【依存症⑥】DVはパートナーへの依存? 誤解しやすい暴力やモラハラと「依存症の関係」

23 February 2019

【依存症⑥】DVはパートナーへの依存? 誤解しやすい暴力やモラハラと「依存症の関係」

言えないだけ、知らないだけで実はパートナーの暴力に悩んでいる女性は、少なくないと識者は言う。それでも別れられないのは共依存だから? 依存症についての最終回は、暴力と依存の関係を、臨床心理士の信田さよ子さんが語る。一般人だけではなく、セレブのDV(ドメスティックバイオレンス)がニュースになる現代。DVをする側、される側の間には「洗脳状態」があると信田さん。モラハラや#me too運動など、私たちを取り巻く環境は変貌しつつある。混迷の時代を生きるための方法も併せて伺った。

信田さよ子さん

臨床心理士 信田さよ子さん

お茶の水女子大学大学院修士課程修了。駒木野病院勤務、CIAP原宿相談室勤務を経て1995年に原宿カウンセリングセンターを設立、同所長を務める。依存症本人やその家族、DVや虐待問題などのカウンセリングに従事。著書に『依存症』(文春新書)『母が重くてたまらない』(春秋社)『共依存 苦しいけれど、離れられない』(朝日文庫)など多数。http://www.hcc-web.co.jp/ Twitter @sayokonobuta


暴力・DVは依存ではなく「洗脳」。相手が離れられなくなる世界に引き込む

暴力を振るわれているのにパートナーと離れられないなんて理解できない、それはパートナーに依存しているのでは? そう勘違いして、被害者をある意味で問題視する場合があるけれど、信田さんによると「暴力やDVは、依存ではなく洗脳」だそう。

「いじめでも同じことが言えますが、DVの特徴は相手を自分にしがみつかせることです。ただ殴ったり蹴ったりするのではなく、『この世界は自分が仕切っているんだ』という世界に女性を引き込んで暴力を振るいます。『自分の世界はここしかない』と思わせることで、相手が離れないようにするのです」

これは、女性がその世界に依存しているのではなく、「世界はここしかないと洗脳されているのです」と、信田さん。

「この場合、『他にも世界がある』と言っても、説得力はありません。洗脳されると、そこから出る、離れるという思考にはならないのです。この逃れられない世界に絶望すると、最悪の場合、自殺という選択をしてしまうこともあります」

DVを共依存と捉えることがあるが、その考え方に信田さんは否定的。
「この洗脳された関係を共依存というのは、女性にとってあまりにも酷です」


「悪いのは自分、暴力は自分のせい」と思い込ませるDV

DV被害者の多くは「相手は悪くない」と言うのだとか。これは洗脳されて「暴力の原因が自分にある」と思い込んでいるため、と信田さんは言う。

「『お前が悪いからこうするんだ』『あのとき、素直にハイといえば暴力は振るわなかった』『暴力を振るっている自分だって限界なんだ』などと言われると、『自分が悪いからこの人は暴力を振るう』『私が暴力を振るわせている』と思い込んでしまうのです」

こうなると、どうやって暴力を振るわれないようにするか、自分を変えなきゃいけないと努力するようになるという。

「周りはDVだと思っても、当事者たちにとってはそれが普通の世界。女性は『この世界を逃れることができない、ここ以外では生きられない』と洗脳されているから、DVを認めません。『悪いのは自分、パートナーを責めないで』とまで思うようになります」


「洗脳への気づき」には、旅行が効果的。平和な日常で異様な関係性を分からせる

このような状態のDV被害者に洗脳を気づかせるには、DVが起きている「二人にとっての当たり前の日常」から、パートナーのいない空間へと連れ出すのが効果的だそう。

「最低でも2、3日離れることが必要です。パートナーのいない旅先で平和を体感することで、自分たちの関係がどれだけ異様で、シビアな日常であり、ある種の戦場状態であるかに気づきます」

このとき重要なのが、パートナーから完全に離れた環境に身を置くことだそう。

「旅に出ると、パートナーが毎晩LINEを送ってきたりします。『何食べたの?』に始まって、『淋しいな』など言うから厄介。そうなると、せっかくの気づきも台無しで、『私だけこんなにおいしいものを食べて楽しんで申し訳ない』『帰ってあげなきゃ』と思ってしまうのです」

スマホなどで、いつでもつながれる状態では、完全に離れたとは言えないよう。

また、パートナーに暴力を振るう男性の多くは、それ以外のときは優しいこともある、と信田さんは言う。実際に、「あの人が暴力なんて信じられない」と周りの人が驚くことも少なくないそう。一見、愛し愛されているように見えてしまうので、周りが暴力に気づきにくく、気づいても指摘しづらいことも多いのだとか。

「暴力は洗脳なのだから、批難するのではなく気づきの機会を設けることが大事です」と信田さん。

  

最近はDVだけでなく、モラハラ(モラルハラスメント)や性的強要、言葉による暴力など、対等でない関係に悩んでいる人も多いそう。そんなときはパートナーと数日離れてみるのも一つの手段。関係をよくも悪くも見直す“気づき”の機会になるはず。

Photo : Getty Images Text : Yuko Tanaka

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