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週に1回ジムに通ったり、朝にヨガをしたり。ちょっとした運動をしているので、身体にいいことをしていると思っているとしたら、ちょっと待って。今、世界的に問題視されているのが「アクティブカウチポテト」。座りっぱなしの私たちの生活が身体に及ぼす、意外で大きな影響とは?

「アクティブカウチポテトというのは、朝30分ジョギング、ヨガ、ワークアウトなどを日課にしながら、日中長時間デスクワークで座ったままの生活をしている人のことを言います。数年前、米国で生まれた俗語です」と言うのは、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の岡 浩一朗先生。午前9時、10時の始業から仕事終わりまで、ほぼすっとデスクに張りついたままで、気づいたら1日8時間ほぼ座ったまま、というルーティーンを繰り返している人も多いのでは?

さらに、そんな運動不足な生活を少しでも解消しようと、週末ジムに通って汗を流したり、早朝や夜のジョギングやウォーキングを日課にしている人もきっと多いはず。

「そうなんです、アクティブカウチポテトの人口はとても増えています。特に健康意識が高い人は、デスクワークで運動不足なことを気にしている。そうした“意識高い系の人”にアクティブカウチポテトは多いんですね。でも残念なことに、日中座っている時間が長いと、運動習慣があっても健康リスクに悪影響が出ることがわかってきました」(岡先生)

余暇に運動していても座りっぱなしだと、さまざまなトラブルにつながる!?

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米国・国立がん研究所栄養疫学部の研究によると、余暇に運動をしていても、座ったまま(※調査ではテレビ視聴)が7時間以上の人は、1時間未満の人と比べて、総死亡リスクが47%、冠動脈疾患の死亡リスクは2倍も多いことがわかったという。

「特に、1日11時間以上座っている人は、運動を生活に加えても健康リスクは高いままであることがわかっています。多くの人は、そんなに長く座っている意識をもっていませんが、今の仕事形態の多くは、デスクワーク中心です。IT企業などを調査すると、総座位時間が8時間なんてざらです。オフィス以外でも、家に帰って、イスやソファーに座って、スマホやPCで……と、やはり座位中心の生活になりがち。気づくと、1日11時間以上座った状態でいた、ということも少なくないでしょう」(岡先生)

アクティブカウチポテトだけでなく、世界的にこの「座ったままの時間が長い」ことが問題視されている。それは、1日の総座位時間が、死亡リスクに大きく関わることがわかってきたから。フィンランドの健康省では、『SIT LESS, FEEL BETTER』(座っている時間が短いほうが調子がいいよ)というキャンペーンを打ち、一日7時間以上座っている人は、1時間増えるごとに死亡リスクが5%ずつ増加すると警告。

「でも本来は欧米以上に、日本で座位時間のリスクを考えてほしいと思っています。というのも、世界20カ国の成人を対象に、平日どれだけ座っているかを調査(Bauman et al, 2011年)した結果、日本人の成人の平日総座位時間(中央値)は420分と最長でした。また私たち早稲田大学のチームの研究では、日本人は、一日平均8~9時間座っていることがわかってきたのです」(岡先生)

総座位時間が11時間以上の人は4時間未満の人に比べて、死亡リスクが1.4倍アップ。最近では、座位時間が長い女性は、乳がんや大腸がんの発症リスクが高くなるという調査データも。ほかにも、肥満、糖尿病、認知機能の低下やうつなどのメンタル疾患、腰痛や肩こり、サルコペニア(筋肉の萎縮と機能低下)など、身体のさまざまな部分に影響を及ぼしてしまう。

座りっぱなし生活を打破する、ちょっとした工夫とは?

でも日中、「座っていてはダメ」とデスクワークをやめるわけにもいかない……。どうしたらいい?

「この問題に取り組み始めた企業もあります。スタンドタイプに切り替えできるデスクを導入しているところも。こうしたものを活用できるのが理想です。難しい場合は、自分で時間を決めて立つといいでしょう。30分ごとに立って、デスク周りでもいいので歩き回ってみる。立つ動作はスクワットなので、下肢の筋肉を使い、血流をよくします。

また、通勤などの移動中は座らずに立つ、歩くということを意識してみましょう。ジムでまとめてワークアウトするよりも、生活の中でちょこちょこ座り続けない工夫を織り交ぜることでも、十分健康効果は高いと考えられているのです。ちょっと意識するだけで変えられるので、ぜひチャレンジしてみてほしいですね」(岡先生)

Text:Manabi ItoPhoto:Getty Images