ちょっと前までは腰痛が起きたら、安静が一番と言われてきた。でも、最近はその考えは逆転したと銅冶先生は言う。
「耐えがたい痛みの場合は、1~2日寝ていてもいいのですが、ある程度痛みが軽減したら積極的に身体を動かしたほうが、痛みは軽減できるという考え方に変わっています。その理由は大きく2つあります。
ひとつは、悪い姿勢でズレたままになっている髄核をストレッチなどで戻してあげれば、痛みは改善できます。
もうひとつは、身体を動かすということは腰痛を治そうという気持ちの表れなので、やる気物質が脳内から分泌します。このやる気物質には鎮静効果、“痛みストレス”を抑える効果もあることがわかってきました。
でも身体を動かしたほうがいいといっても、ハードな運動がよいわけではありません。昔から、腹筋や背筋が弱まると腰痛が発生すると、腹筋トレーニングなどのハードな筋トレを薦める人がいますが、これは誤解です。
マッチョなボディビルダーも、理想的な筋肉を備えたスポーツ選手でも腰痛を抱えている人は少なくありません。筋肉を鍛えるよりも、長年の生活習慣でズレてしまった髄核のタイプを把握して、そのタイプの合ったストレッチで改善してあげることが重要なのです」
あなたはどのタイプ? 3タイプで簡単ケア
銅冶先生の腰痛ケアのメソッドを、簡単にご紹介。
下記のA~Cのタイプを診断する動作を行い、痛みが出なかった動作を自分向けのストレッチとして繰り返す。1回では判断できないことも多いので、ゆっくり10回ぐらい繰り返して、自分のタイプを見つけてみて。
A 後屈改善タイプ
腰に両手を添えて、ゆっくりと後ろに腰を反らす動作をしてみて。この動作をすると痛みが軽くなるという人は、このタイプ。
★実践! 「改善ストレッチ」のやり方
1 両足を肩幅に開き、まっすぐ立つ。腰の左右に両手を添えておく。
2 ゆっくりと上体を後ろに反らせる。このとき、首が反ってしまったり、膝が曲がらないように注意を。無理なく反れる位置で3分間キープ。ゆっくり身体を元に戻す。これを10回繰り返す。
B 前屈改善タイプ
ゆっくり前屈のポーズを取ってみて。この動作をすると痛みが軽くなるという人はこのタイプ。
★実践! 「改善ストレッチ」のやり方
1 両足を肩幅に開き、立つ。
2 そのまま反動をつけずに、ゆっくりと前屈。3秒キープしたら戻す。これを10回繰り返す。
C 側方屈改善タイプ
A、Bをやっても改善しなかった人に多いのがCタイプ。腰を左右にゆっくりと動かして、痛みが出たらこのタイプ。
★実践! 「改善ストレッチ」のやり方
1 肩幅に足を開き、立つ。
2 痛みが出た側の逆側へ、ゆっくりとお尻をずらすように真横に腰を傾ける。これを10回繰り返す。
腰は文字通り“身体の要”。フィットネスでも重要なパーツだけに名医がガイドするストレッチで、大切な腰を労り、守ってあげて。
PROFILE
銅冶英雄(どうや・ひでお)先生
お茶の水整形外科機能 リハビリテーションクリニック院長。整形外科医。1994年日本医科大学卒業後、千葉大学附属病院、成田赤十字病院、国立がんセンター中央病院などに勤務。海外留学などを経て、2010年、お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニックを開院。長年腰痛に悩まされた経験を生かし、独自のメソッドを開発。『4万人の腰部脊柱管狭窄症を治した! 腰の痛みナビ体操』(アチーブメント出版)、『腰痛治療「0分」革命!』(主婦と生活社)など著書多数。