【依存症①】ハマるのと何が違うの? 今、身近にある「意外と知らない依存症のこと」

01 February 2019

【依存症①】ハマるのと何が違うの? 今、身近にある「意外と知らない依存症のこと」

SNS依存にカフェイン依存、彼氏依存症なるものまで登場し、気づけば身の回りには「依存症」だらけのように感じる昨今。でもそれって本当に依存症という病気なの? 知っているようで知らない依存症について、6回にわたって解説。第一回は依存症の本当の意味と原因を、臨床心理士の信田さよ子さんに伺った。

信田さよ子さん

臨床心理士 信田さよ子さん

お茶の水女子大学大学院修士課程修了。駒木野病院勤務、CIAP原宿相談室勤務を経て1995年に原宿カウンセリングセンターを設立、同所長を務める。依存症本人やその家族、DVや虐待問題などのカウンセリングに従事。著書に『依存症』(文春新書)『母が重くてたまらない』(春秋社)『共依存 苦しいけれど、離れられない』(朝日文庫)など多数。http://www.hcc-web.co.jp/ Twitter @sayokonobuta


「ハマりすぎ=依存症」ではない。依存症の境界線とは?

SNSが気になって仕事中もスマートフォンをマメにチェック。ちょっとハマっているだけなのに、職場の人から「依存症?」と言われてしまった……。こんな経験をした人や、「同僚がまさにそう!」などと思った人は、意外と多いのでは?

人によって違う、この曖昧な“ハマる”と依存症の境界線は、信田さんによると「依存症とは健全な社会生活に支障をきたしている悪習慣。支障が出ていなければ依存症とは言いません」とのこと。

「依存症は呼び方もいろいろで、少し前までは中毒とも言われていました。アル中(アルコール中毒)はその名残。最近はaddiction(アディクション)と言われることも多いようです」

アディクションとは、嗜癖(しへき)とも言い、ある行為に耽溺(たんでき)して他のことを顧みることができない状態を指す場合に使われる。アメリカの精神医学での診断でアディクションは、単なる依存よりもっと重度な状態を指すという。

どうやら今の日本の風潮として、専門的には依存症と診断されない程度の“ハマる”ことも依存症やアディクションと呼び、日常的に軽い感覚で使う傾向にあるよう。


依存症は“悪”じゃない。生きようとする選択

本来の依存症の意味が“健全な社会生活に支障をきたすレベル”それも“重度な状態”というと、依存症は生活を壊す悪いもののように聞こえてしまう。でも信田さんによると、「依存症は“悪”というより、人が生きていくために必要があって身に着ける習慣」だそう。

「依存症の原因には諸説ありますが、専門家の間ではサバイバル仮説、自己治療仮説が最近の主流になっています。

辛いことやトラウマを抱えているなど、人生の困った事態に直面したときに自殺したり重篤な病気にならないために、お酒や買い物、ギャンブルやセックスなどに熱中し、生きようとするのです。依存症は逃避ではないかと思われることがありますが、逃げるというよりもっと積極的な『それによって生き延びる』という意味合いがあります。

何かにハマることで、死にたくなるほど辛い状況からつかの間、息がつける。そうやって明日も生きていくことができるのです。しかしハマることによる悪習慣が、結果的にさらに生きづらさや苦しみを増してしまう。生きるための習慣が死に近づけてしまうというパラドックスが、依存症の本体です。そのため、悪習慣の意味やなぜそうする必要があったかを考えることが、回復するためには欠かせません」

依存するものがあるからうつや精神疾患にならず、自殺をしないで済んでいるというケースも。「そういう意味でいえば、依存症は決して“悪”ではありません」と信田さん。


では、何が問題? 実は、依存症は「自覚しにくい」

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依存症が“悪”と思われやすく、また、人によって“ハマる”と“依存症”の境界線が違うように感じるのには、依存症は自覚するのが難しく、当事者意識を持つことができないことも影響していると信田さんは語る。

たとえばSNS依存症の場合、仕事が疎かになって職場で迷惑をかける、連投やリアクションに友達が困惑するなどの事態が生じる。実際に困るのは周りの人たちで本人が困ることはないから、この状況を問題として捉えることができない。そのため、周りの人を困らせていることも理解できない。「これが依存症のもうひとつの大きな問題であり、難しさです」と信田さん。


依存症は「困る」の負の無限ループ。最終的な解決にならないのが特徴

周りの人を困らせる状況や家族の苦しみも、依存するモノやコトによって少しずつ異なるが、実に深刻。買い物やギャンブル依存による借金、アルコールや薬の依存による暴言や暴力などは、虐待やDVにつながり、家族にとっては大きなトラウマになる。摂食障害による万引きなど、さまざまな犯罪を起こしてしまう例も多いという。

「何かに熱中すると、時間の流れが変わります。ものを考えなくていい状態になるので、ますます熱中してしまいます。問題なのは熱中することよりも、この状態を必要としていること。本人によほど大変で辛い現実がない限り、熱中の度合いがエスカレートして依存症に陥るようなことはありません」

困るから何かに熱中する、それをやり続けるともっと困る……。周りも困る。つまり、依存症は“困る”の負のループであって、最終的な解決にならないのが特徴のよう。

  

依存症とひと口に言っても、さまざまなケースが想定される。そこで次回は、依存症のタイプと傾向を信田さんが詳しく解説。次回もチェック!

Photo : Getty Images Text:Yuko Tanaka

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