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目がゴロゴロする、乾くからと目薬をサッと取り出して差す習慣がある人もいるだろう。だけどちょっと待って、そもそもその目薬は自分に合ったものだろうか? いつ買ったか記憶にない目薬をまつ毛や粘膜にふれんばかりに差しているなら、さらに要注意。また、充血がとれるからと、血管収縮剤入りの目薬を使い続けることのリスクについても目の専門家は警鐘を鳴らす。目をめぐるトラブルの第2回は、目薬の選び方や差し方を前回に引き続き、東京女子医科大学病院 眼科の高村悦子先生に伺う。

ドラックストアや薬局に行くと、驚くほど並んでいるのを見かける目薬。どれを買っていいか迷ってしまうほど。「でも、ほとんどの方は正しい知識がなく目薬を選んでいるので、目に負担を掛けている可能性もあります。特に、充血を気にする女性は目薬でトラブルを招いている可能性があります」と言うのは、東京女子医科大学病院 眼科の高村悦子先生だ。

血管収縮剤が入っている目薬の常用は「逆効果」

市販されている目薬のパッケージによく書かれているのが、「充血に効く」という効果だ。目薬を差すと気になっていた充血がすぐに消え、白目がはっきりとしてくるために人気がある。

「こうしたタイプの目薬には、血管収縮剤が成分として入っています。充血は血管が拡張して起こるので、血管を収縮させれば充血はいったん治まります。でも、充血が起きているということは何らかの炎症が目で起きている証拠でもあります。一時的に治まっても、原因が解決されなければ、意味はありません」

高村先生は、血管収縮剤入りの目薬を常用するリスクについても指摘する。「血管収縮剤の入った目薬ばかり使っていると、その根本の原因を見逃してしまう可能性もあります。

さらに、血管収縮剤が入った目薬は長期間使っていると次第に効かなくなってしまうのです。血管の反応が鈍くなり、かえって充血するようになってしまうこともよくあるからです。一時的に充血を抑えるのに使ったとしても、常用するのは避けるべきです。

血管収縮剤が入っている目薬には塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリンなどの成分が含まれていることが多いので、これらの成分が入っているものは使用しないことをお勧めします」

目薬を選ぶなら「使い切りタイプ」がおすすめ

目薬を選ぶときには“涙の成分に近いもの”で、使い切りタイプがおすすめだと高村先生は言う。

「目薬をよく使う人は、使い切りタイプの人工涙液型の目薬がいいでしょう。防腐剤なども入っていない使い切りタイプので、目への負担が少なくなっています。また、目薬で気を付けなくてはいけないのが、使用期限です。いつ買ったのかわからないものをいつまでも使うのは危険です。使用期間は開栓後1カ月までにすること。

さらに、目薬の先端を粘膜につけて点眼する人がいますが、眼の表面の汚れが点眼瓶の中に吸い込まれるので残りの液が汚れます。先端が触れないように差しましょう。もちろん目薬は一人一人別のものを使用しましょう。共有は避けるべきです」

点眼後はそのまましばらく静かに目を閉じておく。よく目薬を差した後に、まぶたをぱちぱちしたり、眼球を動かす人がいるが、静かに動かさないのが一番成分を浸透させるには効果的だそう。

眼科から2種類以上の目薬を処方された場合は、続けて点眼せず、最初の目薬を点眼後、次の点眼まで5分ぐらい開けるといいといわれている。

ちょっとした使い方で、目薬の効果は変わってくる。基本を理解してきちんと使い、大切な目の健康を守って。

■お話を伺ったのは……
高村悦子(たかむら・えつこ)先生
東京女子医科大学病院眼科学教授(女性科兼務)。東京女子医科大学医学部卒業後、同大学病院 眼科学教室入局、1998年に同科助教授に就任。25年以上年前より東京女子医科大学病院眼科にドライアイ外来を開設する。ドライアイや難治性アレルギー性結膜疾患、角結膜感染症の中でも角膜ヘルペスの治療、再発予防をテーマに診療、研究に取り組んでいる。



Photo : Getty ImagesText : Manabi Ito