炭水化物はやっぱりワルモノ?
ジャガイモ、ポテトやパンを食べながら細くなれるとしたら? 今までの常識をひっくり返す新しい説を知ったら、いつもは....
ジャガイモ、ポテトやパンを食べながら細くなれるとしたら? 今までの常識をひっくり返す新しい説を知ったら、いつもは避けるパンをおかわりする日も近いかも……?
昔からの定説といえば、「やせたいなら炭水化物を減らせ」。一方で、麺と揚げ物を食べながらビキニがばっちり決まるような人も。そんな友達を横目に、パン断ちをしてもちっともやせない人がいるのも事実。つまるところ、それは内臓次第。というのは、人間の消化器官は特定の炭水化物に反応するそう。だから、誰かにとってのパスタは、他の人のサラダと同じということなのかも……!?
「Wired to Eat」の著者で生化学者であり、減量の専門家ロブ・ウルフは、キヌアやサツマイモなどを「良い炭水化物」として、白い精製されたパスタやデニッシュを「悪い炭水化物」とする考えは、古いだけでなく間違っていると言う。そうではなく、炭水化物は種類によっても人によっても血糖値に異なる形で作用する、という全く新しい説を唱えている。では、やせたい場合はどうすればいいの?
減量をするための一番の方法は、どの炭水化物が血糖値を急に上げるか調べること。(血糖値の急上昇は、脂肪をため込むトリガーになる)そして、どれか分かったらそれを必死で避けること。
GI値のガイドラインが1980年代に登場してから、やせたい人はずっとGI値の高い白いパスタやパンを避けるようにと言われてきた。「でも新しい研究では、健康的でやせるために食べていい炭水化物の種類は人によって大きく変わる」ということが分かったそう。
そして、興味深いのは自分の身体に合う炭水化物がどれかを調べてみると、長年避けてきた食べ物がむしろ身体にとっては耐えられるもので、さらに減量も可能だと判明することも。また、フムスのように炭水化物ではあるがヘルシーだと思われている食材も、身体に悪いわけではないが特にヘルシーでもない、ということもある。
「もし炭水化物を抜いて少し体重を減らせたとしても、実はもっと炭水化物を食べながら、もっと体重を減らせたことに気付くはず」とウルフ医師。「どの炭水化物が自分のお腹と相性がよいか分かった上で、食事に炭水化物を加えれば、もっと良い結果が出る」
Text:Women's Health UK Translation:Noriko Yanagisawa Photo:Getty Images
自分に合ったものを
この個人個人に合わせたアプローチは、これからのダイエット方法だと専門家は言う。「もう全員一律のダイエット方法はうまくいかない」と話すのはイスラエルのワイズマン・インスティテュートの生物学者、エラン・シーガル教授。「調査をすると、人によって食べ物に対する反応は大幅に異なる。そのため、ダイエットは個人に合わせたものでなければいけない」
2015年にシーガル教授は、ヒトのグリセラミックの反応(つまり、炭水化物を摂取した後の血糖値の変化)は運動、体脂肪率、腸内環境などのいくつかの要素に左右されることを発見。ウルフ医師によるとこの発見は「ここ50年間の中で最も重要な発見」だそう。低炭水化物の市場が2.8億ポンドもあるイギリスでは、炭水化物への耐性が人によって異なる、ということは大きな発見で、「この研究結果にはみんな驚いた」とウルフ医師。
「ある参加者はバナナを食べた後には血糖値が上がったが、加工の度合いがバナナよりはるかに高いビスケットを食べた時はよい血糖が反応したそう。また、ある女性はアイスクリームを食べても血糖値が上がらなかったが、白米を食べた後には上昇したという。このように同じ炭水化物でも人によって食材への反応は異なる。つまり、炭水化物の摂取を一日100gから150gに抑えた方がよい人もいる一方で、大量に摂取しても平気な人もいるということが明らかに。
ロンドンのキングズ・カレッジで遺伝疫学の教授を務めるティム・スペクターは「ダイエットの神話」の著者。スペクター氏によると、一卵性双生児でも似たような食事への反応は異なり、それは腸内の微生物が要因だそう。
試してみた結果
どの炭水化物が自分に合って、どれがNGなのかを知りたい、という人のためにスペクター教授は遺伝学的解析を行っている。このMap My Gutという検査では、腸内微生物叢を調べてくれる血液検査のようなもの。ただし、通常の検査にように血液を調べるのではなく、便を調べる。便を送付して250ポンドで検査をすれば、なにを食べるべきかが分かるそう。あと5年もすればこのような検査は血液検査と同じくらい浸透するかも。
「便の解析から、腸内にいるのは、やせやすくなる微生物なのか、それともむしろやせにくくしているものなのかが分かる。それが分かれば、どうすればよいのかの的確な指導をすることができる」。この腸内の微生物はうつ、アレルギー、ガン、などほとんどすべてのものにかかわっている。DNAを見るよりも便を見たほうが分かることが多いそう。
研究者によると、食生活を変えることによって微生物を活性化させることができるそうで、「微生物は色々なものをエサとなるので、特定の食品群、たとえば炭水化物をやめてしまうことはよくない」とスペクター教授。ただし、加工品は全部やめてもよい、と付け加える。健康に詳しい人なら、食物繊維を多く含む野菜、たとえばニンニク、タマネギ、アーティチョークやネギは、微生物のエサとなることを知っているはず。
さらに、コーヒーやダークチョコレートなどのポリフェノール、キムチやケフィアヨーグルトなどの発酵食品もエサになる。大切なのはこういったエサとなるような栄養たっぷりの食材をきちんと摂ること。たとえパスタが自分に合ったとしても、エサになるような食材もしっかりと食べて。スペクター教授は、腸内環境をよい状態に整えるためには、バランスの取れた食生活が大事だと強調する。
シュガーラッシュ
ここまで読んで、自分に合った食材を知りたくなったのでは? きっと、すでにいくつかの炭水化物が血糖値を上げることが自分でも分かっているはず。「食べた後に気分もよく、満足感があって数時間はお腹がすかない食事がある一方で、食べても気持ちが落ち込んだり、すぐにエネルギー切れになったり、お腹が張る時もあるのでは」とウルフ医師。こういった食事が血糖値を急激に上げるような食事だそう。
「避けたほうがよい食材がどれか分かっていても、実際にモニターで数値を見るのは食生活を変えるためには効果がある」とウルフ医師は話す。どのような食材がよいかを感覚ではなくきちんと知りたいが、スペクター教授の検査や個人に合った食事プランに手が届かない場合はウルフ医師の「7日間の炭水化物テスト」を。これで自分の血糖値をチェックすることで、どの炭水化物が合って、どれが合わないのかは大体分かる。
ただ、好きな炭水化物を食べて数値が上がったとしても、完全に食べられなくなるわけではない。「そういう食材は食べる量を減らして1週間に1回程度にして毎食は食べないように」とアドバイスする。さらに、ライフスタイルが変わることで、炭水化物への耐性も変わってくるので、3、4ヶ月に一度は定期検査をすることをすすめる。そうすればしっかり寝られて、気分もよくなるそう。一度お腹のチェックは必要かも。
7日間の炭水化物テスト
1.理想をいえば、テストをやる前に30日間パレオ食にして身体をリセットして。そうすることでより正確な結果が出る。
2.糖尿病の治療に使われるような血糖値をモニターする機械を使うのがベスト。
3.普段よく食べる炭水化物を7種選んで。毎朝そのうちの1種だけ食べるように。(この時に他の食材は食べない)糖質50gが必要なので、炭水化物のうち食物繊維を除いたものが50g必要。栄養素を確認して。(つまりキヌアなら100g当たり糖質30gなので、50gの糖質のためには165g食べなくてはいけない)
4.食べてから2時間したら血糖値を計る。4.4~6.4 mmol/lなら正常範囲。これ以上高い場合は、摂取量を減らしたほうがいいかも。
5.朝食以外は好きなものを食べてもOK。
メニュー例
1日目:パスタ75g
2日目:パン120g(3切)
3日目:オートミール90g
4日目:ベイクドポテト290g(大1 1/2個)
5日目:キヌア165g
6日目:白米65g
7日目:ヒヨコ豆255g