野菜は生で食べる?加熱する? 栄養素を最大限に取り込むための最新ノウハウ
その食材、生で食べるべき? 食材を調理した方が身体にいい、と信じられているけれど、野菜はそのまま生で食べた方が栄....
その食材、生で食べるべき? 食材を調理した方が身体にいい、と信じられているけれど、野菜はそのまま生で食べた方が栄養的にはよいという説も? UK版ウィメンズヘルスがこの議論を掘り下げてみた。
何においても、そのまま手を加えない方がいい時もある。そして、野菜もその一つだと思われて生ホウレン草入りのグリーンジュース、ズッキーニなど生で食べられることも。今ではイギリスのあらゆるところで、加熱されていない「ローメニュー」がたくさんあるので、ローフード食を実践することは難しくない。でも、本当に加熱なしの野菜はよいの?
「身体によいビタミンやミネラルをできるだけ吸収しようと、ローフードを食べているだけでは大事なポイントを外しているかも」と専門家は言う。つまり、スムージーに苦いと思いながらホウレン草を入れてきた日々は無駄だったの「かも」しれない。「野菜を生で食べることは身体を冷やす作用があるので、消化が遅くなり、身体の中を食べ物が通っていく間により多くのエネルギーを使うようになる」と話すのはSHA Wellness Clinicの栄養士でありヘルスカウンセラーのメラニー・ワックスマン。「これは、身体がサバイバルモードに入っているので、長期間で見ると内臓が弱くなり、食物不耐性症につながってしまう。さらに代謝も悪くなり、体重増加の可能性が増える」と話す。
Text:Noriko Yanagisawa
加熱調理でカロリーが増える野菜も
ローベジ愛好家の人が気付いていないのは、加熱することと身体の働きは密接にかかわっているということ。「生の野菜は実は消化できない繊維質を含んでいるが、加熱することで、繊維を一部分解したり、細胞壁を壊すので最終的に栄養素の消化と吸収をよくすることができる」と栄養士のリリー・スーッターは説明する。
実は、加熱調理することによってエネルギーが増えるそう。ハーバードの研究者は調理されたサツマイモは生の状態よりも吸収されやすいため、カロリーが高くなることを発見。カロリーが増える? それは悪いことなのでは? そう思うかもしれないけれど、そんなことはない。これは、同じカロリーが欲しい時には生の状態よりも少ない量で済み、その少ない量で満足ができるということ。だから、何世紀もの間私たちの身体は温かいものを好むように変わってきたのだと研究者は言う。
細胞にアタック
調理して消化率が高まることで、栄養効果が高まる野菜もある。「通常、栄養素は細胞壁にくっついた状態」とワックスマン氏。「熱はこの構造を壊すので、栄養が吸収されやすくなる。特にビタミンA、D、EやKなどの脂溶性のビタミンは生物学的利用能が高まる」。それだけでなく、ホウレン草などの野菜の栄養素は調理されないと吸収されない。「生のホウレン草の鉄分は、自身に含まれるシュウ酸によって吸収を妨げられている。でも、熱がシュウ酸を分解して身体に取り入れられるようになるから」とワックスマン氏は説明する。
栄養価は調理された野菜の方が多いこともあり、これは長期的な健康にも影響する。「トマトに火を通すことで抗酸化成分のリコピン、ベータカロチンやルチンの量が増え、抗酸化成分全体では60パーセントも増える」とスーッター氏。栄養学の専門誌「The British Journal of Nutrition」では厳密なローフード食を続けている人は、ガンや心臓病のリスクを下げるリコピンが欠乏していることが分かっている。カリフラワーなどのアブラナ科の野菜、芽キャベツ、ケールやキャベツも加熱することで栄養価がアップ。生で食べると甲状腺による代謝を制御するホルモンの分泌を妨げてしまうそう。それでどうなるのか?甲状腺ホルモンが足りないと、代謝が落ちてしまい体重が増える可能性が。さらに疲れを感じやすくなったり便秘がちになる。アブラナ科の野菜はどんな調理法でも、加熱した方が過敏性腸症候群のお腹にもやさしくなる。「加熱することで、むくみやお腹のガスを引きおこすラフィノースという物質を分解してくれる」とスーッター氏。
ローベジも健康によい
でも、サラダスピナーを捨てるのはまだ早い。ローベジ信者の人にも言い分がある。実は、加熱することで栄養素が減ったり、失われたりするので、生で食べる方が「栄養素をより多く摂れる」ことを示す証拠もいくつかあるのだ。「調理された野菜は、構造が不安定なビタミンB群、ビタミンCなどの水溶性ビタミン、カルシウムやマグネシウムが少ない」とスーッター氏。茹でるとビタミンの全体量は60パーセントも失われてしまうそう。さらに、長く調理するほど栄養素は失われるという。農業と食品化学の専門誌、「The Journal of Agriculture and Food Chemistry」の論文によると、2分間調理されたトマトは生のものよりビタミンCが10パーセントも減り、30分加熱すると29パーセントも減ってしまったそう。「これは熱によって野菜の分子構造が全く変わってしまうから」とロンドンでローフードレストランとデリバリーを行うTanya’s Caféの創始者でウェルネスコーチのタニヤ・マヘル。
生の野菜のほうが消化しやすいと考える人も。「47℃以上になると、食べ物を分解する酵素が失われてしまう。そしてこの酵素は腸の助けだけでなく、たとえばミロシナーゼはブロッコリーなどに含まれるグルコシノレートを分解してスルフォラファンというガン細胞や潰瘍の原因となる菌を殺してくれる。でも、加熱するとこの成分が壊れてしまう。同様に、生のニンジンはガンのリスクを減らし、循環器系の疾患に効果のあるポリフェノールを含んでいたり、生のアブラナ科の野菜はビタミンC含有量が多いなどの栄養のメリットも。
スリムでいるための選択
健康的な体重をキープするという観点からも、生の方が賢明な選択かもしれない。「特にニンジン、ビーツやサツマイモなどの野菜は、光をあまり浴びないためデンプンを多く含む。そして調理されると、デンプンは分解されて糖になる。だから、できる限りすりおろしたり、ひも状にカットするなどをして生で食べて。腸管壁浸漏症候群や過敏性腸症候群などの消化不全がある以外の普通の人なら生で食べる方が調理されたものを食べるよりもメリットがある、とスーッター氏は話す。
さらに、ローベジタブルや難消化性繊維は消化に悪いわけではなく、むしろ健康を保つ田助けをしてくれると強調する。「噛むことで繊維の構造が変わり、発酵され、腸内のバクテリアによって分解される。この間に副産物として、酪酸塩が分泌され、これが腸内を健康に保ってくれる。さらに難消化性繊維はバクテリアのエサにもなる」とスーッター氏。
さあ、しっかり噛む時間
それでも生で食べるのが大変な人には、マヘル氏は野菜を発酵させることをすすめている。つまり自然の菌に食物に含まれる糖質とデンプンを数週間かけて食べてもらうのだ。これで消化器官によい善玉菌が増えて、繊維を分解するのを助けてくれる。善玉菌が働くので腸はあまり働かなくて済む、とマヘル氏。ワックスマン氏も「発酵食品は、腸内の消化酵素を増やし栄養を吸収しやすくしてくれる。しかも、ザワークラフトなどはビタミンCも特に多い」
では結局、生がいいのか調理した方がいいのか?こっち! という答えはなく、その野菜によるとスーッターシ氏。どちらにもメリットとデメリットがある。野菜が生かどうかではなく、もっと大切なのは十分な量を食べること。そしていろいろな種類を食べること。まずはここから始めよう。
野菜を生で食べると身体はサバイバルモードに突入
加熱する?しない?
良い面も悪い面もあるけれど、どちらがいいのかはこのガイドを参考にして
<加熱する>
ホウレン草
シュウ酸が含まれた鉄分を吸収しにくくするので、熱で分解して。蒸すのがおすすめ。
トマト
加熱することで抗酸化成分が60%アップ。ゆっくり火を入れて、パルメザンチーズをかけて。
アスパラガス
熱が甲状腺しゅ誘発物質のゴイトロゲンを非活性化させるので火を使って調理して。
ニンジン
熱はビタミンAになるベータカロチンを活性化する一方、糖質が増えるのでよく考えて。
<生で>
ブロッコリー
酵素のミロシナーゼがガンに効果のあるサルフォラフェンを作るが熱で壊れてしまう。
サツマイモ
火を入れると確かに消化されやすくなるが、糖質も増えてしまう。
タマネギ
アンチエイジングに効果のある硫黄化合物が豊富だが、熱で失われやすい。
ニンニク
生だとコレステロールを下げる抗炎症作用があるけれど、息には気を付けて。