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運動が苦手なのは、遺伝が原因だと思っている人も多いのでは? しかし、東京大学大学院総合文化研究科・教授の深代千之先生は、「運動の得意・不得意は遺伝ではありません」とキッパリ。そこで今回は、「運動神経って何?」「遺伝でないのなら、なぜ運動が苦手な人がいるの?」「大人になっても、運動が得意になることはあるの?」など、運動神経にまつわる気になる疑問について、深代先生にASK! 今年は動ける身体をゲットしよう。

そもそも運動神経とはなんなのか?

「運動神経とは、体や骨格の筋肉の動きを指令するために、脳が信号を筋肉に伝える手前にある神経のことです。どんな小さい行動も、常に神経回路を作って体を動かしているので運動神経が悪いという人はいないのです」

どうやら、運動に関わる神経は、私たちの日常会話に登場する「運動神経」の意味とは異なるよう。

「運動神経は誰にでも備わっているので、私たちの脳が、運動できる・できないと決めています。多くの人は、運動神経が良い・悪いと言いますが、実は運動がうまくできる・できないという表現が正しいのです」

「運動がうまくできない」は思い込み?! 運動能力は遺伝じゃない

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「運動がうまくできないと思っている人は、思い込みです。生まれたときから優れた運動能力を持っている人などいません。多くの人は、運動ができないのは遺伝が原因だと考えがちですが、遺伝と運動能力は関係ありません。運動音痴という人は、練習をする前に、運動ができない理由を自ら作っているのだと思います」

運動神経が遺伝ではないとすると、なぜ運動が得意な人と苦手な人がいるのだろう。

「例えば、利き手をけがした時に、私たちは非利き手で箸を持つことを練習します。練習していくうちに、非利き手でも箸を持つことができるようになりますね。つまり、たとえ非利き手であろうとも、練習さえすれば使えるようになるということです。運動が得意な人は、この非利き手の練習のように、さまざまな動作を何度も練習して脳が覚えたからこそ、うまく身体を動かすことができているのです」

運動ができないという考え方は今日で終わり。

「小学生の体育の時間に、走り方を習って走りましたか? “ない”と答える方が多いと思います。科学的に正しい走り方はあるので、練習していくことで確実に速く走れるようになります。しかし、多くの人は、速く走れる動作を学びそびれているのです。そうは言っても、同じ教育を受けていたのに運動が得意な子、苦手な子はいたと思います。運動の得意な子は、生まれてからその時点までにさまざまな練習をしてきた結果、数多くの動作をひとかたまりのパックとして脳に収納しており、それを動作に応じて適切に引き出して使っているからです。生まれつき運動ができる子なんていません」

運動が苦手だったと思い込んだまま大人になり、運動ができないと思っていた人も多いはず。大人は、子どものころと比べて体力が落ちているかもしれないけれど、理解力や応用力があるので運動能力はみるみるUPできるはず。

自分の身体を変えられるという面白さを感じよう。

運動は、楽しみながらすることが一番です。面白そうだなと思った種目や運動があったらぜひトライしてみてください。最近は、ダイエットや生活習慣病の改善のために運動を始めようとする人が多いようですが、つまらない運動では続かないので、むしろ楽しむことを目的に始めてみるといいでしょう」

運動神経の悪さが思い込みなら、運動が苦手だと思っていた人も、“楽しい”や“面白い“を軸に運動を始めるべき! 次回は、運動「できない」が「できる」に変わる方法をご紹介。

□今回お話を伺ったのは……

深代千之(ふかしろ せんし)先生

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東京大学大学院総合文化研究科・教授。
1955年、群馬県みなかみ町生まれ。1984年東京大学大学院教育学研究科博士課程修了、93年博士(教育学)。東京大学バリアフリー支援室前室長。(一社)日本体育学会会長、日本バイオメカニクス学会会長。トップアスリートの動作解析から、子どもの運動能力開発法まで幅広く研究し、「文武両道」をスポーツ科学の観点から提唱。文部科学省の冊子や保健体育教科書の作成にも携わる。3回出演した日本テレビ「世界一受けたい授業」やNHK「きわめびと」は大反響となった。主な著書は「<知的>スポーツのすすめ」東大出版会2012など。2018年秩父宮章受章。

Photo: Getty Images

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Nana Fukasawa
ウィメンズヘルス・エディター

2018年に「ウィメンズへルス」編集部にジョイン。アシスタントを経て、エディターとして美容、フード、ダイエットなどの記事を担当。流行りそうなヘルシーキーワードをいち早くキャッチすることを心がけている。CBDや筋膜リリース、アーユルヴェーダ、植物療法を学ぶ、自他共に認める“セルフケア マニア”。2023年初めてのハーフマラソンに挑戦。