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ビジネスや人間関係で必須とされるコミュ力。でも、「誰とでも円滑なコミュニケーションを……」と思っても、そうはなかなかいかないもの。特にオフィスでは、苦手な同僚や上司に悩まされることも……。自分と合わない人との付き合いをどうしたらいいかを“伝わるコミュニケーション”のプロであり、多くの民間企業や官公庁の研修・講演の講師として活躍する戸田久実さんにお話を伺った。

「合わない」の根本は何なのか? あなたの価値観で判断してない?

例えば、こんなケース。オフィスの上司との関係がなかなかうまくいかない。上司から頼まれた仕事を期限までに終えても、なかなか確認してくれない。「確認していただけましたか」と言っても「大丈夫、大丈夫、後できちんと確認しておくから」といつもほったらかし。他の用件も常にだらしなくて、ギリギリになって「ごめんね、これも急いでもらってもいい?」と仕事を頼んできて、慌てて作業するのはこっちなのに、本当に頭に来てしまう。だらしない上司が苦手……!

「確かに、だらしない上司と仕事をするのは大変ですよね。ご本人はとても計画的に仕事をする人で、とてもきちんとしている。だからだらしない上司とより合わず、苦手意識を持ってしまうわけです。

でも、きちんと計画的に仕事をこなす、というのはこの人の時間の価値観でであって、上司は違う時間の価値観を持っています。道徳的には上司のほうがだらしないということになるかもしれませんが、道徳的な価値観で判断してしまうとコミュニケーションはつらくなります。

コミュニケーションは、人とのつながりです。人は自分とは違うものです。さまざまな価値観があり、多様な概念が存在します。自分の価値観で、“〇〇しなくてはいけない”という枠組みだけで人を判断してしまうと、付き合える人は非常に少なくなってしまう。まずは『人は自分とは違って、いろんな価値観があるんだから、上司も自分とは違う時間軸で生きているんだな』と認めることが第一歩です」

改善したい部分は、ためずに相手に伝えたほうがいい

でもそうなると、「こちらが他者の価値観を認めて、我慢するしかないということに……!?」と思った人も多いのでは。

「いえいえ、そういうことではありません。例えば、上司にギリギリに物を頼んでほしくない、という場合は、まずは上司にきちんとそのことを伝えてみるといいでしょう。『急な作業だとミスが出てしまうといけないので、早めに言ってもらえると助かります。例えば今回の件だと○時までに言っていただけるとありがたいです』という言い方をしてみるなどです。

こちらがイライラしているのに、そのイライラの意味や理由を相手は理解していないことが多いのです。改善してほしい部分が明確にあるなら怒りの感情ではなく、要望として上司にきちんと伝えると、『そうだよね、次からはそうするね』となることも多いようです。

ですが、それでも相手が改善できない場合もあります。特に年上の上司は、長年自分のやり方で業務を行っているので、今から変わるとは言い切れません。また例えば、そもそもタイムマネジメントが苦手な上司もいます。こうした場合は、こちら側が意識を変えて提案をするなどの工夫が必要です。『前もって“何かありますか?”と定期的に伺うようにしましょうか?』と提案してみるのもいいかもしれません。

ビジネスの場合、業務をいかに円滑に行うか、ということが一番の目的です。あなたのやり方を通すことが大事なのではなく、みんなでどう改善できるかを考えればいいのですから」

まずは、「この上司や同僚は嫌い、苦手だ」と決めつけずに、どうすれば改善できるかをみんなで話し合おうと提案を。自分の道徳観だけで推し進めないこともコミュ力には重要なのだ。



Photo : Getty ImagesText :Yuko Tanaka

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戸田久実さん
アドット・コミュニケーション代表取締役

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事。立教大学文学部卒業後、株式会社服部セイコー(現セイコーホールディングス株式会社)で営業として勤務。その後音楽業界企業の社長秘書を経て、現在は研修講師として民間企業、官公庁の研修・講演の講師の仕事を歴任。「伝わるコミュニケーション」をテーマに「アンガーマネジメント」「アサーティブコミュニケーション」「クレーム対応」「プレゼンテーション」「インストラクター養成」など多岐にわたる研修や講演を実施。『働く女の品格 30歳から伸びる50のルール』(毎日新聞社)、『アンガーマネジメント怒らない伝え方』(かんき出版)など著書も多数。近著に『イラスト&図解 コミュニケーション大百科』(かんき出版)がある。