべてをうのみにしないよう指摘している。

また、栄養ウェブサイト「Appetite for Health」の共同創立者で管理栄養士のジュリー・アプトンによると、血糖値の調節、または心臓疾患関連の処方薬を服用している場合、リンゴ酢に含まれる酸と薬が相互作用を引き起こす可能性がある。念のため、飲み始める前にかかりつけの医師に相談しておこう。


リンゴ酢の健康効果④ 心臓病のリスクが減少する

国際専門誌『Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry』に掲載された研究によると、リンゴ酢の主成分である酢酸が、心臓病のリスクを増加させる「トリグリセリド値」を下げる働きをすることが明らかになっているとか。

リンゴ酢の美容効果① 肌と髪にツヤと輝きを与えてくれる

「リンゴ酢の抗酸化作用は、ニキビを治すのにも効果があるかもしれない」とアプトン。ただし、肌につけるときは、必ず薄めて使用することが大切。

一方で髪に使用すると、髪に付着している蓄積物などを除去して、キューティクルを平らにしてくれるため、髪にツヤが出る。「頭皮のpHバランスを調節してフケを退治するとも言われています」とチーマ医学博士。

うれしい効果の源は、リンゴ酢に含まれる「酢酸」

リンゴ酢が美容や健康に効果的な理由は主に、発酵食品だからだとアプトンは説明する。「リンゴ酢に限らず、別の果物を発酵させて作る酢からも同様の効果が期待できるはずです」

しかし、他の酢と比べたときに決定的な違いがあるとは言いがたいところ。「リンゴ酢がもたらす多くのメリットは、酢酸によるものです。しかし、酢酸は別の種類の酢やコンブチャにも含まれている酢の主成分です」。実際にリンゴ酢よりも、酢酸に重点を置いている研究のほうが数も多いそう。つまり、酢であれば、美容や健康に効果が期待されるのはリンゴ酢に限ったことではないかもしれない。


毎日飲んでもOKなリンゴ酢の“適量”とは
1ヶ月間「リンゴ酢」を飲み続けてみた!気になるダイエット効果とおいしい飲み方
jayk7//Getty Images

リンゴ酢は酸性なので、飲みすぎると胃に負担がかかってしまう。
1日に大さじ1杯までと制限しておくのが賢いでしょう。リンゴ酢は、病気まで治してしまう魔法の食品ではないことを留意しておくべきです。飲みすぎにはくれぐれも注意しましょう」とチーマ医学博士。
かなりの量を長期スパンで摂取し続けると、副作用として胸焼けや歯の表面を覆うエナメル質が損傷する可能性もある。味や胃への負担も気にならず、医師からの許可も下りたなら、適量を取り入れてみて。

大さじ1杯のリンゴ酢を8倍の水に薄めて、1日2回、食事の前か食事と一緒に飲むのが理想的だ。管理栄養士で、糖尿病療養指導士でもあるパリンスキ=ウェイド氏によると、リンゴ酢によって満腹感を高め、血糖値の安定化を助けるという。もし酸っぱくて飲むのが辛いという場合は、料理に加えてみてもよいだろう。リンゴ酢とオリーブオイルを合わせてサラダのドレッシングにしたり、大さじ1杯のリンゴ酢をスムージーに加えるのもおすすめだそう。

リンゴ酢をドリンクとして飲む場合は、非加熱で無ろ過のものを選ぼう。パリンスキ=ウェイド氏によると「ろ過されていないリンゴ酢には、タンパク質や酵素、健康に良い善玉菌が豊富に含まれており、お酢に慣れていない人や妊婦さんにもおすすめです」とのこと。

苦手な人でも取り入れられる! リンゴ酢レシピ

リンゴ酢の味が苦手でなければ、大さじ1杯をそのまま飲んでも、コップ1杯の水に薄めて飲んでもOK。リンゴ酢でヘルシーなドレッシングを作るのもおすすめとアプトン。

リンゴ酢を使ったサラダドレッシングの作り方

①鍋に1カップ分のアップルサイダーを入れて火にかけ、大さじ2杯のリンゴ酢と小さじ1杯のマスタードを加える

②全体的によくかき混ぜる。水分が半分になるまで煮込む

③野菜サラダにかけて召し上がれ!

ライターがリンゴ酢ダイエットを試してみた!

アメリカ版ウィメンズヘルスでヘルスライターを務めるクリスティン・カニングが、実際にリンゴ酢の効果を検証してみた。

クリスティンが1ヶ月間実践したのは、グラス1杯の水に、小さじ1〜2杯分のリンゴ酢を加えたものを(原液で飲むより胃にやさしい)毎朝飲むこと。朝だけに限らず、1日を通してできる限りリンゴ酢を飲んでいた。購入したリンゴ酢は、低温殺菌されていないもの。

1ヶ月間「リンゴ酢」を飲み続けてみた!気になるダイエット効果とおいしい飲み方
Caia Image//Getty Images

リンゴ酢を飲んでみての感想は?

クリスティンはすっぱい味が好きなので、リンゴ酢が気に入った。水で薄めて飲むと、コンブチャに酸味が強いリンゴジュースを混ぜたような味。鼻にツンとくる匂いがあって、味はまさに発酵食品そのもの(キムチやザワークラウト、ピクルスに似ている)。

ただの水よりリンゴ酢を加えた方が、美味しさが増すうえ、フレッシュな味わいになる。リンゴ酢が好きになった彼女は、毎朝飲むのが楽しみになり、実験中の1ヶ月間は、1日中リンゴ酢ウォーターを飲んでいた。


リンゴ酢を1カ月飲んで感じた変化

ただの水を飲むより美味しいので、ラクに美味しく水分補給ができるようになった。水分を十分に補えていたので、トイレの回数も増えた。

食欲抑制剤と同じ作用があると言われるリンゴ酢。実際に食前にリンゴ酢を飲んでみたものの、クリスティンは食欲が抑えられた効果は実感できなかった。

週末は、起きてすぐにワークアウトをするのがクリスティンの日課。リンゴ酢を飲み終えてすぐにランニングをする日もあったけれど、これだけは絶対に真似しないで。リンゴ酢は酸度が強いので、一気飲みしてすぐにランニングをしてしまった結果、食道が燃えているような感覚に襲われた。ワークアウト前には、リンゴ酢を飲まないのが賢明

1ヶ月であれ、リンゴ酢を飲むと痩せるという説に懐疑的だったクリスティン。実験期間中、ずっと体重を測定していたけれど、体重に変化はなかった。

リンゴ酢を飲み続けた1ヶ月間は、排便の回数が普段より減った。以前よりも、しっかりした大きい便が出るようになった

管理栄養士のウェツェル=サベージに確認したところ、リンゴ酢が便秘を引き起こす可能性はないとのこと。彼女に指摘されたのは、コーヒーの摂取量が減ったこと。水分補給は十分にできていたけれど、コーヒーを飲むかわりにリンゴ酢を飲んでいたせいで、排便の回数が減った可能性がある。

リンゴ酢を毎日飲むという実験を終えて5ヶ月が経った今も、クリスティンはリンゴ酢をたまに飲んでいる。

リンゴ酢の酸味はすごく好きだけど、コーヒーの代わりにまでリンゴ酢ウォーターを飲むのは嫌だったという彼女。毎朝シャキッと目覚め、快便を維持するためにも、コーヒーはやめられないという。

「リンゴ酢が飲みたい気分のときは、スムージーやカクテルに混ぜて飲んでいる。フレッシュな味わいになるし、味がハッキリするのがお気に入り。最近では、サラダのドレッシングや、肉や野菜のマリネにもリンゴ酢を取り入れているけど、おすすめよ」

クリスティンの検証結果では、リンゴ酢を飲み始めても、体重や見た目、気分、健康状態に何の変化も感じなかった。でも、この実験を試して良かったのは、料理や飲み物に味を付け足すアイテムとして、ヘルシーなリンゴ酢が加わったこと。

減量を目的にしないなら、リンゴ酢をトライしてみてもいいかもしれない。 


リンゴ酢を飲む上での注意

他の酢と同じように、リンゴ酢の強い酸は喉の炎症や、歯のエナメル質を損なう原因となるらしい。管理栄養士で、糖尿病療養指導士でもあるパリンスキ=ウェイド氏は、大さじ1杯を1日2回まで、毎回8倍の水で薄めて飲むことをすすめている。そして「リンゴ酢を薄めずにストレートで飲んではいけません」と念を押している。

※リンゴ酢の減量に関する記事は、『Prevention』から翻訳されました。
Text: Marygrace Taylor Translation: Nao Ayatani

※ライターの体験記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Kristin Canning Translation: Yukie Kawabata

Headshot of Kiriko Kageyama
Kiriko Kageyama
エル・グルメ編集長/ウイメンズヘルス編集長

『エル・オンライン(現エル・デジタル)』のファッションエディターを経て、フリーランスに。女性ランナーによる企画集団「ランガール」を設立。その後女性誌立ち上げやWebメディアの立ち上げを経て2017年にウィメンズヘルス』日本版ローンチ時から編集長に。2023年夏よりエル・グルメ編集長も兼務。趣味は料理を作って友人たちに振る舞うこと。