筋トレを頑張った次の日、泣きたくなるような筋肉痛に襲われた経験はない? その痛みで自己満足して、まるで“名誉の印”と思っている人も多いだろう。昔から筋肉痛は効果的なトレーニングの結果だと、まことしやかに言われていた。しかし体のプロに言わせると、どうもそうではないらしい。そこで、筋肉痛の都市伝説を解き明かし、質の高いトレーニングと筋肉痛の治し方を大公開!

筋肉痛の正体とは?
痛みを引き起こしやすいトレーニングがあった!

「筋肉痛は、トレーニングから1~2日経つと出てくる痛み」 と語るのは、ロンドンの高級ジム「Third Space」のエリートパーソナルトレーナー、アンディ・ヴィンセント。「筋肉に与えられたダメージのレベルによって、明らかな痛みが出るまでに12~48時間かかる。筋肉痛はトレーニング後、最長72時間続くこともある」

たった一度の筋トレで2日も筋肉痛になるとは限らない。でも、筋肉痛を比較的引き起こしやすい運動はある。

ヴィンセントによると 「通常、筋肉痛はスローなエキセントリック収縮運動(引き伸ばされた筋肉の力で重たいものを下ろす動作)から来るもの」。デッドリフトやプルアップ(懸垂)、シングルアームローでウエイトや体を下ろす動作がこれに当たる。

「また負荷のかかった組織を伸ばしすぎたり、効果的なウォームアップなしで筋肉に負荷をかけたり、まったく新しいトレーニングを試したりすると、筋肉痛になる確率が高くなる」 と言う。「痛みの原因は、筋組織の破壊、筋組織を取り巻く筋線維の腫れ、または結合組織そのものにある」

デッドリフトが痛みの原因なら、やっぱり筋肉痛はトレーニングが効果的であることを示すサイン?

筋肉痛は効果的なトレーニングのサイン? 
原因を探ると、筋トレの見直しにもつながる!

筋肉痛は効果的なトレーニングの結果? 端的に言えば、答えはノー。

ヴィンセントいわく、「筋肉痛の有無だけで運動の質を判断できるというのは、よくある誤解」 なんだそう。「新しいトレーニングを始めた最初の1~2週間は、軽い痛みが出て当然。でも、3日も痛みが続くのは、そのトレーニングの中身が悪いことを示していると思って。

たいていは不適切な重さのウエイトを使っているか、ボリューム(レップ数=1セットに行う回数とセット)を理解していないかが原因。また、同じような動きばかりで筋組織をいじめている、正しいウォームアップをしていないことなども原因になる」

筋肉痛になったからといって、質の高い効果的なトレーニングをしたことにはならない。けれど、筋肉痛にならなかったからといって、意味のない筋トレだったわけでもない。

「翌日に痛みが出なくなったら、そのトレーニングは意味がなかったと考えてしまう人は、私自身を含めて非常に多い」 と話すのは、パーソナルトレーナーのカーリー・ロイナ。「筋トレが出来るようになると、新しいトレーニングを取り入れて、今までとは違う筋肉の使い方をしない限り、痛みは出ないかもしれない」

つまり、一週間も筋肉痛に泣かされるまで自分を追い込むのではなく、負荷を徐々に掛けて体の限界に挑み続ける質の高いトレーニングをした方がいいということ。

ヴィンセントは、翌日の筋肉痛を期待しながら強度の高いトレーニングを毎晩ひたすらこなすより、動作のパターン、ウエイトリフティングのコツとスピードをマスターすることを勧めている。ただし、筋肉痛がないのも質の高いトレーニングのサイン! 惑わされないで。 

「筋肉をつけるのにも、体を強化するのにも時間がかかる。あえて筋肉痛を招くのは、自分にけがを負わせているのと変わらない。これでは次の筋トレでのパフォーマンスが落ちてしまう。

体脂肪を減らすのが目的なら、トレーニングを繰り返すだけでなく、例えば自転車で通勤したり階段を使ったりするなど、ジムの外でもアクティブに生活することが非常に大切。だけど、筋肉痛が何日も続くと、それほどアクティブではいられなくなり、毎日消費するカロリーの全体量が減ってしまう」

でも、筋肉痛でトレーニングの有効性を測れないなら、何を基準にすればいいの?

筋肉痛があるときにトレーニングしてもいいの?


順天堂大学医学部附属浦安病院スポーツ医学センターのセンター長、糸魚川善昭先生によると、筋肉痛がある時は、筋肉に乳酸が溜まったり、損傷が起きている状態なので、さらにトレーニングをするのはおすすめしないそう。

「運動は、やりすぎもよくありません。筋肉痛が起こっているにも関わらず、無理して筋トレなどを行うと、肉離れなどのケガにつながります。それでも運動したい、ということであれば、普段よりも負荷を軽くして、無理をしない程度にしてください。休息も大切なので、自分の体と相談しながら運動しましょう」

今日からトライ! 
筋トレの質をグッとアップさせる「3つの方法」

1.トラッカーを使う

カロリーを消費したり歩数を稼いだりすることを目標としているなら、フィットネストラッカーで数値をチェック。100パーセント正確とは限らないけれど、エネルギー消費量と歩数はそれなりに把握できる。

2.メジャーを使う

ダイエットプランに従って体重を減らそうとしているなら、必ず毎週、体のサイズを測ること。BMIで “健康” と見なされる体重を目指すのではなく、ビフォーアフターの体脂肪率を測定してみよう。頻繁にセルフィーを撮るのも忘れずに。

3.パフォーマンスをチェックする

見た目を変えるのが目的だとしても、ゴールも設定しよう。例えば筋トレの回数が1回でも増える、ウエートが1キロでも増える、新しい動きを1つでもマスターできるなどがあれば、進歩していることになる。つまり、その筋トレプランは大成功! “小さな勝利”を覚えておくためにも、「フィットネス日記」をつけてみよう。

簡単&お役立ち! 
覚えておきたい、筋肉痛を和らげる「5つのテクニック」

筋肉痛は時として避けられない。でも、症状を和らげる方法はいくつかある。

1.リカバリーに時間をかける

質の高いトレーニングプランに沿ってトレーニングしているなら、休息と回復にも十分な時間を割いているはず。「そもそもひどい筋肉痛になるような筋トレをしないことが常に最優先」 と語るヴィンセントは、「ゆとりをもって回復できるように、一週間の予定を立てて」 とアドバイスしている。

2.マッサージに行く

アスレチックトレーニング専門誌に掲載された文献によると、マッサージとフォームローラーは筋肉痛を和らげるのに効果的。ヴィンセントいわく、「トレーニングの後のサウナや夜のアイスバスにも効果が期待できる」 そう。

3.動き続ける

「新しいトレーニングを始めた最初の1~2週間は筋肉痛になるかもしれない」 とヴィンセント。「翌日もジムへ行き、軽い有酸素運動などのリカバリーセッションで血行を促して。強度の高い運動だけは避けること。軽いストレッチは気持ちいいだろうけれど、痛みの激しい筋組織を伸ばしすぎないように注意しよう」

4.マインドフルに食べて飲む

リカバリーに水分補給が必要なのは言うまでもないけれど、ナトリウムも非常に大事。ナトリウムは、筋けいれんを緩和して、筋トレによる有毒な老廃物を体が自力で取り除くのを助けてくれる。ヴィンセントによると、「ナトリウムがかなり少ない食事をしている場合は、朝一番にひとつまみの塩とレモンをお湯に入れて飲むといい」 らしい。

5.天然の治療薬だけを使う

「トレーニング後に、鎮痛剤や抗炎症薬を飲むのは絶対NG」 とヴィンセントは声を強める。「クルクミンのような天然の治療薬を使うのはいいけれど、炎症は治癒プロセスの一環なので、それを薬で抑制しても回復を遅らせるだけだということは覚えておいて」


※この記事は当初、イギリス版ウィメンズヘルスに掲載されました。

※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。


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Nana Fukasawa
ウィメンズヘルス・エディター

2018年に「ウィメンズへルス」編集部にジョイン。アシスタントを経て、エディターとして美容、フード、ダイエットなどの記事を担当。流行りそうなヘルシーキーワードをいち早くキャッチすることを心がけている。CBDや筋膜リリース、アーユルヴェーダ、植物療法を学ぶ、自他共に認める“セルフケア マニア”。2023年初めてのハーフマラソンに挑戦。