「デンスブレスト」という言葉、知ってる？ これは乳房のタイプを示すワードで、乳がんのマンモグラフィ検査のときや乳がんの診断にも大きく関わってくる要素。乳房全体が白く映り、乳がんがあるかどうかが分かりづらくなるデンスブレストについて、スピーディーな確定診断を目指す、乳腺専門クリニックである品川ブレストクリニックの嶋本 裕院長に話を伺った。
乳がん検診で一般的に使われるX線撮影装置であるマンモグラフィ。ところが、マンモグラフィで検査すると乳房全体が白く映ってしまうことも。こういったタイプの乳房を「デンスブレスト（高濃度乳腺）」という。
「デンスブレストは、日本人に多いタイプの乳腺と言われています。乳房の中には母乳の生成に関わる乳腺組織というものがありますが、この乳腺組織の量（濃度）は、人それぞれ異なります」と教えてくれたのは、乳がんの画像診断に定評がある品川ブレストクリニックの嶋本 裕先生。
「デンスブレストは乳腺組織が密集しているタイプで、マンモグラフィで検査をすると、乳房全体が画像上で白く映ります。デンスブレストの方は、そうでない方と比べて乳がん発症のリスクがわずかに高まるともいわれていますが、デンスブレストは乳房のタイプであって、決して病気を意味するものではありません」
「乳がんを含めた“しこり”もマンモグラフィでは白く映ってしまいます。このためデンスブレストではしこりが隠れてしまい、発見できないことがあります。簡単に言うと、雪山の中で白いウサギを探すのは難しいですよね。感覚としてはそんな感じがデンスブレストなのです」
マンモグラフィで撮影した、乳房のタイプ。（左から）乳房がほとんど脂肪に置き換えられたタイプである脂肪性乳腺。乳がん（病変）が撮影範囲に入っていれば診断可能といわれる。散在性乳腺は、脂肪に置き換えられた乳房内に乳腺組織が散在しているタイプ。不均一高濃度乳腺、極めて高濃度乳腺がいわゆるデンスブレスト。乳がんの病変部が白い部分＝乳腺組織に隠れて発見できないことも。画像提供：品川ブレストクリニック
マンモグラフィだけでなく、超音波検査も一緒に
「このデンスブレストは、日本人の若い女性に多いタイプでもあります。欧米人に比べてアジア人に多い乳腺のタイプなのです。このタイプの方は、マンモグラフィだけだと見落としがあるかもしれないので、マンモグラフィと超音波検査を併用するのが理想です」
ただ、このデンスブレストは乳房の外側からでは判断できず、マンモグラフィ検査をした際に、医師からのデンスブレストの告知義務はなし。また今年の春、厚生労働省からデンスブレストに関する見解の発表もあった。
発表では、デンスブレストの告知義務については告知することが死亡率の低減につながるかが分からない点、また高濃度乳房だからと過剰診断や過剰検査などが行われる可能性もある点などから、一律に告知するのはまだ早いという見解が示された。
「ですが私の意見としては、やはり高濃度乳線の方はマンモグラフィだけではなく、超音波検査も受けてほしいと思っています。私のクリニックでは、マンモグラフィ単独での検診はお勧めしていませんが、自治体の検診はマンモグラフィだけのところがほとんどです。気になる方は、自分がデンスブレストかを聞き、その場合は、超音波での診断も追加してお願いするなど、オプションの検査を付けることをお勧めします」
ただ単に乳がんの検診を受けるだけではなく、“乳房のタイプ”を知ることも大切。そのうえで、リスクを回避するための検査方法を追加するなど、適切な検査であなたの健康とバストを守ってみて。
品川ブレストクリニック
乳がんの検診においては即日で確定診断ができる機関が少なく、また検査の結果が出るには時間がかかることも。こうした現状を踏まえ、検査から確定診断までをスピーディーに対応することを目指す、乳腺専門のクリニック。乳腺疾患の正確な確定診断に注力し、マンモグラフィ・超音波・MRIなど、丁寧な画像検査に力を入れている。乳腺外科の他、乳がんドックも併設、豊胸術後の乳がん検診も受診できる。乳がんの画像を基づいた、画像診断医によるセカンドオピニオンなども相談可能。
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品川ブレストクリニック院長。日本医学放射線学会放射線診断専門医、検診マンモグラフィ読影認定医、日本インターベンショナルラジオロジー学会IVR専門医。愛知県がんセンター中央病院、聖マリアンナ医科大学病院などを経て、品川ブレストクリニックを開院。
