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日本人の15人に1人がなるといわれる、うつ病。職場の知り合いだけでなく、友達や恋人、家族が「もしかしたらうつかも……」というケースも少なくない。周囲にうつかもしれない人がいたら、どう対処するべきなのか。うつをめぐる特集の最終回は、同僚や友人、大切な誰かがうつかもしれなかったときの話。青山すみれクリニックの坂本里江子院長がそんなときの対処法を教えてくれた。

うつと断定せずに、まずは「話を聞いてあげる」べき

自分の周りの人の様子がいつもとちょっと違う。何だか元気がなく、もしかしたらうつかもと思ったとき、どうしたらいいのだろうか?

「自分ではうつとわからず、周囲が気づくケースもあります。このとき、『もしかしたらうつかもしれないから病院に行こう』と自分のペースで進めてしまうのはお勧めできません」と、坂本先生。

「まずは、相手の話を聞いてあげることです。例えば仕事仲間なら『最近、新しいプロジェクトで忙しかったもんね。お疲れ様、疲れてない!?』と労わる気持ちで問いかけて、相手が話せるような環境を作ってあげるといいでしょう。スタンスはあくまでも、聞き役に。相手が『そうなんだよね、なんだかちょっと疲れちゃって。疲れがとれないんだよね』と言ったら、『そっか、疲れがとれないんだ。大変だったね』と、相手が言った言葉を言い換えて反復してあげるのがいいでしょう。

この話し方はカウンセリングでも用いる方法で、相手は『話をきちんと聞いてくれるんだ、この人ならいろいろ話せる』と安心感を持ってもらえるのです」

評価はしない。指示しない。近くにいればそれでいい

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ついつい身近な人だと、「そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ、みんな落ち込まないよ、その考え方はよくないよ」と評価を下してしまいがち。これはしてはいけない、と坂本先生。

「評価はしないでください。また、他者と比べるのもよくありません。うつの人は、頑張っているのにそういう思考ができないのですから、評価をするのは禁忌です。また、よくあるのが、『うつかもしれないから、病院に行った方がいいよ』と安易に指示してしまうことです。時間をかけて受診へ話をもっていくのはいいのですが、詳しく話も聞かずに病院を勧めても、本人は受け入れにくいでしょう。

まずはじっくり話を聞いて、こちらからは評価をせず、結論や指示は出さない。症状が少し重たい場合は、専門医などにどう対応すべきかを事前に相談して本人への対処を考えるのもいいでしょう」

坂本先生が相談されるケースでよくあるのは「何をしてあげていいかわからないんですが、どうしたらいいですか?」という家族や恋人、友達からの相談。坂本先生はこうアドバイスしていると言う。

「特別なことは何もしなくていいんですよ、と言います。大事な人であればまずは、『近くにいるよ』という気持ちが本人には一番うれしいものです。まずは、その安心感を与えることを考えるだけで十分です。そして、ゆっくり休ませてあげる。それでもよくならない場合は専門医に相談して、次の対処を見つけていけばいいのです」

いきなり病院を勧めるのはNG。相手の心に寄り添って、大切な人だからこそ、丁寧に接してみて。うつは誰でも罹るかもしれない病気。だからこそ、正しい対応を覚えておこう。



Photo:Getty ImagesText:Manabi Ito

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坂本里江子先生
精神科医・医学博士

青山すみれクリニック院長。精神保健指定医。日本精神神経学会精神科専門医・指導医。日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー、アロマテラピーインストラクター、アロマテラピストなどの資格も持ち、治療にも取り入れている。女性の患者が中心のクリニックで、現代女性が抱える心の悩みを数多くケアしている。http://aoyama-sumire.com/