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長時間寒いところにいると、体は体温を上げるためにエネルギーを消費するそう。そのため最近では「ダイエットにつながるのでは?」なんてささやかれているらしい。中には寒い環境で過ごすと寿命が延びる、なんていう人も。

でも本当にダイエットや長生きにおいて「寒がること」はプラスなの? その真相にアメリカ版ウィメンズヘルスが迫る。

どうやら最近巷で話題のダイエットは、「エアコンの設定温度を下げて、脂肪を減らす」だとか?

例えば臨床研究誌『The Journal of Clinical Investigation』に掲載された、6週間に及ぶ実験を見てみよう。ここでは1日2時間、17℃の部屋で過ごした人たちの方が、同期間暖かい部屋で過ごした被験者たちよりもエネルギーを多く消費したとか。『Diabetes』誌に掲載された研究では、19℃の部屋で眠った人は、体重を減らすことや健康な血糖値を保つこと、そして長生きをする上でも必要とされる「褐色脂肪」が増えたそう。さらに細胞学専門誌『Cell』が発表した研究結果では、寿命を延ばす手助けをしてくれるシグナル伝達が活発になったことが明らかになっている。

米マウント・サイナイ病院所属のダイエットエキスパートであり、ユサナの栄養学専門家でもあるクリストファー・オクナー博士は「寒さに反応して、体温を上げるために震えたり、体内の作用が働いたりすることはあるでしょう」と補足している。それに体温は高ければ高いほど、多くのカロリーを消費するもの。

さらにアメリカのチャップマン医療センターで肥満外科医を務めるブライアン・クエブマン医学博士によると、夏は汗をかいたり熱気を吐いたりする分、体内のバランスを保つために水分をため込みやすいそう。ところが冬はそのようにバランスを取る必要もない分、水分の体重が減らしやすいとか。

でもこれを「効果的なダイエット」と呼ぶエキスパートは少ない。ブライアン博士も「寒い部屋に一日中座っているのは、ダイエットの観点からすると非現実的です」と注意を促している。「比較的効果も薄いでしょう。寒さを耐えることに努力を費やしても、それ相応のカロリーは消費できません。寒いのに耐えるのはつらいだけですし、なかなか日常にも取り入れにくいでしょう」

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寒さを利用した療法の一種に「冷却療法=クライオセラピー」というものがある。これは靴下に手袋をつけて、水着、またはTシャツと短パン姿で超低温マシンにおよそ3分間入るもの。どうやらこのセラピーを受けることでセルライトが解消されたり、肌トラブルが治ったり、関節の痛みや不安な気持ちが和らいだり、さらには免疫システムまでも強化されて、代謝も上がる、なんて言われている。でも、専門家たちはまだ疑心暗鬼。

「確かにいぼを治したいのならクライオセラピーは適切な療法です」 とブライアン博士。「でも、ダイエットや健康のために利用しても、プラセボ効果しか得られないでしょう」。彼に言わせれば、極寒にいることで寿命が伸びることも残念ながら信じがたいとか。

クライオセラピーのおかげでポーランドのオリンピック選手のパフォーマンスが向上している件についてもブライアン博士は言及している。「このデータは非常にまばらで混沌(こんとん)としているため、『クライオセラピーが氷枕やアイスバスよりも効果的』とは言い切れないのが現状ですましてやダイエットに効くなんて研究結果は存在しません。今あるテクノロジーをもとに判断すると、クライオセラピーはでたらめの療法にすぎないでしょう」

ブライアン博士は最後にこう残している。「人の体は、極限に耐え抜くようには作られていません。人生において大切なのは何事も『適度』に行うことです。体に無理をさせると、たいていは痛い目に遭います」

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。



Text: K. Aleisha Fetters Translation: Ai Igamoto Photo: Getty Images