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だるさやめまい……多くの女性が抱えるプチ不調。疲れがたまっているせい、歳のせいと、やり過ごしてしまいがちだけれど、実はこれ、貧血の症状かも……? 実は日本は貧血大国だとドクターは憂いている。そこでウィメンズヘルスは5回にわたって貧血や血液にまつわるトラブルを、血液疾患に詳しいドクターに伺う。第1回目は、今多くの女性が悩んでいるという貧血について、ナビスタクリニック新宿・貧血外来の濱木珠恵先生に教えてもらった。

貧血のうち、ほとんどが鉄不足の「鉄欠乏性貧血」

あまり知られていないけれど、日本は貧血大国。50歳未満の女性のうち、5人に1人は貧血になっているそう。実際、貧血外来のあるナビスタクリニックにも、めまいや立ちくらみなどの不調で、多くの女性が相談に訪れているという。

「だるさが続くなどの不調を訴える女性が増えています。症状を聞いて調べてみると、鉄欠乏性貧血を起こしている人がほとんどです」。そう話すのは、血液疾患に詳しい濱木珠恵先生。

「鉄欠乏性貧血とはその名のとおり、体の中の鉄が不足することでおきる貧血のことです。体に酸素を届ける働きのあるヘモグロビンは、鉄を材料につくられています。鉄が不足すると、ヘモグロビンをつくれなくなって、体に十分な酸素が届かなくなります。その結果、疲れやすさ、だるさ、体力や集中力の低下などの症状が起こりやすくなります。日本の女性の約半数が鉄欠乏状態であり、女性の20%は鉄欠乏貧血になっています」

貧血には、赤血球や白血球、血小板がつくれずに起こる再生不良性貧血や、赤血球が壊れていく溶血性貧血、ビタミンB12や葉酸の不足が原因の悪性貧血という病気もあるが、これらは稀なケースといえるそう。

外国との比較から見ても、日本人女性の鉄不足には理由があった! 

「欧米では、小麦粉に鉄が添加されていたり、鉄補助食品を利用するなど、鉄不足を予防する対策が講じられています。でも、日本ではあまり行われていません。そのため多くの人の鉄摂取量が不足気味です。女性は生理の出血で鉄を出してしまうため、男性と比べて鉄が不足しがち。ダイエットによる偏食や減食も、鉄不足の原因です」

「鉄を摂るべき!」という意識が全体的に低いうえ、“出る”“摂らない”が連鎖して、日本女性の鉄不足を招いているよう。

「鉄欠乏性貧血は、鉄を多く摂ることで予防できます。女性は生理による出血というリスクファクターがあるのだから、現時点では貧血でなくても、意識的に継続して鉄を摂るべきです」

めまい=貧血とは限らない。自己判断は危険!

貧血と間違われやすいのが、起立性調整障害(きりつせいちょうせつしょうがい)。いわゆる脳貧血といわれているもので、朝礼などでバタンと倒れてしまうのがこれ。急に立ち上がったり、長時間立ち続けてていたりすると血圧が下がってしまって、めまいやふらつき、立ちくらみや目の前が暗くなるなどの症状を起こす、と濱木先生。

「鉄不足による貧血状態なのか、低血圧による症状なのか、原因が違えば治療方も異なります。鉄欠乏性貧血なら薬や注射で鉄を補う治療を続けることで治りますが、起立性調整障害は別の治療が必要です。めまいや立ちくらみなどの不調を感じたら、自己判断せず医師に相談しましょう」

きちんとチェック。血液検査の結果も貧血のバロメーターに

めまいや立ちくらみなどの症状だけでなく、健康診断で行われる血液検査の結果も貧血のバロメーターにできるそう。一番分かりやすいのがヘモグロビンの濃度で、世界保健機構(WHO)の基準により、成人女性なら12.0g/dℓ未満(妊婦の場合は11.0g/dℓ)だと貧血と診断される。

この他、血液中に占める赤血球の体積の割合「ヘマトクリット値」も診断基準の一つに。正常値は成人女性の場合は33.4~44.9%で、血液中の赤血球数値の正常値は血液1μℓ(マイクロリットル)あたり376万~500万。

「健康診断でこの数値を外れていても再検査や受診を指示されない場合もあります。ですが、この数値は貧血を疑う要素の一つ。基準値を下回っていて、だるさやめまいなどの症状があるようなら、医師に相談をしましょう」

貧血は病気、軽視は禁物。病気をチェックする機会にしよう

貧血は肉体的な痛みがないうえ、めまいや立ちくらみがしても、まだ体力のある20代や30代だとひと晩寝ると少し良くなった気がすると放置しがちな人も。でも実はそれ、自覚がないだけの貧血で、その裏に違う病気が潜んでいることも……。

「貧血は病気のバロメーターでもあります。貧血の原因として違う病気が隠れていることもあるので、たかが貧血と軽視しないでほしいですね」と、濱木先生は言う。

多くの女性を悩ますプチ不調や貧血の原因は、ほとんどが鉄不足。その解消・予防はいたってシンプル。「鉄を摂る習慣をつけること」。これが貧血リスクの高い女性の、一番手軽で確実な貧血防御策といえそう。

■お話を伺ったのは……
濱木珠恵(はまき・たまえ)先生
医療法人社団鉄医会ナビスタクリニック新宿院長。虎ノ門病院、国立がんセンター中央病院で造血幹細胞移植の臨床研究に従事。都立府中病院、都立墨東病院で血液疾患の治療に従事したのち、2012年9月より東中野院長。2016年4月より現職。貧血外来などで女性の健康をサポートする治療を行う。専門は内科、血液内科。著書に『ドラキュラ女子のための貧血ケア手帳』(主婦の友インフォス)など。ナビスタクリニック新宿 https://navitasclinic.jp/shinjuku



Photo : Getty ImagesText : Yuko Tanaka