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一歩走る度に胸は15㎝も動くって知ってた?

胸は一切ランニングの役に立たない。ただ便乗してきては邪魔をするだけ。揺れないブラなど特別な備品まで調達したのに、しっくりこない時もある。

調査によると、2013年のロンドンマラソンに参加した女性ランナーの32%が、時折胸に痛みを感じたと報告。そのうち17%の女性には、胸の痛みのせいで時々トレーニングを中断した経験があった。

でも悪い話ばかりではない。運動中の胸の動きに関する研究は今日も続き、ブラの技術は常に進歩し、ランニングは乳がん防止の最善策の一つだという証拠も増えつつある。

胸を大事にするためにランナーが知っておくべきこととは……?

1.生まれつき体は胸に優しくない

「サイズによっては胸はとても重いもの」と言うのは、アンドレア・チェヴィル医学博士。ミネソタ州ローチェスターのメイヨークリニックで癌のリハビリテーションプログラムを牽引する彼女は、物理療法リハビリテーションの研究者でもある。「体は胸をうまくサポートしないの。安定して動かないようにする方法がほとんどないのね」

体の他の部位はラッキー。「腹部の筋膜ってすごく強いのよ。強い線維外膜のおかげで、走ってもお腹の中がひっくり返ったりしない。でも胸はそうじゃないわ。基本的に胸には支えとなるものがない。それでいて痛みを感じる部位。そして限られたサポートが限界まで使われると、痛みを生じるの」

2.胸は想像以上に動く

英国ポーツマス大学のスポーツ・エクササイズ科学科の上級研究員、ミッシェル・ノリスは、胸の動きを専攻し、研究室で胸部サポートアイテムの実験に励む。

ノリスの研究チームは、女性にランニングマシンを裸の胸で、そして低サポートおよび高サポートブラを着用して走ってもらい、3D技術で胸の動きの幅を捉えた。

「とても協力的な被験者がいるのよ。彼女たちには大きな借りがあるわ」

分析の結果、ノリスたちは胸が八の字に動くことを発見。おそらく多くのランナーが想像する上下運動だけではなく、左右や前後にも動くのだ。「胸は細胞組織の塊であって筋肉ではないから、強固な構造をしていない。だから走ると三次元の動きをするのよ」

これらの動きを足していくと、サポートされていない状態の胸は走行中に約15㎝も動くことになる(被験者のカップサイズによって、異なる数字を報告している研究所もある)。およそ50%は上下、25%は左右、そして残りの25%は前後方向の動きだ。

とにかく、一歩走る度に15㎝揺れるということ。

3.良いブラは必須

胸がそんなに動くなら、女性ランナーにはサポートが必要。

たくさん試着して、ベストフィットなブラを購入しよう。知識が豊富な女性スタッフのいるランニング専門店を探すこと。ランニングにはサポート力の強いブラがおすすめ。

圧縮型やカプセル型など様々だが、着け心地の良いブラがあなたにとってのベストブラ。

「フィットするブラは運動をするすべての女性にとって最も重要なことの一つよ」と、ノリスは語る。

フックが背中にあるタイプを選ぶなら、一番ゆるいフックで着られるものを。これなら洗濯を繰り返すうちに伸びてきても、一段階きつめで締めれば大丈夫。

4.ペースは動きに影響しない

分析の結果、自身もランナーであるノリスを驚かせたのは、走るスピードに関わらず胸は同じだけ動くということ。「速く走れば走るほど、胸の動きは増えると思っていたの。でも実際はそうじゃなかった。1時間に10キロのペースで走れば、胸は最大移動量で動く。1時間に14キロのペースで走っても、それ以上は動かないわ」、とノリス。

ランナーのみなさん、長距離をゆっくり走る分には、ブラのサポート力は少なくていいとは思わないで。ランニングにはいつだって強力サポートブラが必要。

5.胸が縮んでる?

ランニングプログラムを開始したばかりのアスリートがよく気付くのは、胸のサイズの縮小。どうして?

ノリスによると、ランニング自体は胸を小さくはしないそう。でも胸は脂肪と線維組織で出来ている。「トレーニングをしながら健康的な食生活を送っているなら、体脂肪が全体に落ちていくはず。当然胸内の脂肪も減っているんだから、胸のサイズが小さくなってもおかしくないわ。ランニングは部分的にではなく、全体的に脂肪を落とすのよ」

6.痛みを決して軽視しない

胸の痛みには色んな種類がある。その多くは簡単に説明がつくものだけど、痛みを無視するのは危険。

胸部の痛みの多くはブラがやるべきことをやっていない、つまりサポート不足が原因。チェヴィルによると、胸の大きな女性が十分なサポートを見つけるのは難しいかもしれないそう。

生理が近づくと、多くの女性は胸に非常に敏感。この度合いは人によって大きく異なる。もし痛みがひどければ、胸への影響力が低いワークアウトを選ぶべきかも。「この手の痛みは引いていくもの。でも痛みに敏感な間は無理をしないことね」

押し切りたいなら、薬局で買える抗炎症剤を使ってもいい。そして胸の張りを増長させないよう、塩分の摂取に注意が必要なんだそう。月経前後の体に水分を溜めてしまう可能性がある。

異常な痛みがあれば、医師に相談すること。「痛みを発症した胸の小さな女性の場合は、説明が付きにくく、より心配よ。おそらく臨床医の診断を受けるべきね」

7.不快感はモチベーションを下げかねない

ポーツマス大学研究所での最近の研究で、胸部の快適さが走る意欲に影響することが判明した。胸に不快感があると、一走りするために自分を外に出る気にさせるのも一苦労。胸の状態を自覚せずにいると、不快感が原因でワークアウトをサボることになりかねない。「間違ったブラを選んだら、走りには行かないわね」、とノリス。

8.走る女性の乳がん発生率は座りっぱなしの女性よりも低い

チェヴィルによると、最近では、多くの研究がエクササイズと乳がん発症率低下の明らかな関係性を証明しているそう。

「第一次予防とは、そもそもその病気にかからないようにすること。第二次予防は、一度かかった病気が戻ってこないようにすること。エクササイズが乳がんの第一次、第二次予防として有効だとする確かな証拠があるのよ」

2014年の研究で、ランニングはウォーキングをするよりも乳がん生存率が高いことが分かった。実験に参加した女性には、適度な運動よりも激しい運動に効果があった。

ますます走りに行かなくちゃ。もちろん、優秀なブラでね。

※この記事は当初Runners Worldに掲載されました。

https://www.womenshealth.com.au/article/fitness/breasts-and-running-facts



Text: Sarah Lorge Butler Translation: Ai Igamoto Photo:Getty Images