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達成感や爽快感を求めて、マラソンや大会での目標を達成するためなど、ランニングとの付き合い方は、人それぞれ。

ニューヨークを拠点に活動するランナーであり、複数のランニングコミュニティーの創設者でもあるアリソン・マリエラ・デシールも、ランニングの魅力に惹きつけられた一人の女性。彼女は女性が本来持つべき権利や強さを表現する方法の一つとして、「走ること」を生活に取り入れている。彼女がランを通して果たしてきた偉業はさまざまなメディアやブランドから注目され、「Women’s Runner Magazine」では「ランニングを通して世界を変えている20人の女性」の一人にも選ばれている。

そんな彼女が2017年に立ち上げたランニングコミュニティー「Run 4 All Women」は数名で始まったものの、瞬く間に1000人を超える参加者が集まり、女性のために活動する団体へ1000万円もの寄付金を募ることにも成功している。彼女がこのコミュニティーを作ったきっかけについて、話を聞いてみた。

立ち上げのきっかけは、婦人科治療を受けられなくなる……という危機感から

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日本では婦人科に行けば、避妊ピルをもらうこともできれば、避妊器具の設置をお願いすることもできる。つまりコンドームに限らず、最も安心できる避妊方法を自ら選べる自由がある。社会的なプレッシャーや金銭的な問題は別として、そういったツールが電話1本の予約で手に入るのは、とてもありがたいこと。でも、その権利が奪われたとしたらどうだろう。

アメリカでは多くの人が利用する、避妊ピルの処方から中絶手術、性病治療を提供する医療サービス非政府組織(NGO)「Planned Parenthood」への資金補助停止の施策が、アメリカ下院議会で2017年に可決された。

「私たちの活動がなぜパワフルかというと、もともと『Planned Parenthood』をサポートするため、そして私たちの権利を政府に奪われないようにランニングイベントを開催したから。私たちの体の可能性を証明するために、250マイル以上を走るなんて最高のアイデアだと思わない?」

「古くから私たち(アフリカ系アメリカ人、女性、アクティビスト)は、行動を起こすことでメッセージを伝えてきました」と話すアリソン。「『Run 4 All Women』は同じ思想のもと、ランニングやウォーキングを通じて、社会を変えていくことを目指しています。これを私たちはアスレチック・アクティビズム(運動を用いた社会的活動)、ACTIVism(アクティブ・イズム)とも呼んでいます」

「Run 4 All Women」の火付けとなった250マイル超のランで、1,000万円もの寄付金を集められたワケ

少し前の大統領選挙からいま一つ行動が起こせていない気がしていた、と話すアリソン。「本当の意味で変化を起こすためには何が必要だろう?」と、心に募っていた苛立ち、そして恐怖をどうにか自分なりに解消できないかと日々、考えを巡らせていたという。

「その答えになったのは、私の家があるハーレムからワシントンD.C.で行われる「ウィメンズ・マーチ」まで250マイル以上の道のりを走ろう、というアイディアでした。そしてそのランを通じて「Planned Parenthood」のために寄付金を募ったんです」

「これを友人のタリサにシェアしたのは、2017年になる少し前でした。一人では絶対にできないと思っていたけれど、タリサのサポートがあれば成功する可能性がある、と思ったのです。驚くことに彼女は賛同してくれて、2017年1月2日にGoFundMe*のページをローンチし、4人の女性が全ての女性を代表して、このランに参加すると発表しました。そのときはまだ参加者が二人しか集まっていなかったものの、発表をしてから数時間でキタとキムがチームの一員になり、数日間で寄付金のゴールとしていた$44,000(およそ440万円)に到達しました(バラック・オバマに敬意を表して)。

*GoFundMe:クラウドファンディングのサイト

当初は「4人の女性がバンを借りて、走る」という予定でした。でもウェブ上でこのイベントが1万回ほどシェアされると、「手伝いたい」「参加したい」というリクエストが殺到したんです。そのため、誰でも参加できるようイベントの仕組みを変えました。ランをどのように開催するか計画を練るのはメアリーに託して、それを実行するために動く役割はジェンに託しました。

結果、イベントはリレー形式で開催されることになり、1セグメントを4マイルとし、2017年1月18日(水)〜1月21日(土)まで途切れることなく走るという目標に切り替えました。

ニューヨークシティーからワシントンD.C.まで250マイル以上あるのですが、1000人以上の人がランに参加してくれました。コーヒーを片手に夜遅くから走り始める人もいれば、土砂降りの中、道路の端で自分の番をじっと待っている人もいました。参加者の中にはシャワーや休憩場所として家を解放してくれた人もいましたし、ハイタッチや「よく頑張ったね」とハグをするためだけにランナーたちを待っている人もいました。

ニューヨークシティー を出発した水曜日の夜までに、$70,000(およそ700万円)もの寄付金が集まりましたが、ワシントンにたどり着く頃には、その額が$100,000(およそ1000万円)まで跳ね上がっていました。

「中間選挙」へのプロテストとして2万マイル走り、肌で感じた変化

「ミッドターム・ラン(中間選挙ラン)」は、野党・民主党が多数党になるように、という思いを込めて「Run 4 All Women」が「Black Votes Matter*」と手を組んで行ったキャンペーン。結果、8年ぶりに野党・民主党が多数党に返り咲くという歴史的な瞬間になった。

*アフリカ系アメリカ人が政治活動に積極的に活動をし、未来に向かって進歩していけるよう活動をする団体

「ミッドターム・ランは、女性の健康や権利、それから銃保持に関する法律、LGBTQの問題、移民問題、刑事司法の改定、そして医療問題の全てにおいて、私たちが納得できる候補を支持することを前提としたものでした」とアリソン。「私とラトーシャ・ブラウンがけん引し、20もの州のローカルなコミュニティーに根ざす人たちが投票をするよう、この過程をしっかり自分の目で確かめるよう行動を起こしました。イベントはニューヨークからカリフォルニア州まであらゆる場所で開催をし、キャンペーンを通して参加者たちは2万マイルほど走りました。

私たちがサポートしたのは、ネバダ州の上院議員に見事当選したジャッキー・ローゼンと、新たにアメリカを代表することとなった漸進的な議員たちです」

● ローレン・アンダーウッド(イリノイ州)
● ケイティー・ヒル (カリフォルニア州)
● ルーシー・マクベス (ジョージア州)
● スーザン・ワイルド (ペンシルバニア州)
● ミキー・シェリル (ニュージャージー州)
● マックス・ローズ (ニューヨーク州)
● デビー・ムカルセル・パウエル (フロリダ州)
● キム・シュライアー医師 (ワシントン州)

「投票の熱量は、今までに感じたことのないものでした。国が投票を促していなかったにも関わらず、3時間ほど並んで投票をする人もいれば、ニューヨークでは機械が壊れても辛抱強く待って投票する人もいました。今までに見たことのない人数でした。

1月から100人以上の女性が連邦議会の顔となるのは非常にうれしいことですし、うち42人は有色人種であることもとても誇らしいことです。でもだからといって、手を抜くことはできません。変化を生み出し続けて、その度に祝福をしていこうと思っています。まさに今、私たちは歴史を塗り替えている最中です」

女性のさまざまなあり方を一般市民から広げていく「Run 4 All Women」の今後

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「私たちのコミュニティーは人種を問わないので、日本人の女性も大歓迎です。私たちが大切にしている思想は、国境を越えて広まり、韓国やイギリスで私たちの考えを広めてくれている人もいます。2019年以降、アンバサダープログラムを拡大していこうと思っているので、もっともっと多くの女性が参戦してくれることを楽しみにしています」

Run 4 All Womenの思想
・私たちは一般市民の一人一人が積極的に政治に参加する「草の根運動」を遂行しています
・フィットネスを通して、人を元気づけることを目指しています
・さまざまなコミュニティーを持ちつつも、同じゴールを目指せるような体制を整えています
・現状を維持するのではなく、女性にまつわるあらゆる問題を少しでも解決に近づけていけるよう、力が尽きるまで努力します

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■ Run 4 All Women(ラン・フォー・オール・ウィメン)
公式サイト:https://www.run4allwomen.com/
フェイスブック:https://www.facebook.com/Run4AllWomen/
インスタグラム:https://www.instagram.com/run4allwomen/

■ Alison Mariella Desir(アリソン・マリエラ・デシール)
公式サイト:http://alisonmdesir.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/alisonmdesir/



Credits: Alison Mariella Desir